MulmoClaude — 自分だけのAIアシスタントを「育てる」ツール

MulmoClaude — 自分だけのAIアシスタントを「育てる」ツール

Claude Codeは強力だ。だが、ターミナルの中に閉じ込められている。

テキストだけの応答、コマンドラインのインターフェース、セッションが終われば消える短期記憶、1つしか開けないセッション。これらの制約は、Claude Codeを「開発者のツール」にとどめてきた。

MulmoClaudeは、その制約を外す。

セットアップから最初のコレクション作りまでは、MulmoClaude 完全ガイドに動画・スクリーンショット付きでまとめてある。


「AIアシスタント」は、買うものではなく、育てるもの

MulmoClaudeを一言で言うなら、「AIアシスタント育成ツール」だ。アシスタントの賢さを決めるのは、実はモデルそのものではなく、それがどれだけあなたの文脈 — 会話や予定、メモ、自分で作ったアプリ — を抱えているかだ。だからこそ、それを誰かのサービスに丸ごと預けて囲い込まれるより、自分のパソコンの上で育て、手元に持っておくほうがいい。入れたては何も知らないMulmoClaudeを、対話しながら自分仕様に育てていく — それがこのツールの発想だ。


MulmoClaudeとは何か

MulmoClaudeは、Claude CodeをブラウザUIから並列実行できるアプリだ。導入は npx mulmoclaude@latest の一行だけ。

ターミナルで1セッションずつ使うClaude Codeを、ブラウザから複数同時に操作できる。調べ物をしながらコードを書かせて、別タブで文書を作らせて、さらに別タブでTodoを整理 — 全部並列。

しかも返ってくるのはテキストだけではない。

こうしたインタラクティブなビジュアルツールが、会話の流れの中で自然に現れる。しかもテキストはリアルタイムにストリーミング表示される。ChatGPTのように一文字ずつ流れてくる — もう「Thinking…」の画面を長時間眺める必要はない。

会話の中身はすべてローカルファイル~/mulmoclaude/ にplain textで残る。ロックインなし、gitで履歴管理。


Collections — 自分専用のアプリを、会話で作る

「AIアシスタントを育てる」うえで欠かせないのが、自分専用のアプリだ。MulmoClaudeでは、これをCollection(スキーマ駆動のデータアプリ)として、チャットから作れる。

この夏の大きな進化が、この Collections まわりに集中している。

カスタムビュー — Collectionには、テーブル / カレンダーといった標準ビューに加えて、Claudeが書いたHTMLページをビューとして差し込める。ページはサンドボックス化されたiframeの中で動き、そのCollectionのレコードがJSONとして注入される。だからチャート・ダッシュボード・ポッドキャストプレイヤーのような「自分仕様の画面」を、そのまま作れる。「読書リストを作って」「支出を集計するダッシュボードを付けて」— 会話するだけで、データモデルとUIが立ち上がる。

さらにカスタムビューは、ボタンからそのレコードの詳細モーダルを開いたりそのレコードについての新しいチャットを開始したりできる。データを眺める画面が、そのままAIとの対話の入り口になる。レコードの変更は pubsub 経由で開いているビューに即座に反映される。

レコードボタン — 株価の更新や入金の記録のような「押すだけの仕事」は、レコードのページにボタンとして付けられる。AIが裏で働くボタンと、AIを使わない待ち時間ゼロのボタンの2種類。ボタン自体も、会話で頼んで作る。

バックリンクとロールアップ — コレクション同士はつながる。顧客のページを開けば、その顧客への請求書の一覧(バックリンク)も、未請求の作業時間の合計(ロールアップ)も、そこに揃っている。設定は会話で頼むだけで、AIがスキーマに書き足す。

manageCollection — Claude自身がスキーマ検証付きでレコードを読み書きするための専用ツール。生ファイルを直接書くのではなく、UIと同じバリデータを通すので、壊れたデータはその場で弾かれる。

Discover と Contribute/collectionsDiscover タブから、コミュニティが公開したCollectionをインポートできる(公式レジストリに加え、独自レジストリも追加可能)。逆に Contribute タブからは、自分のCollectionを共有できる。プライバシーのため、Claudeがスキーマから合成のダミーデータを生成したうえで、確認を挟んでレジストリにPRを送る仕組みだ。

