起業家と現実歪曲空間

Elon Musk の行動に関しては、非現実的なゴールを設定していつも失敗する、Tesla は莫大な赤字を垂れ流し続けている、などの強烈な批判が耐えることがありませんが、一方で、私のような熱烈なファンも大勢いるし、Tesla の Model 3 は、飛ぶように売れています。この現象をどう説明したら良いか考えていたところ、とても良い記事を見つけたので、紹介します。

内容は、タイトルにある通り、Elon Musk を Steve Jobs 以来の魅力的な経営者にしているのは、彼が「夢」を提供してくれるからだ、というものです。

「電気自動車だけを売る新しい会社を作る」
「民間の力で火星に人類を移住させる」
「都市にトンネルを掘って渋滞を解消する」
などの彼が語る夢は、普通に考えれば、どれもが非現実的で、「無理に決まっている」ものです。

普通の人がそんな夢を語っても、誰も相手にしてくれないし、人も資金も集まりません。人も資金も集まらなければ、夢の実現など到底無理です。

しかし、Elon Musk だけは違うのです。彼の周りには、Stave Jobs が持つことで有名だった「現実歪曲空間」が生まれ、全員ではないものの、十分な数の人たちが、「彼の夢を信じてみよう」「彼にかけてみよう」と思ってくれるのです。

その結果として、彼の周りには、夢が実現する可能性が、資金や優秀な人材という形で具現化してくるのです。

それはある意味、「信じるものは救われる」宗教にも似ているのですが、宗教とは違い、それが、「必要な資金や人材が集まらないから、夢を叶えられない」という最初のハードルを超えることを可能にしてしまうのです。

結果として、Tesla は BMW を脅かすまでの会社に育ってしまったし、SpaceX は再利用可能なロケットの開発に成功してしまったのです。

ここには、いつかは自分で会社を興したいと考えている人たちにとって、とても重要な教訓があります。簡単にまとめると、以下の三点です。

気が付いていない人が多いのですが、これこそが、カリスマ性を持った(=現実歪曲空間を作り出すことができる)リーダーになる秘訣なのです。

そして、この資質は、決して Steve Jobs と Elon Musk だけの専売特許ではなく、Bill Gates、Jeff Bezos、孫正義、盛田昭夫など大きなことを成し遂げた起業家たちの誰もが、スタイルは違うものの持ち合わせている資質です。

逆に言えば、どんな良いアイデアや技術力を持っていても、自分の夢を周りの人に伝染させる力を持たない人には、大きな夢を実現することはできないのです。

「アーリーステージのVC(ベンチャーキャピタル)は、ビジネスプランよりも創業者の人となりを重視する」と言いますが、まさにこの話なのです。

どんなに綿密にビジネスプランを立てても、その通りには行かず、数多くの危機に見舞われるのが、ベンチャー企業の常。そんな時に生き残れるのは、夢を信じ、自分を信じ、周りの人たちを巻き込んで突き進む精神力を持った創業者だけなのです。


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