本の最後のページに奥付があります。発行日、版と刷りの回数、印刷所、製本所。
読むために要る情報ではありません。物語を追うのに印刷所の名前は関係ありません。それでも必ず入っているのは、次に刷る人のためです。三刷を出すときに、どこで刷ったどの版を直すのかが分からないと始まりません。
そして奥付には、表紙に書いてあることは繰り返しません。書名と著者名は表に出ているので、奥付に同じことを書く紙は使いません。
書き足す情報を決めるときは、どこにも書いていないものを選ぶ。奥付はその形をしています。
三日後にレビューが付く
三日前に出した提案に、レビューが付きました。提案というのは、こう直しましたので確認してくださいという形の申し出で、GitHub では PR と呼ばれます。
ここは別の書き方のほうがいい。
直すために、作業していたフォルダを開こうとします。どれだったか思い出せません。
~/src/myrepo
~/src/myrepo2
~/src/myrepo3
三本あります。どれかで作業したはずです。提案のページを見ても、そこには書いてありません。
提案のページに出ていない情報
GitHub の提案のページには、いろいろ書いてあります。どのファイルを変えたか、どの枝で作業したか、誰が出したか、テストの結果。
自分のパソコンのどのフォルダで作業したかだけが、どこにもありません。
普通は困りません。フォルダが一本しかないので。AI を並列で動かすようになると、三本になります。一体に一フォルダにすると、お互いの変更を壊さないので自然にそうなります。
そこから困り始めます。
三本を順に開いて確かめる
いまのやり方はこうです。一本目を開いて枝の一覧を見る。無い。二本目を開いて枝の一覧を見る。無い。三本目にあった。
二分くらいです。大した時間ではありません。ただしレビューが付くたびに毎回やります。提案が四件並行していると、四回やります。
一行入っているだけで解決する
MulmoTerminal で作った提案には、本文の末尾に一行入ります。AI を何枚ものマスに並べて見張るための画面で、無料で、オープンソースとして公開されています。
work in myrepo3
これだけです。既定で有効になっていて、切ることもできます。
奥付の印刷所の行と同じ位置にあります。
枝の名前は書かない
ここが設計として気が利いているところです。
入るのは、もとのフォルダの名前です。作業用に切ったフォルダの名前ではありません。
理由が明快で、その名前は枝そのものであり、枝は提案のページがすでに表示しているからです。
枝の名前は提案のページに既に大きく出ているので、書く価値がありません。フォルダの名前はどこにも出ていないので、これが欠けている情報です。
一行に何を入れるかを、他のどこにも書いていないものから選んでいます。情報を足すときの正しい考え方だと思います。分かることを全部書くのではなく、分からないことだけ書く。
表紙に書いてあることを奥付に書かないのと同じです。
三つの補足
このアプリが作った提案だけに入ります。すでに提案がある枝でボタンを押しても、その提案が開くだけで、行が二重に付きません。
あとから編集してかまいません。アプリが提案の本文を管理し続ける作りにはなっていません。作るときに一行足すだけです。
一行を足すのに失敗しても、提案の作成自体は成功して開きます。gh が無い、通信のエラー、といった場合です。行が付かないだけです。
三つ目が優先順位として正しい。一行の付加情報のために、提案の作成が失敗してはいけません。
反映が即座で、再起動が要らない
設定を変えると、次に作る提案から効きます。再起動は要りません。
理由も面白いです。提案を作るたびにファイルから読み直しているので、隣で動いている別の MulmoTerminal からも変更が見えます。
起動時に一回読むのではなく、使うたびに読むことで、複数を同時に動かしていても食い違いません。提案を作るのは頻繁ではないので、毎回読んでも負荷になりません。
一本しか持っていない人には意味がない
正直に書いておくと、フォルダを一本しか持っていない人にこの行は無意味です。work in myrepo と書かれても、他に候補がないので。
二本目を作った日に価値が生まれる設定です。
既定で有効になっているのは、あとでフォルダを増やしたときに、そのとき出した提案には書いてなかったが起きないようにするためでしょう。一刷の奥付にも印刷所を書いておくのと同じ理由です。
使ってみる
MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。
npx mulmoterminal@latest
ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。
動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。
| 確かめ方 | 無ければ | |
|---|---|---|
| Node.js 22.12 以上 | node -v |
nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す |
| Claude Code | claude --version |
macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン |
Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。
この設定は、書かなければ入っています。何もしなくても効いているので、入れる操作はありません。
書く場所は ~/.mulmoterminal/config.json です。無ければ作ります。設定画面の GitHub and GitLab のチェックでも変えられます。下は切るときの書き方です。
{
"prWorkdirFooter": false
}
効くのは次に作る提案からで、再起動は要りません。作るたびにファイルを読み直しています。
既定では入っているので、提案を一つ作って本文の末尾に work in <フォルダ名> があれば動いています。
切ったあとで戻したくなったら、その行を消すか true にします。すでに作った提案の本文は書き換わりません。
まとめ
奥付は読者のためではなく、次に刷る人のために書かれています。そして表紙に書いてあることは繰り返しません。
提案の末尾に入る一行も同じで、入るのはフォルダの名前だけです。枝の名前は提案のページがもう表示しているので、書く価値がありません。
分かることを全部書くのではなく、分からないことだけ書く。一本しか持っていない人には無意味な行ですが、二本目を作った日に価値が生まれます。