この方向性の裏には、「アプリはデータであり、スキーマがハーネス、Claudeがランタイムである」という設計思想がある(receptronが公開したエッセイ “Software for an Audience of One” 等で展開されている)。実際、かつては作り込みの機能だったカレンダー・Todo・定期タスクも、あえて削除され、すべてCollectionとして表現し直された。専用機能を増やすのではなく、自分でアプリを増やせる土台に賭ける、という選択だ。


長期記憶 — Karpathyの「LLM Wiki」

アプリと並んで「育てる」ことの核心が、記憶だ。MulmoClaudeには個人用のナレッジベースが内蔵されている。これはAndrej Karpathyが提唱した「LLM Knowledge Bases」の実装で、Claudeに本物の長期記憶を与える。

従来のmemory.mdのような短いメモではない。3層の記憶構造だ。

「この記事を取り込んで: <URL>」でWikiページが生まれ、「前に調べた○○の続き」でWikiを読んで文脈を理解し、「Wikiを整理して」で孤立ページや壊れたリンクを健康診断する。使うほどWikiが育ち、Claudeがあなたの文脈を理解していく — セッション単位で記憶が消える従来のAIとは、根本的に違う体験だ。


スマホから、どこからでも

「AIアシスタント」の実体が自分のPCにある以上、あらゆるデバイスからアクセスできてこそ意味がある。この夏、その「外からのアクセス」が大きく育った。

スマホ・コンパニオン(リモートホスト) — MulmoClaudeはPWAとして動き、スマホのブラウザから、自宅のPCで動くMulmoClaudeを操作できる。ポップアップに出るQRコードを読むだけでペアリング完了。Firestoreのコマンドチャネル越しに、Collectionやフィードを閲覧し、レコードを起点にチャットを開始できる。スマホ向けに最適化された書き込み可能なカスタムビューまで用意され、ホストがスリープ中に送った操作はオフラインキューに積まれて復帰時に実行される。ホストの認証セッションはブラウザ側に保持され、サーバ再起動をまたいでも再ログイン不要だ。

Web Push(設定 → 通知) — そして最新の追加がこれだ。質問を投げて席を外しても、答えが用意できた瞬間にスマホへ通知が届く。ブラウザを閉じていても、PCさえ動いていれば通知される。「聞いて、離席して、できたら教えて」という、アシスタントらしい使い方がようやく自然になった。

メッセージングアプリから — Telegram / Slack / Discord / LINE / WhatsApp / Email など、各プラットフォーム用のbridge(橋渡しプロセス)を立てれば、そこからMulmoClaudeに話しかけられる。テキストはリアルタイムにストリーミングされ、CLI / Telegramではファイル添付にも対応。Matrix / Mastodon / Bluesky / Signal / Teams など対応先は幅広く、自分用のbridgeも数十行で書ける。ターミナル派向けのCLIもある。


入力を、もっと豊かに

画像・PDF・Office文書 — チャット入力欄に画像をペースト / ドラッグ&ドロップすればその場で認識。1ターンに最大10ファイルまで添付できる。iPhoneのHEIC / HEIF 写真はサーバー側で自動的にJPEGへ変換されるので、そのまま貼れる。PDFはClaude APIがネイティブ処理、DOCX / XLSX / PPTXはテキスト抽出。「このスプレッドシートの売上推移をグラフにして」— 貼るだけでチャートになる。

ローカル音声入力(macOS)— チャット入力のマイクアイコンを押し込んで話し、離すと送信。音声は launcher に同梱された whisper.cpp にストリームされ、すべて端末内で文字起こしされる(クラウドのSTTには一切送られない)。

Mermaid 図 — markdown内の ```mermaid ブロックは、チャットでもWikiでも図として描画される。zip共有 — HTML成果物やmarkdown / Wikiページを、画像や図ごと1つの自己完結zipに書き出して共有できる。


Skill — ワークフローの保存と再利用

会話の中で確立した手順は、Skillとして保存できる。「このデプロイ手順、Skillにして」と言えば、ClaudeがSKILL.mdに書き出し、次回からは /deploy 一発で再実行できる。Skillもチャットから編集できる — 「shiritoriスキルの開始ワードをバナナに変えて」でファイルが書き換わり、次のセッションから反映される。


