「LLMは次のトークンを予測しているだけ」は正しいのか?
2026年7月18日
― Transformerの内部計算と最新の解釈可能性研究から見るLLMの実像 ― 要旨 大規模言語モデル(LLM)は、「次のトークン(単語やサブワード)を予測しているだけ」と説明されることが多い。この説明は学習目標という意味では正しい。しかし、それだけではLLMが実際にどのような情報処理を行っているのかを適切に表現できない。本稿では、Transformerの計算過程と近年急速に発展しているM
Anthropicの社員1人は、日本の上場企業1社分の価値がある
2026年7月17日
企業の大きさを測るとき、普通は売上高や利益、時価総額、従業員数を見る。 でも、試しに「企業価値を従業員数で割る」という少し変わった計算をしてみると、AI時代の異常さがよく見える。 Anthropicは社員数千人で約1兆ドル Anthropicは2026年5月、650億ドルを調達し、企業価値が9650億ドルになったと発表した。 ほぼ1兆ドル企業である。 一方、LinkedIn上でAnthr
GUI中心で考えるのは、もう古い
2026年7月16日
2026年の時点で、新しいWebサービスやアプリを「人間がGUIを操作する」ことを前提に設計するのは、大きな発想の転換を逃している。 もちろんGUIはなくならない。しかし、その役割は大きく変わる。 AIを日常的に使っている人ほど、この変化を実感している。 私自身、とあるベンチマークツールを作っていた。最初は Claude Code の中だけで動かしていたものを、「他の人にも使いやすいように」
説明が下手な人の共通点
2026年7月8日
ある新人エンジニアが、新しい機能の設計をチームに説明することになりました。 「最初はA案を考えたんですが、B案もありかなと思って、でも性能が気になって……。そういえば以前似たケースがあって、それを思い出して……。あと、このライブラリも調べたんですが……」 10分話しても、結局「何を採用したのか」が誰にも伝わりませんでした。 一方、別の人はこう話します。 「今回の課題は処理速度でした。3案比
Roleを目指す人より、課題を追う人のほうが強い
2026年7月8日
今まで、「総理大臣になりたい」と言っている人に3人会ったことがあります。 ここでいう「政治家になりたい人」ではありません。 純粋に「総理大臣になりたい」と話していた人たちです。 その3人に共通していたことがあります。 誰一人として、日本の課題を具体的に語れませんでした。 少子高齢化をどうするのか。 財政をどう考えているのか。 教育は。 エネルギーは。 地方は。 安全保障は。 そういった話に
同じ質問を2回されたら、ドキュメントを書く
2026年7月6日
私は、同じような質問を2回されたら、その内容はドキュメント化するようにしています。 対象は技術的な話だけではありません。 仕事の進め方 設計方針や技術選定の理由 ツールやサービスの使い方 よくあるトラブルと解決方法 初心者がつまずきやすいポイント 一般的によくある悩みや相談 こうした内容はもちろんですが、一見すると些細なことでも、複数人が関わるならドキュ
なぜSFや研究に触れることが重要なのか
2026年7月5日
全く新しい概念のサービスやアイデアが登場したとき、それを見て「既存の○○と何が違うの?」「結局△△の焼き直しでは?」という比較ばかりしている人を見かけることがあります。 しかし、本当に新しい概念は、多くの人にとってすぐには理解できません。なぜなら、それまで見たことがないものだからです。あるいは、その課題について真剣に考えた経験がないからです。 よく「馬車しか存在しない時代に、自動車を説明しても
質問力は、その人の実力が最も表れる瞬間
2026年7月5日
