船には色が塗られていて、旗も掲げられています。どの船か、何を積んでいるか、いま何をしているかが、近くを通る船から見て分かるようになっています。
霧が出ると、その全部が使えなくなります。
そこで汽笛があります。長く一回は自分が進んでいること、短く三回は後退していること。音の長さと回数だけで名乗ります。学校のチャイム、消防車と救急車のサイレン、踏切の音も同じ仕組みで、目を使わずに届く合図として作られています。
見えないところにいる相手に何かを伝えるとき、残っているのは音だけです。
色分けは、画面を見ているときしか効かない
ターミナルで動く AI を何体も並べて動かすとき、マスをプロジェクトごとに色分けしておくと九枚が見分けられます。MulmoTerminal はそのための画面で、一マスが一体の AI にあたります。無料で、オープンソースとして公開されています。
ただ、別のウィンドウで資料を書いているときは、色が見えません。
そして並列で AI を動かす本当の利点は、席を離れられることです。別の作業をしていて、呼ばれたら戻る。そのときに効くのは音のほうです。
音が鳴りました。どのプロジェクトかは分かりません。見に行くと、個人のプロジェクトでした。急ぎません。資料に戻ります。また音が鳴ります。また見に行くと、今度はクライアントのプロジェクトでした。こちらは急ぎます。
音は既定では全部同じなので、霧の中で汽笛が一種類しかない状態です。
プロジェクトごとに音を変えられる
プロジェクトの設定に書けます。
{
"sound": "./.mulmoterminal/alert.mp3",
"sounds": { "command-failed": "preset:gong" }
}
上が全部の種類に効くもの、下が特定の種類だけです。そのフォルダで開いたマスでは、どちらもパソコン全体の設定より優先されます。
音声ファイルを用意しなくていい
音のファイルを探してプロジェクトに入れるのは面倒なので、用意されている音をそのまま指定できます。
{ "sounds": { "command-failed": "preset:gong" } }
プロジェクト側に音声ファイルを置く必要がありません。このプロジェクトだけ失敗音を銅鑼にする、がファイルを一つも足さずにできます。
三つ以上に別の音を付けても、区別できない
やってみると分かる部分です。九枚のマスに九種類の音を付けたくなりますが、やめたほうがいいです。
区別できるのは最初の数日です。そのあとは、これは何の音だっけ、と考えるようになります。考えている間に音の意味がなくなって、結局見に行くことになります。
汽笛の合図が少ないのは、覚えられる数に限りがあるからです。
効くのは一つか二つだけ
実際に効く使い方は、このあたりです。
メインのプロジェクトだけ音を変える。それ以外は既定の音のままにします。すると、いつもの音じゃないからメインだ、と分かります。覚えるのは一つだけなので忘れません。いつもの音のほうは覚える必要がありません。
失敗音だけ変えるのも効きます。成功は聞き流してよいので、失敗だけ区別します。
長時間走らせるプロジェクトの完了音だけ変えるのも同じ形です。他のが終わっても反応しなくていい。
どれも、覚えるのは一つだけという形になっています。
パスはそのフォルダの中だけ
音声ファイルのパスは、そのフォルダからの相対です。絶対パスや ../ で外に出るものは断られます。
アイコンと同じ扱いで、開いたプロジェクトがパソコン上の別の場所を指せないようにするためです。人のプロジェクトを取ってきて開くことは普通にあります。その設定ファイルが /Users/you/private/secret.mp3 を再生できてしまうと、それはファイルの存在を確かめる手段になります。
作業フォルダには引き継がれない
作業用に切ったフォルダには、色や名前は引き継がれますが、音は引き継がれません。
これらはプロジェクトのフォルダの中のパスを指していて、作業フォルダにはその実体がないからです。./.mulmoterminal/alert.mp3 は、作業フォルダから見ると存在しないパスです。引き継ぐと、音が鳴らないのに設定が書かれている状態になります。
用意されている音だけなら引き継いでも動きますが、項目ごとに扱いを変えると規則が読めなくなるので、まとめて引き継がない側にしています。
試すときは、そのマスを見ない
一つ落とし穴があります。通知音は、いま見ているマスでは鳴りません。目の前で終わったものに音で知らせる意味がないからです。
プロジェクトごとに音を変えるのは、そのマスを見ていないときのための設定です。設定して、そのマスを見ながら試しても鳴りません。別のマスを見ている状態で試してください。
ここを知らないと、設定が効いていないと思って何度も書き直すことになります。
使ってみる
MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。
npx mulmoterminal@latest
ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。
動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。
| 確かめ方 | 無ければ | |
|---|---|---|
| Node.js 22.12 以上 | node -v |
nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す |
| Claude Code | claude --version |
macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン |
Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。
書く場所は、そのプロジェクトのフォルダの一番上に置く .mulmoterminal.json です。無ければ作ります。パソコン全体の設定である ~/.mulmoterminal/config.json ではありません。
{
"sounds": { "command-failed": "preset:gong" }
}
AI にファイルを書かせたときは即座に効きます。エディタで手で書いたときは、タブを再読み込みします。ファイルを見張ってはいません。
そのマスを見ていない状態で失敗させて、銅鑼が鳴れば成功です。見ているマスでは鳴りません。
やめるときは、.mulmoterminal.json からその項目を消せば戻ります。ファイルごと消してもかまいません。
まとめ
霧の中では色も旗も使えないので、船は汽笛の長短で名乗ります。見えない相手に伝える手段は音しかなく、そして合図の数は覚えられるだけに絞られています。
マスの色分けは、画面を見ているときにしか効きません。席を離れられることが並列の利点なのだから、耳で分かる必要があります。
MulmoTerminal はプロジェクトごとに音を変えられますが、変えるのは一つか二つにとどめたほうが効きます。いつもの音じゃないから戻る、という形にすると覚えるのが一つで済みます。
