Claude Codeは強力だ。だが、ターミナルの中に閉じ込められている。
テキストだけの応答、コマンドラインのインターフェース、そしてセッションが終われば消える短期記憶。これらの制約は、Claude Codeを「開発者のツール」にとどめてきた。
MulmoClaudeは、その制約を外す。
MulmoClaudeとは何か
MulmoClaudeは、receptronが開発したClaude Codeのマルチモーダルクライアントだ。一言で言えば、**「Claude CodeにGUIと長期記憶を与えるアプリ」**である。
ブラウザ上のチャット画面でClaude Codeと対話する。ただし返ってくるのはテキストだけではない。
- ドキュメント
- スプレッドシート
- マインドマップ
- 画像
- フォーム
- 3Dシーン
- ピアノ
- ゲーム
こうしたインタラクティブなビジュアルツールが、会話の流れの中で自然に現れる。「資料を作って」と言えばドキュメントが、「データをまとめて」と言えばスプレッドシートが、「旅行計画を立てて」と言えば画像付きの旅程表が、キャンバス上に展開される。
ロールという発想
MulmoClaudeの特徴のひとつが「ロール(Role)」だ。
Claudeに役割を与えることで、使えるツールと得意分野を切り替える。
| ロール | できること |
|---|---|
| General | 汎用アシスタント、ToDo、スケジューラ、Wiki |
| Office | ドキュメント、スプレッドシート、プレゼン、ダッシュボード |
| Guide & Planner | 旅行ガイド、レシピ、旅程表 |
| Artist | 画像生成、画像編集、p5.jsによる生成アート |
| Game | オセロ、Phaser/Three.jsのブラウザゲーム開発 |
| Tutor | 学習者のレベルを評価してから教える適応型チュータ |
| Storyteller | 画像とHTMLシーン付きのインタラクティブ絵本 |
| Musician | 作曲とブラウザ演奏 |
| Role Manager | カスタムロールの作成・編集 |
ロールを切り替えると、Claudeのコンテキストがリセットされ、そのロールに必要なツールだけが読み込まれる。余計なツール定義がコンテキストを圧迫しないので、応答は速く、判断は正確になる。
これは、Claude Codeを使った多くのエージェント設計が直面する「ツールが増えすぎてコンテキストが汚れる」問題に対する、ひとつの答えだ。
長期記憶としてのWiki
もうひとつの核が、Wikiだ。
MulmoClaudeには個人用のナレッジベースが内蔵されている。これはAndrej Karpathyが提唱した「LLM Knowledge Bases」というアイデアに着想を得たもので、Claudeに本物の長期記憶を与える仕組みだ。
従来のmemory.mdのような短いメモではない。Claude自身が書き、維持し、成長させていく相互接続されたWikiである。
Wikiはすべてプレーンなmarkdownファイルとしてワークスペースに保存される。
workspace/wiki/
index.md ← 全ページのカタログ
log.md ← 活動ログ
pages/<slug>.md ← エンティティごとのページ
sources/<slug>.md ← 取り込んだ生ソース
使い方はシンプルだ。
- 「この記事を取り込んで:
」と言えば、Claudeがページを取得し、要点を抽出し、Wikiページを作成・更新する - 「私のWikiはTransformerについて何と言っている?」と聞けば、インデックスを検索し、関連ページを読み、文脈を持った答えを返す
- 「Wikiを整理して」と言えば、孤立したページや壊れたリンクを健康診断する
特別なデータベースも、インデックスエンジンも要らない。Claudeが持っているread/write/glob/grepだけで動く。
使えば使うほどWikiが育ち、Claudeがあなたの文脈を理解していく。これはセッション単位で消える従来のAIアシスタントとは根本的に違う体験だ。
セキュリティの現実解
Claude Codeの便利さには代償がある。Bashツールを持つということは、ファイルシステムの大部分にアクセスできるということだ。
MulmoClaudeはこの問題に対して、現実的な解を用意している。
Docker Desktopがインストールされていれば、MulmoClaudeは起動時に自動でDockerを検出し、Claudeをサンドボックス化したコンテナの中で実行する。ワークスペースと~/.claudeだけがマウントされ、それ以外のファイルシステムはClaudeから見えない。
設定は不要だ。Dockerがあれば自動で有効になり、なければ警告を出しつつサンドボックスなしで動く。
「セキュリティはトレードオフだから面倒」という言い訳を、インフラで封じる設計になっている。
なぜこのタイミングなのか
Claude Codeは2025年後半から2026年にかけて、開発者のエージェントOSのような存在になった。IDEやCLIを超えて、あらゆる知的作業の基盤になりつつある。
だが、その使い方はまだ「開発者の道具」の域を出ていない。ターミナルを開き、プロンプトを書き、出力を読む。このインターフェースは、非エンジニアには届かない。
MulmoClaudeは、この壁を壊そうとしている。
- GUIで入り口を広げ
- マルチモーダルな出力で表現の幅を広げ
- Wikiで記憶を永続化し
- Dockerで安全性を担保する
これらは単独の機能ではなく、Claude Codeを誰もが毎日使える知的環境に変えるための組み合わせだ。
試してみる
導入は難しくない。
git clone git@github.com:receptron/mulmoclaude.git
cd mulmoclaude
yarn install
cp .env.example .env
# GEMINI_API_KEY を設定
yarn dev
前提はNode.js 18+と、認証済みのClaude Code CLIだけ。画像生成にはGoogleのGemini 3.1 Flash Image(nano banana 2)を使うので、Gemini APIキーが要る。無料枠で個人利用には十分だ。
ブラウザで http://localhost:5173 を開けば、Claude Codeの新しい顔が見える。
おわりに
Claude Codeは道具だ。だが、どんな道具も、それを包む環境次第で価値が変わる。
MulmoClaudeが示しているのは、「Claude Codeをどう見せるか」「どう記憶させるか」「どう安全に動かすか」という問いに対する、ひとつの具体的な回答だ。
そしてこれはオープンソースで、今すぐ手を動かせる。
リポジトリはこちら: github.com/receptron/mulmoclaude