質問って怖い。 質問を聞けば、その人の理解度や知識、思考力、そしてコミュニケーション能力がかなり分かってしまう。特に、「短時間で情報を整理し、本質を切り出して伝える力」は質問にそのまま現れる。 発表会や勉強会では、それがさらに顕著になる。 参加者は同じ分野に興味を持ち、ある程度共通の知識を持っている。その中で質問をするということは、「自分がどこまで理解しているか」を大勢の前で公開することでも
AI時代、エンジニア・PM・デザイナー・マーケターの境界は消えていく
2026年7月5日
AIによって、それぞれの職種は隣接する領域へ広がっていきます。 エンジニアは、コードを書く時間が減る代わりに、「何を作るべきか」「どのような仕様にするか」「どの順番で開発するか」といった、仕様設計やマイルストーン設計など、これまでPMが担ってきた領域まで踏み込むようになります。 PMは、AIを使って自らプロトタイプを作り、技術的な制約も理解しながら意思決定を行います。企画だけでなく、実装や検証まで
ルーズな人は、自分のコストを他人に払わせている
2026年7月3日
仕事をする上で、とても大切だと思っていることがあります。 締め切りを守らない人。 会議や約束に遅れる人。 途中で別の仕事を割り込ませる人。 遅れることを事前に報告しない人。 連絡もなく来ない人。 こうした行動は、一見すると「本人がルーズなだけ」に見えます。しかし実際には、それ以上の問題があります。 それは、自分のルーズさを他人のコストで補っているということです。 締め切りが遅れれば、待つ人
「安いモデルを賢く使い分ける」の本当の難しさ —— ルーターとキャッシュという2つの壁
2026年6月30日
最近、AIモデルの使い方が大きく変わりつつある。「いちばん賢い高価なモデル1つで全部やる」のではなく、「タスクごとに安いモデルや専用ツールを切り替えて、必要なときだけ高いモデルを使う」という方向だ。 実際、2026年6月30日には Anthropic と Cognition(AIコーディングエージェント「Devin」の開発元)が、ほぼ同時にこの方向の新しい仕組みを発表した。狙いは同じ——フロンテ
「何の役に立つの?」が世界を変える
2026年6月29日
「その研究、何の役に立つのですか?」 研究者なら、一度は聞かれたことのある質問かもしれません。 でも歴史を振り返ると、本当に世界を変えた技術ほど、研究が始まった時点では「何の役に立つか」が誰にも分かっていませんでした。 ここでは3つの物語を、仕組みと身近なたとえを交えながら見ていきます。 1. 240年眠っていた数学が、インターネットを守るようになった 始まりは、ただの「数のパズル」 1
AIで作り始める前に、ここだけ。Vibe Coderのための「シンプルなTwitterの作り方」入門
2026年6月26日
「AIに頼めば、アプリは一瞬で動く」——本当にそうです。でも、出てきたものが安全で、ちゃんとしているかは別の話。そこを見抜く目があるかどうかで、作れるものの質は大きく変わります。 Singularity Society の BootCamp に集まる Vibe Coder(AIでどんどん作る人) に向けて、Web開発の「これだけは知っておきたい基礎」を一冊のドキュメントにまとめました。題材は、み
「最初はグレーだった」巨大ネットサービスたち
2026年6月21日
インターネットの歴史を振り返ると、多くの巨大サービスは最初から既存の法律や業界ルールに完全に適合していたわけではない。 むしろ、 法律が想定していない 権利処理の枠組みが存在しない 業界慣行が確立していない 解釈が定まっていない といった領域に挑戦し、その後に制度や業界の方が対応してきたケースが少なくない。 もちろん違法行為が許されるわけではない。しかし、インター
AI as a Service.
