日本人は、もっと自分のストーリーを書いてもいい

日本人は、もっと自分のストーリーを書いてもいい

最近、「ピッチって何のためにあるんだろう」と考えていました。

起業家向けのイベントやスタートアップの世界では、よく「30秒で説明してください」とか「3分でピッチしてください」と言われます。

最初は事業説明の技術だと思っていました。

でも、実はそうではない気がしています。

ピッチとは、

「あなたは誰なのか」

を短時間で伝える訓練なのではないでしょうか。


人は何かに興味を持つとき、意外とサービスそのものだけを見ているわけではありません。

「誰がやっているのか」

を見ています。

この人はどんな人なのだろう。

なぜこの課題に取り組んでいるのだろう。

なぜこの人ならできると思っているのだろう。

そういうことを知りたがります。

だからピッチでは、

「何を作っています」

だけでは足りません。

「私はこういう人間で、こんな経験をしてきて、この問題を解決したいと思っています」

まで伝わって、初めて相手の記憶に残ります。


実はこれは、起業家だけの話ではありません。

誰かと仕事をするとき。

コミュニティに参加するとき。

講演を依頼するとき。

ボランティアを募集するとき。

共同創業者を探すとき。

あるいは単純に友人の紹介で誰かと会うとき。

ほとんどの場合、相手はまず検索します。

名前を検索して、

LinkedInを見たり、

Xを見たり、

GitHubを見たり、

個人サイトを見たりします。

そのとき相手が知りたいのは、学歴や職歴の一覧ではありません。

「この人は何者なのか」

です。


ところが、日本人はここが驚くほど少ない気がします。

LinkedInを開いても、

会社名だけ。

肩書だけ。

数年前のまま更新されていない。

そんなプロフィールをよく見かけます。

もちろん謙虚さは日本人の美徳です。

自分を大きく見せる必要はありません。

でも、自分のストーリーを語らないことと、謙虚であることは別の話です。


例えば、

「エンジニアです」

よりも、

「10年以上スタートアップの開発に関わってきました。アイデアを持った人が技術的な壁で挑戦できない場面を何度も見てきたので、その壁を下げるための仕組みを作っています」

の方が、その人のことが少し見えてきます。

そこには経歴だけでなく、

見てきた景色や、

問題意識や、

価値観が含まれているからです。


私は、インターネットの時代になって、私たちは常にピッチされているのだと思っています。

昔は名刺交換をして終わりでした。

今は違います。

会った後に検索されます。

そして検索結果に出てくる情報が、その人の第一印象になることも少なくありません。

だからLinkedInは単なる職務経歴書ではなく、

「自分自身のピッチ資料」

なのだと思います。


AIが文章を書ける時代になりました。

情報をまとめることも、きれいな資料を作ることも、以前よりずっと簡単になっています。

だからこそ、最後に残るのはその人自身です。

何を見てきたのか。

何を信じているのか。

なぜそれをやっているのか。

それはAIが代わりに生きることのできない部分です。


もしプロフィールを書く機会があるなら、職歴だけで終わらせず、

「私はなぜこれをやっているのか」

を一行でも書いてみてください。

完璧な文章である必要はありません。

少し不器用でも、自分の言葉で書かれたストーリーの方が、きれいに整えられた経歴よりずっと人の記憶に残るものです。

そして案外、人が興味を持つのは実績そのものではなく、その人が歩いてきた道のりなのかもしれません。

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