Claude Codeは強力だ。だが、ターミナルの中に閉じ込められている。
テキストだけの応答、コマンドラインのインターフェース、セッションが終われば消える短期記憶、1つしか開けないセッション。これらの制約は、Claude Codeを「開発者のツール」にとどめてきた。
MulmoClaudeは、その制約を外す。
MulmoClaudeとは何か
MulmoClaudeは、Claude CodeをブラウザUIから並列実行できるアプリだ。
ターミナルで1セッションずつ使うClaude Codeを、ブラウザから複数同時に操作できる。調べ物しながらコードを書かせて、別タブで文書を作らせて、さらに別タブでTodoを整理 — 全部並列。
しかも返ってくるのはテキストだけではない。
- ドキュメント / スプレッドシート / チャート
- 画像生成・編集
- マインドマップ / 3Dシーン
- MulmoScript (動画プレゼンテーション)
- Wiki / Todo / スケジューラー
こうしたインタラクティブなビジュアルツールが、会話の流れの中で自然に現れる。しかもテキストはリアルタイムにストリーミング表示される。ChatGPTのように一文字ずつ流れてくる — もう「Thinking…」の画面を長時間眺める必要はない。
会話の中身はすべてローカルファイル。~/mulmoclaude/ にplain textで残る。ロックインなし、gitで履歴管理。
ブラウザだけじゃない — Telegramからも、CLIからも
MulmoClaudeはブラウザを閉じても止まらない。
Telegram bridgeを立てれば、スマホからいつでもMulmoClaudeに話しかけられる。外出先から「今日のTodo確認して」「○○のissue作って」。家のPCで動いているClaude Codeに安全にアクセスできる。
CLI bridgeもある。ターミナルから npx @mulmobridge/cli@latest 一発で接続。どちらもテキストストリーミング対応 — Telegramでは送信したメッセージが1秒ごとに更新され、CLIではターミナルにリアルタイムで文字が流れる。
これらはすべて@mulmobridge/* npmパッケージとして公開されている。自分のプラットフォーム用のbridgeを50行で書ける。
ロールという発想
MulmoClaudeの特徴のひとつが「ロール(Role)」だ。
Claudeに役割を与えることで、使えるツールと得意分野を切り替える。
| ロール | できること |
|---|---|
| General | 汎用アシスタント、ToDo、スケジューラ、Wiki |
| Office | ドキュメント、スプレッドシート、プレゼン |
| Guide | 旅行ガイド、レシピ、旅程表 |
| Artist | 画像生成、画像編集、p5.jsによる生成アート |
| Tutor | 学習者のレベルを評価してから教える適応型チュータ |
| Storyteller | 画像とHTMLシーン付きのインタラクティブ絵本 |
| Role Manager | カスタムロールの作成・編集 |
ロールを切り替えると、Claudeのコンテキストがリセットされ、そのロールに必要なツールだけが読み込まれる。余計なツール定義がコンテキストを圧迫しないので、応答は速く、判断は正確になる。
長期記憶としてのWiki — Karpathyの「LLM Wiki」
MulmoClaudeには個人用のナレッジベースが内蔵されている。これはAndrej Karpathyが提唱した「LLM Knowledge Bases」というアイデアを実装したもので、Claudeに本物の長期記憶を与える。
従来のmemory.mdのような短いメモではない。3層の記憶構造だ。
memory.md— ユーザーの好み、フィードバック、プロジェクト情報を自動蓄積。毎回のセッションで自動ロード。会話から学んだことを黙って書き留める- Wiki — 構造化された知識ベース。ページ間リンク、タグ、ログ。Claude自身が書き、維持し、成長させていく相互接続されたWiki
- Journal — 日次サマリー + トピック別アーカイブ。過去の全セッションを圧縮して長期保存
使い方はシンプルだ。
- 「この記事を取り込んで:
」と言えば、Claudeがページを取得し、要点を抽出し、Wikiページを作成する - 「前に調べた○○の続き」と言えば、Wikiを読んで文脈を理解した上で答える
- 「Wikiを整理して」と言えば、孤立したページや壊れたリンクを健康診断する
使えば使うほどWikiが育ち、Claudeがあなたの文脈を理解していく。セッション単位で消える従来のAIアシスタントとは根本的に違う体験だ。
Skill — ワークフローの保存と再利用
MulmoClaudeでは、会話の中で確立したワークフローをSkillとして保存できる。
「このデプロイ手順、Skillにして」と言えば、Claudeが手順をSKILL.mdに書き出す。次回からは /deploy 一発で同じワークフローが再実行される。
