郵便に電報と速達と普通があったのは、急ぎ方に段があったから

郵便に電報と速達と普通があったのは、急ぎ方に段があったから

郵便には段がありました。電報、速達、普通。

分けていたのは内容ではありません。同じ一行の知らせでも、電報で打つか普通郵便で出すかは差し出す人が決めていました。相手をいま呼び止めるべきか、明日でよいか、という判断のほうを段にしていたわけです。

全部を電報で送る人はいませんでした。高くつくというのもありますが、それ以上に、毎日電報が届く相手はそのうち電報を怖がらなくなります。段を分けてあることで、電報が届いたときに手を止める意味が保たれていました。

土曜の午前に八回

ターミナルで動く AI に長めの作業を頼んで、買い物に出ました。MulmoTerminal は AI を何体も並べて見張るための画面で、自分のパソコンで動きます。無料で、オープンソースとして公開されています。手元を離れているあいだも、スマホに通知が飛びます。

スマホが震えます。このコマンドを実行していいですか。yes と返します。三分後、また震えます。このファイルを消していいですか。yes。また震えます。また震えます。

スーパーを出るまでに八回来ました。

これを二回やると、通知を全部切ります。切った結果、AI が終わったことにも気づかなくなります。帰ってきて画面を見たら、四十分前に終わっていた。

呼ばれたら気づくために入れた機能が、うるさいという理由で丸ごと捨てられる。よくあることだと思います。

うるさいのは片方だけ

通知が飛ぶ瞬間は二種類あります。

終わったとき。AI が返答を終えて、まだ読んでいない状態です。一回のやりとりにつき一回です。

止まったとき。AI がこれをしていいですかと聞いて待っている状態です。聞くたびに一回です。

さきほどの八回は、後者です。そして二つは別々に切れます。

後者を切ると、終わったら教えてくれて、途中で聞かれたことには次に画面を見たときに答える、という形になります。買い物のあいだは静かで、帰ってきたら一通だけ来ている。

電報と普通郵便を分けたのと同じ操作です。

一件ずつ来るのは正しい

念のため書いておくと、八回来るのは間違いではありません。実際に八回止まっていて、答えるまで一ミリも進みません。知らせるべきこととして飛んでいます。

うるさいのは、八回全部に今すぐ答える必要がないときです。長い作業を頼んで出かけるときは、たいていそうです。

内容が変わったのではなく、こちらの急ぎ方が変わっています。だから段のほうを切り替えます。

全部切っても、選んだものは消えない

大元のスイッチを切ると、全部止まります。そのとき、選んだ種類は残っています。

集中したい時間は大元を切って、戻すと前に選んだ組み合わせがそのまま生きています。毎回選び直すことになりません。

あとで種類が増えても、勝手に鳴らない

将来の版で通知の種類が増えても、チェックを入れるまでは止まったままです。

更新したら頼んでいない通知が鳴り出す、ということが起きません。AI の道具は更新が速いので、更新したら挙動が変わっていたが一番いやな体験になります。通知についてはそうならない作りです。

見ているマスでも飛ぶ

一つ、音とは逆の判断があります。

パソコンの通知音は、いま見ているマスでは鳴りません。目の前で終わったものに音で知らせる意味がないからです。

スマホへの通知は、見ているマスでも飛びます。こちらはパソコンが手元にない前提の機能なので、逆になっています。除外されるのは、裏で勝手に動いている内部の処理だけです。

繋ぐ手順は二段階

パソコン側では、ツールバーのリモート接続のパネルを開いて、Google でサインインします。そのあと設定で通知を有効にします。既定は切ってあります。

ここで一つ注意があります。設定の中に別の Google アカウントの項目があって、そちらはカレンダー用の別物です。通知に使うのはリモート接続のパネルのほうです。

ログインはアプリを再起動しても維持されます。再読み込み、タブの復帰、ネットワークの復旧のいずれでも自動で繋ぎ直します。

スマホ側では、mulmoserver.web.app を開いて、パソコンと同じ Google アカウントでサインインします。パネルに QR コードが出るので、カメラで読んでもかまいません。

iPhone だけ、先にインストールが必要

ここでつまずく人が多いところです。

iOS では、ホーム画面に追加したものからしか通知を受け取れません。Safari のタブで開いたままでは有効にできません。

Safari で開いて、共有ボタンからホーム画面に追加して、そのアイコンから起動して同じ Google アカウントでサインインしてから、通知を有効にします。三番目を飛ばすと、二番目までやっても有効にできません。

これは iOS の仕様なので、アプリ側ではどうにもなりません。Android の Chrome はブラウザで開いたまま有効にできますが、ホーム画面に追加しておくとより安定します。

来ないときに確認する順

四つ全部が揃ったときに来ます。上から潰すのが速いです。

パソコン側でリモート接続が繋がっているか。通知のスイッチが入っているか。スマホ側で有効にした端末が一台以上あるか。その瞬間が選んだ種類か。

同じ通知が二回届く場合は、スマホに古い登録が残っている可能性があります。登録し直すと解消します。

使ってみる

MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。

npx mulmoterminal@latest

ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。

動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。

確かめ方 無ければ
Node.js 22.12 以上 node -v nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す
Claude Code claude --version macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン

Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。

そのうえで二段階あります。

パソコン側では、ツールバーの RemoteHost(phonelink のアイコン)を開いて Connect を押し、Google アカウントでサインインします。そのあと Settings の Web Push notifications を開いて通知を有効にし、その下のチェックで止まったときだけ残します。

Settings の中にある Google account はカレンダー用の別物です。通知に使うのは RemoteHost のパネルのほうです。

スマホ側では、mulmoserver.web.app を開いて、パソコンと同じ Google アカウントでサインインします。パネルに QR コードが出るので、カメラで読んでもかまいません。iPhone は先にホーム画面に追加してください。Safari のタブで開いたままでは通知を有効にできません。

設定ファイルではこうなります。

{ "pushEnabled": true, "pushKinds": ["waiting"] }

パソコンで AI に許可が必要なことを頼んで、席を離れます。スマホが震えれば成功です。

やめるときは、Settings の大元のスイッチを切れば全部止まります。選んだ種類は残るので、戻せば同じ組み合わせが生きています。スマホ側から切りたいときは、その端末の通知を無効にします。

まとめ

郵便に電報と速達と普通があったのは、内容ではなく急ぎ方に段があったからです。全部を電報で送ると、電報が届いたときに手を止める意味が消えます。

AI からのスマホ通知も同じで、止まったときと終わったときは急ぎ方が違います。うるさいのは止まったときのほうで、そこだけ切れば買い物のあいだは静かになります。

出かけるときと席にいるときで切り替えて使うのが、実際の形になります。

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