到達できるゴールは設定しない方が良い。とてつもない目標を持つか、プロセスを楽しむべき

到達できるゴールは設定しない方が良い。とてつもない目標を持つか、プロセスを楽しむべき

なぜ「達成できる目標」は危険なのか

私たちは子どもの頃から、明確な目標を持つことが大切だと教えられてきました。「夢を持ちなさい」「目標に向かって努力しなさい」と。そして多くの人が、次のような目標を掲げます。

これらは確かに素晴らしい成果です。達成すれば周囲から称賛され、自分自身も誇らしく感じるでしょう。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

これらの目標には、すべて「ゴール地点」が存在するのです。

大学に合格したら、その瞬間に目標は達成されます。すると多くの人は、それまで持っていた学習意欲を失ってしまいます。「もう受験勉強をする必要がない」と安堵し、本を開くことさえしなくなる学生は少なくありません。

起業も同じです。会社を立ち上げること自体は、実はそれほど難しくありません。登記さえすれば誰でも社長になれます。しかし「会社をつくる」ことをゴールにしてしまうと、そこで満足してしまい、本来の事業成長という本質的な挑戦から目を背けてしまうのです。

株式上場はどうでしょうか。多くの起業家が「上場」を最終目標に掲げます。しかし本来、上場とは会社をさらに大きく成長させるための資金調達手段に過ぎません。上場そのものが目的になってしまうと、上場した瞬間に経営者の情熱が冷めてしまい、その後の成長が止まってしまうケースは数え切れないほどあります。

オリンピックのメダリストの例は、さらに深刻です。多くのアスリートが、人生の大半を捧げてメダル獲得を目指します。そして実際にメダルを手にしたとき、確かに最高の喜びを感じるでしょう。しかし競技人生のピークは20代〜30代前半で訪れることが多く、その後の長い人生が残されています。「人生最大の目標」を若くして達成してしまった人の中には、その後に深い空虚感に襲われ、鬱状態に陥る人も少なくないのです。

つまり、「到達できるゴール」を人生の最終目標にしてしまうと、達成した瞬間に燃え尽きてしまうのです。

これらの目標は本来、人生という長い旅路における「通過点」であるべきです。しかし私たちは、それを誤って「終着駅」にしてしまっているのです。

では、どう生きればいいのか――二つの道

この問いに対する答えは、二つあります。

第一の道:人類規模の、とてつもなく大きなビジョンを持つ

本当に大きな目標――それも常識の枠を超えた、人類全体を次の次元へ引き上げるような壮大なビジョンを掲げることです。

具体例を見てみましょう。

SpaceXは「火星に人類を移住させる」というビジョンを掲げています。これは単なる宇宙旅行ではありません。人類を多惑星種族にするという、壮大な挑戦です。

Googleは「世界中の情報を整理し、誰もがアクセスできるようにする」という使命を持っています。これは終わりのない挑戦です。情報は日々増え続け、整理すべき対象は無限に広がっていきます。

テスラは「持続可能なエネルギーへの移行を加速する」ことを目指しています。これは地球環境という人類共通の課題に取り組む、世代を超えた挑戦です。

これらのビジョンには、いくつかの共通点があります。

まず、聞いた瞬間に何を目指しているのかが誰にでもわかるということ。難解な専門用語や複雑な説明は必要ありません。シンプルで、直感的に理解できます。

次に、人類規模で意味があり、多くの人の心を動かすということ。だからこそ、世界中から優秀な人材が集まり、同じビジョンを共有する仲間として協力し合えるのです。

そして最も重要なのは、ほとんどすぐには到達できない、終わりのない挑戦であるということです。

Google、Amazon、イーロン・マスク、ユニクロの柳井正氏――。彼らはすでに想像を絶するほどの富を手に入れています。普通の人なら、そこで満足して引退し、残りの人生を悠々自適に過ごすでしょう。それが自然な反応です。

しかし彼らは違います。ある程度のお金を手にした時点で、普通の人なら事業への意欲は確実に薄れます。それが人間として当たり前の反応なのです。でも、彼らは止まりません。70歳を超えても、80歳になっても、なお情熱的に働き続けます。

それはほとんど狂気に近い執着です。しかしその原動力は、お金でも名声でもありません。

人類を一段引き上げるような、本気で信じている大きな目標があるからです。

その目標には終わりがないため、彼らは永遠に挑戦し続けることができるのです。

第二の道:目標を持たず、プロセスそのものを楽しむ

すべての人が、人類を変えるような壮大なビジョンを持つ必要はありません。それは特別な人たちの生き方です。

では、そうでない私たちはどう生きればいいのでしょうか。

答えはシンプルです。無理に目標を設定しなくていいのです。

その代わり、日々のプロセスそのものを心から楽しむことに集中するのです。

プロセスを楽しむとは、どういうことでしょうか。

それは、結果や成果ではなく、学びや成長の過程そのものに喜びを見出すということです。新しい知識を得る喜び、技術が向上する手応え、課題を解決できたときの達成感、仲間と協力する楽しさ――。こうした日々の小さな喜びを、心から味わうことです。

このアプローチには、大きな利点があります。

まず、燃え尽きることがありません。なぜなら、楽しみは「いつかたどり着くゴール」にあるのではなく、「今日という日」にあるからです。毎日が充実し、毎日が報酬なのです。

次に、継続することが苦痛ではなくなります。好きなことは、誰に言われなくても続けられます。義務感ではなく、純粋な楽しさによって行動できるのです。

そして驚くべきことに、結果として大きな成果につながります。楽しみながら続けた人は、義務感で続けた人を必ず超えます。なぜなら、継続の質と量が圧倒的に違うからです。10年、20年と続けた先には、自分でも想像していなかったほどの高みに到達しているでしょう。

あなたはどちらを選びますか

まとめましょう。

人生に必要なのは、「達成できる小さなゴール」ではありません。

それは達成した瞬間に終わってしまい、あなたを燃え尽きさせてしまいます。

代わりに選ぶべきは、次のどちらかです。

一つ目は、永遠に追い続けられる、人類規模の壮大なビジョン。

それは決してたどり着けない地平線のようなものです。だからこそ、一生をかけて挑戦し続けることができます。

二つ目は、終わりなく楽しめるプロセスへの没頭。

ゴールを気にせず、今日という日の学びと成長を心から楽しむことです。その積み重ねが、気づけば大きな山を築いています。

どちらを選ぶかは、あなた次第です。

ただ一つ確実に言えることがあります。「大学合格」や「起業」や「上場」のような、到達できる目標を人生のゴールに設定してはいけない、ということです。

それは通過点であり、スタートラインです。決してゴールテープではありません。

あなたの人生という長い物語において、本当に価値があるのは何でしょうか。

それを見つけることが、充実した人生への第一歩なのです。

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