店の金と家の金を同じ財布に入れない、という商売の基本

店の金と家の金を同じ財布に入れない、という商売の基本

個人で商店を始めた人が最初につまずくのは、たいてい帳面です。

売上を同じ引き出しに入れて、そこから自分の昼飯も出す。仕入れの支払いも、子どもの学費も、同じところから出ていきます。月末に、儲かったのかどうかが分かりません。金額を足し引きできないのではなく、どちらの勘定なのかが分からないからです。

だから帳面を二つに分けます。店のものと家のもの。分けるとお金が増えるわけではありませんが、いま何が起きているかが分かるようになります。

混ざっていること自体より、混ざっていて分からないことのほうが困ります。

火曜の夜九時

ターミナルで動く AI に、会社の作業を一件終えてもらって、自分のプロジェクトに戻りました。MulmoTerminal は AI を何枚ものマスに並べて見張るための画面で、一マスが一体の AI にあたります。無料で、オープンソースとして公開されています。

同じ画面の隣のマスで、個人のアプリを AI に直させます。

手が止まります。この使用量は、どちらの契約から引かれているのか。

混ぜたくない理由は、たいてい二つ

これが気になる理由は、人によって違います。

会社の契約で個人のコードを書きたくない。経費で払っているものなので、私用に使うのは筋が違う。

個人の契約で会社のコードを書きたくない。自分の枠が減るのもありますが、会社のコードが個人のアカウントの記録に残るのもいやです。

どちらの向きでも、混ざっていることが分からないのが一番いやです。帳面の話と同じです。

仕組みは単純で、それが安心できる

先に仕組みを書きます。

Claude Code も Codex も、ログインと会話の記録と設定を一つのフォルダにまとめて持っています。つまり、フォルダを別にすればログインも別になります。

AI の道具が独自の認証を持ち出しているわけではありません。その CLI が元々持っている仕組みをそのまま使っています。自分で確かめられる作りなので、裏で何かしているのではという心配をしなくて済む部分です。

起動するときに選ぶ

契約を登録しておくと、空いているマスの起動画面に、使うモデルの下にどの契約で動かすかを選ぶ欄が出ます。選択肢はいつものログインと、登録した契約です。

起動したマスのヘッダーに契約の名前が出ます。

これが無いと、冒頭の疑問が毎回起きます。どのマスがどの契約で動いているかが、見て分からないので。

使用量も、契約ごとに分かれて出る

ツールバーには、契約ごとの使用量が名前付きで並びます。いつものログインの横に、登録した契約の分が出る形です。

測り方が二つで違うことも書かれています。

Claude の場合は、その契約で短い隠れた会話を動かして測ります。その契約の枠をごくわずかに使いますし、先にログインしておく必要があります。Codex の場合は、自分の会話の記録から読むので枠は使いません。

Claude は枠を教えてくれる仕組みが無いので、実際に少し使って測ります。これは正直に書かれている制約です。測るために少し使うのを隠されるのが一番いやなので、書いてあるのは助かります。

新しいフォルダは、空から始まる

登録した契約のフォルダが新しいときは、最初に起動したマスが空の状態で始まります。Claude Code がそこでログインを求めます。

空から始まるのは、設定、自分で登録した外部の道具、プロジェクトごとのこのフォルダを信用するの答え。いつものログインのフォルダにあるものなので。

一方で空から始まらないものもあります。同梱されているスキルと、そのフォルダの GUI の道具です。アプリが用意するので。

自分で設定したものは引き継がれないが、アプリが用意するものは効く、という線です。二回目からは、ログインも設定もそのまま使われます。

会話は契約に紐づく

始めたときの契約のまま動きます。再開するときも、アプリを再起動したあとも、何か月か経ってからでも、選択欄の表示に関係なく同じ契約で動きます。

理由は単純で、会話の記録がその契約のフォルダにあるからです。

再開の一覧には全部の契約の会話が並んで、それぞれに契約の名前が付きます。先週の会話をうっかり別の契約で再開する、ということが起きません。

既定のフォルダを指す登録は、いつものログイン扱い

少し込み入っていますが、事故を避けるために知っておく価値があります。

Claude Code は、設定ディレクトリの指定があるかどうかでログインを見分けます。指定した値が既定と同じでも同じです。既定のフォルダを明示的に指定すると、それは既定のログインではなく、そのフォルダを指す別のログインとして扱われます。

そのため MulmoTerminal は、既定のフォルダを指す登録をいつものログインとして扱います。そのマスには環境変数を足さず、専用の使用量も出しません。

自分で罠を踏まないように、アプリ側で吸収している部分です。

やってはいけない書き方

明示的な警告があります。この設定ディレクトリの指定を、別の場所に書かないでください。自分のコマンドの中や、モデルの接続設定の中のことです。

理由が具体的です。MulmoTerminal は既定のフォルダを見る一方で、会話は別の場所に書かれることになって、会話の一覧、再開、コスト、履歴がすべて空になります。

症状は、何も記録されていない、です。書いた本人は、自分が指定したせいだと気づきにくい。

契約を分けたいなら、専用の設定で宣言するのが唯一の正解です。

ベータであることも書いてある

ベータ版だと明記されています。自動のテストでは確かめているものの、実際の使用ではまだ確かめていない段階です。

契約とお金に関わる機能なので、これが書いてあるのは重要だと思います。最初は捨ててよい作業で試して、使用量が正しく分かれているかを確かめる。そのあとで本番の使い分けに入るのが安全です。

使ってみる

MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。

npx mulmoterminal@latest

ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。

動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。

確かめ方 無ければ
Node.js 22.12 以上 node -v nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す
Claude Code claude --version macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン

Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。

書く場所は ~/.mulmoterminal/config.json です。無ければ作ります。

{
  "accounts": [
    { "id": "work",     "label": "仕事", "agent": "claude", "home": "~/.claude-work" },
    { "id": "personal", "label": "個人", "agent": "codex",  "home": "~/.codex-personal" }
  ]
}

Codex も同じ形です。違うのは agent と、渡される環境変数の名前だけで、Claude Code は設定ディレクトリを、Codex は自分の置き場所を受け取ります。

この設定は起動時に一度だけ読まれるので、アプリを再起動してタブを再読み込みします。

空いているマスの起動フォームに ACCOUNT の欄が出て、仕事を選べれば成功です。起動したマスのヘッダーに名前が出ます。新しいフォルダを指定したときは、最初の一回だけログインを求められます。

やめるときは、その項目を消して再起動します。始めた会話は、そのアカウントのまま再開されます。会話の記録がそこにあるので。

設定ディレクトリの指定を、自分のコマンドやモデルの接続設定に書かないでください。記録が全部空になります。

まとめ

店の金と家の金を同じ引き出しに入れると、儲かったかどうかが分からなくなります。分けるとお金は増えませんが、いま何が起きているかが分かります。

AI の契約も同じで、どちらから引かれているかが画面で分かるだけで、夜九時に手が止まらなくなります。

仕組みは、ログインと記録が入っているフォルダを別にするだけです。ただしその指定を別の場所に書くと、記録が全部空になります。そこだけ気をつけます。

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