どこに会社を設立するか
起業する場合、多くは日本国内でM&Aや上場を想定しますが、米国への進出を考えた場合に米国で法人を作る選択肢も考えられます。その場合、会社を設立時に、どこに設立するかが問題となります。
最初に考えるべきは「資金調達をどこでするか」です。日本でのみ資金調達をするのであれば、日本に会社を設立すれば十分ですが、米国のVCからも調達したいのであれば、米国に設立するべきです。よほど魅力的な会社でない限り、米国のVCは日本のベンチャーには投資してくれません。逆に、日本のVCは、米国に設立しているベンチャー企業にも普段から投資しているので、何の問題もありません。
米国で会社を設立する場合、「どの州で設立するか」も重要です。会社法が州ごとに異なるため、細かなところで違いが出てくるからです。多くのベンチャー企業が、Delaware州に設立していますが、これには以下の二つの理由があります。
- Delaware州の会社法がしっかりしているから
- VCが雇っている弁護士が、Delaware州の法律に精通しているから
特に重要なのは2番目です。米国には50の州があるため、会社法も50個あり、弁護士にとって、全部を学ぶことは不可能です。VCから資金調達するベンチャー企業はDelaware州の会社を設立し、VCが雇う弁護士は、Delaware州の法律にだけは詳しく勉強しておく、という慣習というか、暗黙の了解があるのです。
しかし、最近になって、Delaware州の裁判官が、Elon MuskがCEOの給料の代わりにもらった株を取り上げるという判決を出したため、その「暗黙の了解」に疑問符が付くようになっています。だからと言って、ベンチャー企業がDelaware州以外に会社を設立するようになった、という話は聞いていませんが(唯一知っているのは、Elon Muskは、SpaceXをDelaware州からTexas州に登録を移したことぐらいです)。なので、現時点であれば、Delaware州に設立するのが無難だと思います。
ちなみに、Delaware州は会社の登記に使うだけで、実際の会社は、別の州でも、日本でも構いません。Delaware州にオフィスを持たない場合は(大半のベンチャー企業が持っていません)、書類手続きに必要な代理人を雇う必要がありますが、ここは競争が激しいので、とても安価です。日本語が話せる代理人を雇わなければならない、なんてこともないので、値段で選べば良いと思います。