Skillはチャットから作成・編集・更新できる。「shritoriスキルの開始ワードをバナナに変えて」— Claudeがファイルを書き換え、次のセッションから反映される。
画像・PDF・Office文書もチャットに貼れる
チャット入力欄に画像をペースト / ドラッグ&ドロップすれば、Claudeがその場で認識する。PDFはClaude APIのネイティブ対応で処理。DOCX / XLSX / PPTXはサーバー側でテキスト抽出される。
「このスプレッドシートの売上推移をグラフにして」— ファイルを貼るだけで、Claudeがデータを読み、チャートを生成する。
MCP — 任意のツールを自由に追加
MulmoClaudeはMCP (Model Context Protocol) サーバーを自由に追加できる。config/mcp.json に設定を書くだけ。Web Settings UIからGUIで設定することも可能。
外部API、社内ツール、データベース — MCPに対応したサーバーを繋げば、Claudeの能力が際限なく広がる。
セキュリティの現実解
Claude Codeの便利さには代償がある。Bashツールを持つということは、ファイルシステムの大部分にアクセスできるということだ。
MulmoClaudeはこの問題に対して、多層の防御を用意している。
Dockerサンドボックス: Docker Desktopがあれば自動検出、Claudeをコンテナの中で隔離実行。ワークスペースと~/.claudeだけがマウントされる。設定不要 — Dockerがあれば自動で有効、なければ警告を出しつつサンドボックスなしで動く。
SSH agent forwarding: Dockerの中からgit/ghコマンドが使える。ただしSSH agentはホスト制限付き — デフォルトでgithub.comのみ許可。コンテナの中から本番サーバーにSSHされる心配はない。
Bearer token認証: すべてのAPIエンドポイントに認証。起動ごとにランダムトークンが再生成され、同一PC上の他プロセスからの不正アクセスを防ぐ。
データは全てローカル: クラウドに一切送信されない。~/mulmoclaude/ 以下にplain textで永続化。
vs Claude Code単体
| Claude Code | MulmoClaude | |
|---|---|---|
| インターフェース | ターミナル (1セッション) | ブラウザ (並列セッション) |
| テキスト表示 | 一括表示 | リアルタイムストリーミング |
| 出力 | テキスト | チャート・画像・スプレッドシート・Wiki |
| プラグイン | なし | 15+ (Todo / スケジューラー / 画像生成 etc.) |
| 外部アクセス | なし | Telegram / CLI bridge |
| 長期記憶 | なし | memory + Wiki + Journal + Skill |
| MCP | 対応 | 対応 + Web Settings UIで設定 |
| 画像/PDF添付 | ファイルパスで参照 | ペースト / ドラッグ&ドロップ |
試してみる
導入は難しくない。
# 前提: Claude Code CLI がインストール・認証済み
npm install -g @anthropic-ai/claude-code
claude auth login
# クローン & 起動
git clone https://github.com/receptron/mulmoclaude.git
cd mulmoclaude
yarn install
yarn dev
ブラウザで http://localhost:5173 を開けば、Claude Codeの新しい顔が見える。
画像生成にはGoogleのGemini APIキーが必要(.envにGEMINI_API_KEYを設定)。なくても他の全機能は動く。
ターミナルから使う:
npx @mulmobridge/cli@latest
スマホから使う (Telegram):
TELEGRAM_BOT_TOKEN=xxx TELEGRAM_ALLOWED_CHAT_IDS=123 \
npx @mulmobridge/telegram@latest
おわりに
Claude Codeは道具だ。だが、どんな道具も、それを包む環境次第で価値が変わる。
MulmoClaudeが示しているのは、「Claude Codeをどう見せるか」「どう記憶させるか」「どう安全に動かすか」「どこからでもアクセスできるようにするか」という問いに対する、ひとつの具体的な回答だ。
ブラウザで並列に、Telegramで外から、CLIでターミナルから。Wikiが育ち、Skillが溜まり、Journalが過去を覚えていく。使うほどに賢くなるパーソナルAI環境。
オープンソースで、今すぐ手を動かせる。
リポジトリはこちら: github.com/receptron/mulmoclaude