デマンド交通『おでかけ号』のタクシー予約/配車システムをDX化、高知・土佐清水で新登場

シンギュラリティ・ソサイエティと高知工科大学の連携で過疎化が進む地域交通に対してIT技術による利便性の向上を目指して

地方の過疎地域では路線バス利用者は年々減少しており、乗客が少なくても定時定路線の運行を続けることが行政や運行事業者に大きな負担となっています。この社会課題に対して、高知県の土佐清水市では自宅付近から目的地まで利用者が事前に電話予約する乗合タクシー(デマンド交通『おでかけ号』)を先行導入しています。これまでは、市内に2社ある運行事業者と、利用者からの電話予約を受け付ける地元のNPO団体が運営に携わっていましたが、電話で受け付けた予約をFaxで運行事業者に送信するなど、人の手が多く関与することによる不具合が発生していました。

今回はこれまで通り電話予約できる利便性を維持したまま、タクシー運行情報のGPS管理によるユーザーと運行事業者の利便性向上と運行事業者や紙を使った情報管理の仕組み脱却による運行事業者から市役所への報告や補助金申請業務の省力化を可能にしました。また、タクシー運転手にとってもデジタルデータを活用することで効率的に顧客獲得が期待できます。

土佐清水市役所、運行事業者(有限会社足摺交通、龍串見残観光ハイヤー有限会社)、高知県公立大学法人 高知工科大学 地域連携機構 地域交通研究室、一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティ(代表:中島 聡)が連携して、乗合タクシーの仕組み(デマンド交通『おでかけ号』)をDX化した運行管理システムを開発しました。

従来型の定時定路線運行のバスでは採算が取れない過疎地においても、交通弱者の生活を維持するために地方自治体がバスを運営しています。この社会課題に対して、高知県の土佐清水市では平成25年10月から自宅付近から目的地まで利用者が事前に電話予約する乗合タクシーであるデマンド交通『おでかけ号』を運用してきました。

一方、デマンド交通の運用経費は過疎地の自治体には巨額であり、予約や運行記録の管理を行ってきたため大きな手間と費用がかかっていました。さらに、これを効率化するために新たに予約管理システムを外注する予算もないのが実情です。そこで、非営利団体であるシンギュラリティ・ソサエティや大学が連携して、乗客や運行事業者、市役所にとって使いやすいDX化した運行管理システムを新たに構築しました。

また、本運行システムの概要と特長は下記の通りです。

■本運行管理システムの概要
・ユーザーからの電話予約はタクシー事業者で直接受付
・予約情報や運行記録なども電子化して全てクラウドで管理
・クラウドの情報を市役所担当者が直接閲覧するので、事業者から市役所への報告不要
・コピーアンドペーストで市役所への補助金の申請業務が対応可能
・顧客の乗車/降車記録などのデジタルデータを使った効率的な集客が可能

■本運行管理システムの特長
・これまで市役所が支払っていた予約受付の外部委託費用を削減
・紙の情報処理が不要
・乗客の自宅や乗降場所の位置情報(緯度経度)と個人情報を一括記録
・タクシーの現在位置をGPSで把握可能になり、タクシーの到着遅れに対する問い合わせ応答が容易

■シンギュラリティ・ソサエティが運行管理システムを開発する理由
・予約管理システムの外注では数千万円必要であり、過疎地域では導入が困難
・過疎地域の課題は営利目的では解決できないことが多く、非営利団体/大学の支援が重要
・ベンダーに縛られない自由なMaaSプラットホームを社会に提供するための第一歩

本事業はNPOと大学の連携体制によって、営利目的では事業展開が困難な過疎地域でもサービス展開を可能にできると考えており、ベンダーに縛られないMaaSを多くの地域に拡大していきます。

※MaaS:Mobility as a Service(マース):
地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス


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