ベンチャー企業で働くというのは、とてもワクワクすることでもあり、同時に大きなチャレンジでもあります。夢やアイデアを形にする会社で、自分の力を試すチャンスでもありますが、そこには「普通の会社」とはちがう特徴があります。
ベンチャー企業ってどんな会社?
ベンチャー企業とは、新しいアイデアや技術を使って、世の中に新しい価値を生み出そうとする会社です。まだできたばかりだったり、小さな規模で始まっていたりすることが多いです。
たとえば、ある人が「このアプリがあれば、みんなの生活がもっと便利になるはずだ!」と思って、それを作るために会社を始めたとします。その会社がベンチャー企業です。
成長するか、なくなってしまうか
ベンチャー企業、特に外部からの資金調達をした会社では、「うまくいって大きな会社になる」か、「うまくいかずに会社がなくなってしまう」か、という大きな分かれ道があります。
これは、ベンチャー企業がまだお金をたくさん稼げていなかったり、世の中にまだ認められていなかったりするためです。だから、会社として生き残れるかどうか、常に挑戦しているのです。
ステージによって求められる力がちがう
ベンチャー企業も、少しずつ成長していきます。
-最初のステージ:社員が数人しかいないとき。ここでは、「なんでも自分でやる力」や「決まってないことを自分で考える力」がとても大事です。
-成長中のステージ:社員が10人〜100人ぐらいになってくると、「みんなでチームとして動く力」や「他の人と分担して効率よく進める力」が必要になります。
-大きくなったステージ:100人以上、場合によっては1000人を超えるようになると、「ルールを守って動く力」や「組織全体をうまくまわす力」が大切になります。
つまり、会社の規模や成長段階によって、求められる能力や仕事のやり方が大きく変わってくるのです。
長く働けるとは限らない
ベンチャー企業では、会社が急に大きくなることもあれば、急に解散することもあります。また、会社が成長する中で、仕事の内容がどんどん変わっていき、自分の役割がなくなってしまうこともあります。
会社が急成長すればするほど、求められる能力や仕事の内容は大きく変わっていきます。でもそれは、会社が順調に成長している証拠でもあります。
だから、たとえがんばっていても「長く同じ会社で働く」ことが難しいのが現実です。特にアメリカのシリコンバレーでは、1〜2年で別の会社にうつる人もたくさんいます。これは、本人のせいではなく、会社や働き方の性質によるものです。
ステージによって求められる力は変わる
会社が小さいうちは、1人でいろんな仕事をこなす力が求められます。でも、社員が増えていくにつれて、チームで協力したり、ルールを守ったり、まったくちがう能力が必要になります。
だから、ずっと同じ会社で働き続けることが難しくなることもあります。実際にアメリカのシリコンバレーでは、短期間で転職する人が多いのもこの理由です。
ベンチャー企業は「一生働く場所」ではなく、「成長の場」
ベンチャー企業に入るときに「この会社で一生働こう」と思うのは、実はあまり現実的ではありません。
むしろ、「今の自分の力を試しながら、会社と一緒にしばらく成長していく場」くらいに考えておくのがちょうどいいです。そして、会社がうまくいかなくなったら早めに切り替える、次のチャンスを常に探しておくという姿勢もとても大事です。
もちろん、運がよければその会社で長く働けるかもしれません。でも、それはラッキーなケース。最初から「ずっと働くのが前提」と考えると、変化への対応が遅れてしまうこともあります。
だからこそ、
-
今の会社で何を学べるか
-
どんな経験やスキルを身につけられるか
-
それが次につながるか
を意識しながら働くことが、将来の自分の可能性を大きく広げるカギになります。
給料が下がるなら、その分をどう補うか?
ベンチャーではよく、「給料は安いけど、その代わりにストックオプション(株を安く買える権利)をあげるよ」と言われることがあります。また、「会社が成功したら、きちんと報酬を出すから今は我慢してほしい」といった口約束がされることもあります。
でも、ここにはとても大きな落とし穴があります。
たとえば、他の会社で月に30万円もらえるところ、ベンチャーでは25万円しかもらえなかったとします。毎月5万円の差です。これが3年間続くと、180万円の損になります。
ここで「その分は株で補えるよ!」と言われても、本当にその株に180万円以上の価値があるのかを考えなければいけません。ベンチャー企業の成功する確率はとても低く、一般的に3%くらいしかありません。
たとえば、もらった株が将来1000万円の価値になるかもしれないとしても、3%の成功率なら期待値は30万円。もしその会社に入ることで、3年間で180万円も少ない給料しかもらえないなら、まったく釣り合いが取れていないことになります。
本当に給料の差を埋めるなら、6000万円くらいの価値になる株が必要ですが、そんなケースはめったにありません。
ストックオプションは、退職後も有効な契約にしておかないと無意味になります。また、その他特に報酬に関しては**口約束は信用せず、必ず書面に残しましょう。**本来、リスクが高いベンチャーでは、同業他社より給料が低いのはおかしいことです。この点は、**しっかり覚えておきましょう。**経営者が報酬を低くしているからといって、従業員にも同じことを求めることがありますが、それは大きな筋違いです。経営者は会社が成功すれば、従業員とは比べものにならないほど大きなリターンを得られるからです。
それでも挑戦したいと思えるなら、飛び込もう
ここまで聞くと、「ベンチャーって大変そう…」と思うかもしれません。たしかにリスクはあります。でも、それでもなお「この会社で働きたい」「この夢に関わりたい」と心から思えるなら、**挑戦する価値はあります。**ベンチャーでの仕事は、自分で考えて動き、失敗して学び、チームで成長していく日々です。その経験は、たとえ会社がうまくいかなかったとしても、一生役立つ大きな財産になります。
そして、その過程で出会った人たちとのつながり(ネットワーク)も、次のチャンスを引き寄せてくれるはずです。
まとめ
-
ベンチャー企業には「成功」か「解散」かというリスクがある
-
ステージによって求められる能力は変わる。ずっと働けるとは限らない
-
給料が下がるなら、ストックオプションなどで補えるかを期待値で冷静に判断する
-
「成功したら報酬を出す」という口約束は信用しない。必ず契約で確認を
-
それでも心から「この会社で働きたい」と思えるなら、ぜひ飛び込んでみよう
-
経験と仲間は、将来きっとかけがえのない財産になる
たとえ成功しなくても、「あのとき挑戦してよかった」と思えるような、かっこいいチャレンジをする人生も、すごく素敵だと思います。