2026年6月21日
AIアプリを作るとき、多くの開発者は同じ問題にぶつかります。 アプリ自体を作るのはそれほど難しくありません。 認証は Firebase Auth データベースは Firestore や Supabase フロントエンドは Next.js や Vue LLM は OpenAI や Anthropic これで動くものはすぐ作れます。 しかし、実際にサービスとして公開し
半導体バブルは必ず終わる
2026年6月7日
いま起きていること ―― 異常なメモリ市況 半導体市場、とりわけメモリの株価が暴騰している。市況を見れば理由は明らかだ。DRAMの契約価格は2025年第4四半期に前四半期比で5割近く上昇し、2026年第1四半期にはさらに55〜60%、調査機関によっては前四半期比で倍増という、過去に例のない上昇率を記録している。自作PC向けのメモリモジュールが1年で2倍、3倍、ものによっては5倍の値段になり、PC
なぜ面接で「リーダーシップ経験」を聞かれるのか
2026年6月7日
就職活動や学校の面接で、よく「リーダーシップを発揮した経験はありますか?」と聞かれる。 これ、なんでだと思う? 別に、あなたにリーダーになってほしいわけじゃない。本当の目的は別のところにある。 リーダー経験は「視点の獲得」である リーダーシップを経験した人は、リーダーが何を考えているか、そしてリーダーの下にいる人がどう動けば物事がスムーズに進むかを、身をもって理解している。面接で問われてい
日本人は、もっと自分のストーリーを書いてもいい
2026年6月7日
最近、「ピッチって何のためにあるんだろう」と考えていました。 起業家向けのイベントやスタートアップの世界では、よく「30秒で説明してください」とか「3分でピッチしてください」と言われます。 最初は事業説明の技術だと思っていました。 でも、実はそうではない気がしています。 ピッチとは、 「あなたは誰なのか」 を短時間で伝える訓練なのではないでしょうか。 人は何かに興味を持つとき、意外と
第4回 Singularity Society BootCamp開催のお知らせ!!
2026年5月18日
第4回 Singularity Society BootCampの参加者の募集を開始します。 Singularity Society BootCampは内発的動機を持つ主にエンジニアの参加者により、約1年間でアプリケーションやサービスをゼロから立ち上げることを目指す、長期型のインキュベーションプログラムです。 個人、チーム、法人での参加が可能で、必ずしも起業をゴールとしない、というのが特徴です。
早期専門化の自由と、その代償
2026年5月13日
― 高専・エスカレーター校から考える日本の教育設計の歪み ― はじめに SNSで「高専すごい」という言説をよく見かける。高専から東大編入、海外でPhD、スタートアップ起業 ―― そういう輝かしい経歴の人物が並べられ、日本の教育を変える鍵として語られる。一方で、付属校から内部進学で大学に進む「エスカレーター組」は、しばしば「努力していない」「特権的だ」と批判の対象になる。 しかし、この二つを並
日本の理系人材構造の根本的な歪み ― 経団連は誰のために、誰の言葉で語っているのか
2026年5月13日
経団連「高専や大学理系学部の拡充を」 科学技術立国へ政府に提言 - 日本経済新聞 経団連は11日、科学技術立国に向けた政府への提言を公表した。研究開発投資の拡大による雇用や賃金の増加、消費活性化をめざし、 www.nikkei.com 新卒で入社したホンダを三年で退職しました さよなら大好きだったホンダ タイトルのとおり新卒で入社したホンダの研究所をたった3年で退職し
不況のメモリ産業が、なぜ突然過去最高益を出しているのか
2026年5月11日
メモリ産業は長年「2年ごとに好況と不況を繰り返すシリコンサイクル産業」の代表格で、2022〜2023年もNAND価格が半値以下に暴落、Samsung・SK hynix・Kioxia・Micronの4社が揃って赤字に沈み、各社が減産に踏み切るほどの大不況だった。ところが2022年11月のChatGPT登場を起点にAIインフラ需要が急浮上、2024年後半から需給が一気に反転して、いまや4社とも過去最高
「vibe coding」の次に来る巨大市場は、“安全に実行するOS/環境” かもしれない