ロールという発想

Claudeに役割(Role)を与えることで、使えるツールと得意分野を切り替える。

ロールできること
General汎用アシスタント、ToDo、スケジューラ、Wiki
Officeドキュメント、スプレッドシート、プレゼン
Guide & Planner旅行ガイド、レシピ、旅程表
Artist画像生成、画像編集、p5.jsによる生成アート
Tutor学習者のレベルを評価してから教える適応型チュータ
Storyteller画像とHTMLシーン付きのインタラクティブ絵本
Settingsカスタムロールの作成・編集、各種設定

ロールを切り替えると、Claudeのコンテキストがリセットされ、そのロールに必要なツールだけが読み込まれる。余計なツール定義がコンテキストを圧迫しないので、応答は速く、判断は正確になる。


MCP — 任意のツールを自由に追加

MulmoClaudeはMCP (Model Context Protocol) サーバーを自由に追加できる。config/mcp.json に書くだけ、あるいはWeb Settings UIからGUIで設定。外部API、社内ツール、データベース — MCP対応サーバーを繋げば、Claudeの能力が際限なく広がる。


セキュリティの現実解

Claude Codeの便利さには代償がある。Bashツールを持つということは、ファイルシステムの大部分にアクセスできるということだ。MulmoClaudeは多層の防御を用意している。

Dockerサンドボックス(クレデンシャルレス) — Docker Desktopがあれば自動検出し、Claudeをコンテナの中で隔離実行。ワークスペースだけがマウントされ、デフォルトでは認証情報(gh / SSH鍵)はコンテナに渡さない。設定不要で、なければ警告を出しつつサンドボックスなしで動く。この夏、Windows でもサンドボックスがend-to-endで動くようになった。

必要なときだけオプトイン — コンテナの中からgit / ghを使いたいときだけ、SANDBOX_FORWARD_SSH_AGENT=1 SANDBOX_MOUNT_CONFIGS=gh で明示的に認証情報を渡す。デフォルトで隔離、必要なときだけ穴を開ける。

Bearer token認証 — すべてのAPIエンドポイントに認証。起動ごとにランダムトークンが再生成され、同一PC上の他プロセスからの不正アクセスを防ぐ。

データは全てローカル — クラウドに一切送信されず、~/mulmoclaude/ 以下にplain textで永続化される。


vs Claude Code単体

Claude CodeMulmoClaude
インターフェースターミナル (1セッション)ブラウザ (並列セッション)
テキスト表示一括表示リアルタイムストリーミング
出力テキストチャート・画像・スライド・Collections・Wiki
アプリなしスキーマ駆動のCollections + カスタムビュー
外部アクセスなしスマホ (PWA + Web Push) / Telegram / Slack / CLI …
長期記憶なしmemory + Wiki + Journal + Skill
MCP対応対応 + Web Settings UIで設定
画像/PDF添付ファイルパスで参照ペースト / ドラッグ&ドロップ (最大10 / HEIC対応)

試してみる

前提はNode.jsとClaude Code CLIだけ。あとは npx mulmoclaude の一行で起動すれば、ブラウザが開いてそのまま使い始められる。クローンもビルドも要らない。画像生成にはGoogleのGemini APIキーがあるとよいが、なくても他の機能はすべて動く。そして — 積み上がっていくデータは、最初から最後まで自分の手元のフォルダに残る。

インストール手順から最初のコレクション作りまでは、MulmoClaude 完全ガイドに動画・スクリーンショット付きでまとめてある。


おわりに

Claude Codeは道具だ。だが、どんな道具も、それを包む環境次第で価値が変わる。

MulmoClaudeが示しているのは、「AIアシスタントは、買うものではなく、育てるものだ」という考え方への、ひとつの具体的な回答だ。

ブラウザで並列に、スマホから、Telegramで外から、CLIでターミナルから。自分専用のCollectionが増え、Wikiが育ち、Skillが溜まり、Journalが過去を覚えていく。使うほどに、あなたのことを理解していくパーソナルAIアシスタント。

そのデータも、育つ方向も、その運命も、100%自分の手の中にある。オープンソースで、今すぐ手を動かせる。

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