ベンチャー起業と受託ビジネス

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ベンチャーと受託 ― VCが本来果たすべき役割

以前、VCキャピタリストを名乗るTwitterアカウントが「ベンチャーも受託をやるべきだ」と発言しているのを見かけた。正直、それを読んで違和感を覚えた。なぜなら、本来VCは、受託ビジネスを推奨するどころか、むしろやめさせる立場にあるからだ。


ベンチャーとスモールビジネスの違い

ベンチャーとは、まだ存在しない市場やサービスに挑み、急成長を目指す存在だ。反対に受託ビジネスは、既存の仕組みの中で安定した収益を得る「スモールビジネス」として成立する。どちらが良い悪いの話ではない。求められる仕組みやルールが根本的に異なるのだ。

ベンチャー企業は、自分たちが信じる未来を形にするために、赤字を抱えてでも突き進まなければならない。そこで支援者であるVCが「受託でもやったらどうか」と言うのは本末転倒だ。


VCの本来の役割

本物のVCは、起業家の「大きな夢」に投資する存在である。100社に投資して2〜3社が大化けすれば成功。だからこそ、資金もノウハウも人材も惜しみなく投入し、受託に逃げようとする起業家がいれば止めるべきなのだ。その会社の目指す方向に進むことができず、資金が尽きたときには会社を閉じることを助言し、次の機会に向けて準備するようサポートするのも仕事の1つ。

もし、受託で食いつなぐなら、それはベンチャーではなくスモールビジネスだ。VCはそんな会社を支援する必要はないし、起業家にとっても、そうしたことを勧めるVCとは付き合う意味はない。


「融資」と「VC」の違い

失敗を許さず「投資した資金を2〜3倍程度に増やして返してくれ」と求めるのはVCではない。利回りが高すぎるだけの融資と大差がない。VCとは、リスクを取って「天才が世界を変える」挑戦を支えるために存在する。失敗を許容し、大きな夢を叶えるためにリスクマネーを供給するのが本来の姿だ。


結論

VCが「受託をやれ」と言う時点で、それはVCではない。起業家は、自分がベンチャーとして未来を創るのか、それともスモールビジネスを営むのかを明確に区別しなければならない。そして、本物のVCは「夢に突き進む起業家」を支え続けるべきだ。

だからこそ、受託を推奨するようなVCとは付き合う必要はないし、そもそもVCを名乗るべきでもないのだ。

VCの役割は、受託をすすめることではなく、夢を信じて突き進む起業家にリスクマネーを投じることだ。

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