2026年5月10日
最近、「vibe coding」という言葉をよく耳にするようになった。 AI に「こういうアプリを作りたい」と伝えると、それらしいコードが生成される。GitHub にあるサンプルを clone し、少し修正すれば実際に動いてしまう。以前なら専門知識が必要だったソフトウェア開発が、急速に一般化し始めている。 これは間違いなく大きな変化だ。 ソフトウェア開発は長い間、「理解している人だけが触るもの」
東芝はAI銘柄になれたのか
2026年3月7日
はじめに——AI時代に必要なものは何か いま世界中で話題になっているAI(人工知能)。ChatGPTのようなサービスを動かすには、裏側に巨大なインフラが必要だ。具体的には三つある。 一つ目は計算能力。AIは膨大な量の計算をこなすので、高性能な半導体チップが欠かせない。 二つ目はメモリ。AIが扱うデータは途方もなく大きいので、それを一時的に保存しておくメモリも大量に必要になる。 三つ目は電力
2026年の展望と、個人・スタートアップが取るべき戦略
2026年1月14日
2026年に向けて、Claude Code は「Agent の OS」に近い存在になっていく。IDE、Web、CLI といった開発環境を横断して透過的に動作し、Slack などのチャットツールにも組み込まれていく。Skill、Agent、MCP といった拡張が進み、単なるコーディング支援ではなく、知的作業全体を支える基盤として機能し始める。 Google や Azure も、それぞれのエコシステ
2026世界に飛び出そう
2026年1月13日
昨年の vibe coding 環境の進化は、目まぐるしいものだった。2025年前半までは、AIでまともなコードを作るのはまだ不可能だと感じていたが、モデルそのものの進化、そしてプロンプト設計の洗練によって、Codex や Claude Code を使ってコードを書くことが、明確に現実的になった。 きちんと指示を出す、あるいはベースとなるコードやルールがあれば、多くのケースで、人間が書くのとほと
LLM時代に「モデル」と「アプリ」を分けて考えてはいけない理由
2026年1月2日
生成AIの議論を見ていると、日本ではいまだに 「どのモデルが賢いか」「日本語性能はどうか」といった話題が中心になりがちだ。 しかし、LLMを実際に使ってプロダクトを作ったことがある人なら、 すでに気づいているはずだ。 問題はそこではない。 アプリを作り始めた瞬間に、モデルの「正体」が見える LLMを使ったアプリを本気で作り始めると、必ず次のような体験をする。 このモデル、ここまでは
Manus AI の買収事例は世界中にチャンスが有ることを物語っている
2025年12月31日
Manus AI の買収事例から見えてくるのは、「米国のスタートアップには勝てない」という考えが、単なる思い込みに過ぎないという事実です。 Manus は中国系のチームによって立ち上げられ、地政学的・イメージ上のリスクを回避するためにシンガポールに拠点を構えました。これは、グローバル市場を前提に戦略的な意思決定を行った好例だと言えます。 AI 系サービスの多くは、UI を極限までシンプルに設計す
「Slackを導入したいので、説明に来てもらえませんか?」
2025年12月26日
Slackが出始めたころ、導入を勧めた相手からこんな返事が返ってきた。 「Slackを導入したいので、説明に来てもらえませんか?」 正直に言えば、こう思った。 いや、まずは勝手に使えよ。 Slackに限らず、多くのSaaSは無料で試せる。 アカウントを作って、触って、失敗してみればいい。 それだけで「何ができて、何ができないか」は大体わかる。 それなのに、最初から「説明」を求める。 これは
なぜ日本企業はSaaSで米国に勝てないのか
2025年12月26日
――導入側と提供側が作り上げた「自己強化ループ」 日本でもSaaS(Software as a Service)は広く普及した。会計、人事、営業管理、顧客対応など、多くの業務がクラウド型のソフトウェアで支えられている。 それにもかかわらず、日本発のSaaS企業が世界市場で存在感を示している例は限られ、またSaaSを導入する側の日本企業も、米国企業ほど競争力を引き出せていない。 この差はしばしば
人生を「日本の大手VC型」で設計してはいけない
2025年12月25日
日本の大手VCに多い投資スタイルがある。 すでに事業が見えている 上場しやすく、説明しやすい 2〜3倍を確実に狙える 失敗しても株の買い取り条項でリスクはほぼゼロ 合理的で、効率的で、コスパがいい。 だが、もし人生をこの発想で設計し始めたら、それはかなり危険だ。 リスクを取らない人生は「関係」を失う この投資スタイルを人生に当てはめると、こうなる。 見返り
ムーアの法則が示した「健全なデフレ」
2025年12月24日
ムーアの法則は、 「半導体の集積密度(トランジスタ数)が18ヶ月〜2年で約2倍になる」 という、極めて珍しい経済現象を約50年にわたって現実にしてきた。 その異常さは、起点を1970年代後半に置くと、よりはっきりする。 たとえば Apple II(1977年) を例にすると、 CPU:MOS Technology 6502 クロック周波数:約 1MHz トランジスタ数:約
余計な心配をして、何もしない人の話
2025年12月22日
SNSをやりましょう、と提案すると、だいたい決まって返ってくる言葉がある。 「炎上したら怖いじゃないですか」 「家族がいるので、炎上はちょっと……」 正直、これを聞くたびに内心で思う。 その心配、どこから来た? と。 一般人が何を書いても、まず炎上しない まず、事実から確認しよう。 一般人が、普通のことを書いて、普通に発信して、 炎上する確率はほぼゼロ です。 本当に、ほぼゼロ。 む
経済に「目覚めた人」が増えたのは良い。でも…
2025年12月19日
ここ数年、TwitterやYouTubeのおかげで、経済の話をする人が一気に増えた。 これは間違いなく良い変化だと思う。 昔は「経済=専門家のもの」で、多くの人は最初から思考停止していた。 ただ、その代償として、少し厄介な現象も同時に起きている。 1. 「分かった気になる」設計が強すぎる SNSやYouTubeの経済コンテンツは、とにかく分かりやすい。 結論は強く、敵と味方は明確で、話は単
AI時代における「理解」とは何か
2025年12月17日
AI時代の学びを迷わせない、たった一つの整理 ――「導出・公式・受験テクニック」を分けて考える AIが計算し、動画でいくらでも解説が見られる時代になりました。 その結果、「暗記はいらない」「学校の勉強はもう古い」という声も増えています。 一方で、こんな違和感を持つ人も多いはずです。 動画を見て分かった気はするけれど、説明はできない AIの答えは使えるが、正しいかどうか判断できない
なぜ著名な投資家は「歴史」を学び、歴史を書き続けるのか
2025年12月16日
金融市場における短期的な価格変動は、政治的事件、スキャンダル、自然災害、あるいは市場参加者の感情といった偶発的要因に強く左右される。一方で、10年単位の長期的な資産価格や産業構造の変化は、歴史的に繰り返されてきた構造要因――信用循環、技術革新、人口動態、覇権国家の興亡――によって高い説明力を持つ。本稿では、ジム・ロジャーズ、レイ・ダリオをはじめとする著名投資家が、なぜ歴史を重視し、歴史書を書くに至
「目的意識を持てない人」は、AI時代に急速に置き去りにされる
2025年12月16日
これは厳しい意見だが、避けて通れない現実である。 AIの進化によって、ソフトウェア開発の現場のスピードは劇的に向上した。 プログラマは、従来の実装領域にとどまらず、PMやデザイナーの領域にまで踏み込めるようになった。 一方で、PMやデザイナーがコードを書き、実装まで担うケースも珍しくなくなっている。 さらに顕著なのは、ジュニア層の変化だ。 経験年数に関係なく、思考のキレがあり、目的を自分で定義
AI半導体にもいつか必ず「冬」は来る
2025年12月14日
DRAMの歴史が教える、国家戦略に必要な覚悟 AI半導体を巡る熱狂が続いている。 生成AIの普及を背景に、GPUや先端ロジック、HBM(高帯域幅メモリ)への投資が世界規模で加速し、日本でも「半導体復活」「国家戦略」という言葉が頻繁に聞かれるようになった。 だが、この盛り上がりを冷静に見つめるためには、ひとつ重要な前提がある。 半導体産業は、必ず波を打つ産業だという事実である。 これは悲観論で
DXってなんだか理解している?
2025年12月14日
― 定義をずらした瞬間に、議論は壊れる 近年、日本では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が氾濫している。 企業の中期経営計画、行政資料、補助金の説明文。 そこには必ずと言っていいほどDXという単語が登場する。 しかし、その使われ方を冷静に見ていくと、強い違和感を覚える。 それは、本当にDXなのか。 海外で語られてきたDXの例 DXという言葉が現実の意味を持って語られ
「締め切り」は信用そのものだ――バッファを奪う“締切遅延社会”の構造
2025年12月11日
仕事には必ず締め切りがある。しかし、現実には「締め切りを過ぎても交渉すればなんとかなる」「実際なんとかなってきた」という経験則を持つ人が少なくない。そのため、締め切りに間に合わせないことに抵抗が薄れ、過ぎてから連絡し、そこで初めて動き始める――そんな光景は珍しくない。 中には「締め切りは少し過ぎても大丈夫」とアドバイスする人までいる。だが、立場が変わり、自分が締め切りを設定する側になると、その認
なぜ 成長する大企業は、自社研究所よりスタートアップを買うのか――そして、天才たちが“バイアウトのために人生を賭ける時代”が始まった
2025年12月7日
1. かつて大企業は「内製R&D」で世界を獲っていた 20世紀の産業競争において、勝敗を決めていたのは自社研究所だった。 製薬:新薬は自社ラボで生む 化学:新素材は自前で開発 電機:新デバイスは社内研究所発 大企業=研究機関であり、 研究テーマを決めるのも、予算を持つのも、すべて企業側だった。 この時代、研究者のキャリアのゴールは明確だった。 「論文 → 評価 → 昇
AI覇権を決める「DC構築力」と「クラウドOS」──バブル論では語れない文明的転換が始まった
2025年12月6日
1980年代後半、日本の土地バブルは世界を震撼させた。 「東京23区の土地だけでアメリカ全土が買える」 そう語られたほど、実態を超えた価格がついたことは広く知られている。 しかしいま、同じように世界が驚くような“資産の集中”が再び起きている。 主役は土地ではなく、米国の大手AI企業だ。 Nvidia、Microsoft、Google、Amazon、OpenAI―― これら企業の時価総額や資金調
半導体は「日本がいちばん得意な産業」なのになぜ日本発の“100兆円企業”は生まれないのか
2025年12月2日
生成AIブームで、世界は再び「半導体の時代」に入った。 クラウド事業者やビッグテックは、巨額の資金を投じてデータセンターとAI向け半導体を増産し、TSMC、サムスン、NVIDIAといった企業の時価総額はいずれも世界トップクラスに並んでいる。 一方、日本。 1980年代には世界シェア4〜5割を誇った半導体大国は、今やロジックやメモリといった「完成品チップ」の分野では主役ではない。 しかし、それで
🌏 ITの巨人たちの興亡史 ─ 無敵に見えた企業も、なぜ消えていくのか
2025年12月1日
― Apple と Microsoft はなぜ生き残ったのか、そして AI 時代の未来へ ― IT の歴史を振り返ると、胸がザワつく瞬間に何度も出会います。 「あの企業は絶対に倒れないだろう」と思っていた存在が、気づけば市場から姿を消していた。 しかもそれは、ちょっとしたベンチャー企業の話ではありません。 アメリカの株式市場で何兆円という時価総額を持ち、新聞の株価欄に連日載っていたような“世界
経歴に「その人のピーク」は現れる
2025年11月30日
人の肩書やプロフィール欄を眺めていると、そこに“その人のピーク”がにじむことがある。 学生時代、情報系の学会の手伝いで、アメリカの国際会議のブースに立ったことがある。そこで来場者にアンケートを書いてもらったのだが、驚いたのはアメリカの大学に留学しているアジア系の学生たちの“攻め方”だ。 まだ修士課程の学生なのに、経歴欄に堂々と「202X年 PhD」と未来に予定を書いてくる。しかもそれが一人や二
SaaS導入から見える、日米の「意思決定とスピード感」の決定的な差
2025年11月30日
SaaS導入の話をしていると、日米の企業文化の違いがものすごくよく見える。 アメリカの企業は、とにかくスピードが速い。担当者がサインアップし、合いそうならその日のうちに有料化し、翌週にはチーム全体に広げている。「とりあえず触ってみる」が完全に習慣化している。 一方、日本では慎重さと丁寧さが前面に出る。比較表を作り、担当部門に説明し、稟議を通し、契約書を締結し、請求書払いで進める。結果、導入まで
日本のスタートアップを静かに蝕む “ベンチャーデット依存” の構造
2025年11月27日
── EXITの小ささ、リビングデッド化、そして国内市場という天井について 最近、りそな銀行が「ベンチャーデットを3年間で1,000億円まで増やす」と発表した。ニュースだけ読むと「銀行がスタートアップを応援してくれるのは良いことだ」と感じるかもしれない。実際、資金調達の選択肢が増えるのは素直にありがたい。 ただ、これをもう少し引いて見ると、別の景色が見えてくる。 なぜ今、日本でベンチャーデッ
AI時代の秩序はすでに動き始めている ―「トークンファクトリー」が世界を変える理由
2025年11月16日
世界のハイパースケーラー(Google、Amazon、Microsoft、Meta、OpenAI など)は、ビリオン単位の投資を続け、ギガワット級の発電所と並列で稼働する巨大なトークンファクトリー(LLMクラスタ)を構築している。 もはや従来のデータセンターの延長ではなく、「計算を生み出すための発電所」と「トークンを生むための工場」が並列化されている状態だ。 この流れは、多少の株価調整や景気の浮
見返りを求めずに動くほうが、長期的には圧倒的に得をする
2025年11月15日
今の社会は「コスパ」「タイパ」の言葉が溢れ、 「時間はお金だ」「機会損失だ」 と効率ばかりが正義になっている。 でも実際に大物になった人の話を聞くと、 若いころに誰と組んだか、そのきっかけは驚くほど適当だ。 「飲み会で隣に座ったから」 「なんかノリが合いそうだったから」 「特に理由はなかったけど面白そうだった」 そんな偶然の積み重ねが、後から振り返ると人生を変えている。 合理的な計画よりも、
到達できるゴールは設定しない方が良い。とてつもない目標を持つか、プロセスを楽しむべき
2025年11月15日
なぜ「達成できる目標」は危険なのか 私たちは子どもの頃から、明確な目標を持つことが大切だと教えられてきました。「夢を持ちなさい」「目標に向かって努力しなさい」と。そして多くの人が、次のような目標を掲げます。 有名大学に合格する 自分の会社を起業する 株式上場を果たす オリンピックでメダルを獲得する これらは確かに素晴らしい成果です。達成すれば周囲から称賛され、自分自
「バズ」に支配される時代に ― メディアの“信頼”をどう見極めるか
2025年11月9日
■ 動画メディアは「新しい顔をした旧い仕組み」 YouTube・TikTok をはじめとする動画メディアは、派手で新しい媒体として語られがちだ。しかし、その構造は驚くほど古典的である。 収益源は「広告」か「課金」――結局はオールドメディアと同じ 地平に立っている。 尖った表現や過激な主張が目を引く一方で、彼らが実際に配信しているものはあくまで 大衆向けのコンテンツ。 本質的な正しさよりも、 “