ネガが残っていれば、プリントは捨てられる

ネガが残っていれば、プリントは捨てられる

現像に出した写真は、プリントとネガが別の袋に入って返ってきました。

プリントは捨てられます。ピントが合っていないもの、同じ構図が三枚あるもの、指が写っているもの。捨てるのに躊躇はありません。焼き直せるからです。

ネガのほうは捨てられません。薄い茶色の帯で、見ても何が写っているかよく分からない。それでも引き出しの奥に残しておきます。あれが無くなると、もう一枚も作れません。

捨ててよいかどうかは、そのものの価値では決まりません。もう一度作れるかどうかで決まります。

三週間後に四十行

金曜の夕方、AI に長めの作業を頼んだまま帰りました。月曜の朝、パソコンを開くとその会話がそこにいます。アプリを再起動しても、ノートを閉じても、生き残っている。

MulmoTerminal はターミナルで動く AI を何枚ものマスに並べて見張るための画面で、ブラウザで開きます。無料で、オープンソースとして公開されています。tmux というターミナルの中身を生かしたまま置いておく古い道具を使っているので、アプリを再起動しても会話が生き残ります。

便利です。そして三週間後には、再開できる会話の一覧に四十行並んでいます。今日の続きを探すために、四十行を上から読むことになります。

片付ける設定が、一番怖い設定

一覧が長すぎるので、片付けたい。そこで設定を見ると、何日放置したら掃除するかという項目があります。既定は七日です。

ここで手が止まります。七日前の会話には、まだ用があるかもしれない。消してしまったら、あのとき AI が書いた設計の説明は二度と読めないのか。

自動で何かが消える設定を、中身を知らずに有効にするのは、いちばんいやな形の不安です。

消えるのは二つ、残るのは一つ

先に答えを書きます。会話そのものは消えません。

消えるのは、動いていたプロセスと、画面のスクロールです。そのとき走っていた作業と、ターミナルに出ていた表示。

残るのは、会話の記録です。頼んだことと、AI が答えたこと。

記録は別のファイルに保存されているので、掃除したあとでも同じ行から会話を再開できます。

生き残っているものの正体は、画面とプロセスの入れ物であって、会話そのものではありません。プリントとネガの関係と同じです。

それでも惜しいのはスクロール

とはいえ、消えるものがゼロではありません。画面に出ていた表示のうち、記録に入っていないものがあります。

AI が表示した道具の出力、git diff の結果、テストのログ。これらは画面に出ただけで、会話の記録に全部入っているわけではありません。

日数は、もう見ないと言える日数で決めることになります。一週間前のログを遡ることがあるなら、既定より長くします。

焼き直せない部分がここだけあるので、そこは自分の使い方で決めます。

対象になる条件が二つある

何でも消えるわけではありません。誰も開いておらず、出力も無いものだけが対象です。

いま画面に出しているものや、たったいま何か出力したものは対象になりません。

設定画面では、消える対象の一覧のすぐ横にこの日数があるようになっています。数字だけ見て決めずに、これが消えるを見ながら決められる作りです。

起動したままだと、一度も掃除されない

もう一つ知っておく価値のある点があります。掃除が走るのは、既定では起動したときだけです。

MulmoTerminal を起動したまま二週間使う人だと、その二週間のあいだ一度も掃除されません。

稼働中も定期的に回す設定が別にあって、こちらの既定は回さないです。毎日再起動する人は既定で足りますが、起動したままの人は稼働中の設定を入れないと掃除が走りません。

設定したのに減らないの答えが、ここです。

稼働中の掃除は、手心が加わる

稼働中に回すときは、条件が一つ増えます。いま自分が使っているものは、日数に関係なく対象外です。

これは当たり前に見えて、実は必要な配慮です。稼働中は、今日ずっと開いているが七日前に始めた会話が存在しうるので、日数だけで消すと使っているものが消えます。

起動時は誰も使っていないので、この区別が要りません。

全部手でやることもできる

自動で消えるのがどうしても不安なら、無効にできます。そのうえで、一覧の各行にある停止ボタンで一つずつ手で止められます。

このとき止まるのもプロセスとスクロールだけで、会話は残ります。

自動に任せる、日数を長くする、無効にして手でやる。どれを選んでも、失うものの中身は同じです。会話が消える選択肢は、そもそも用意されていません。

設定を変えたら、いつ効くのか

タイマーは起動時に仕掛けるので、変更は次回起動時から効きます。

親切なところがあって、それまでは保存した値と、いま動いている値が別物になります。どちらがどちらかは設定画面に両方出ます。

タイマーの設定は効いているかどうかを外から確かめる手段が無いので、ここが表示されるのは助かる部分です。

使ってみる

MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。

npx mulmoterminal@latest

ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。

動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。

確かめ方 無ければ
Node.js 22.12 以上 node -v nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す
Claude Code claude --version macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン

Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。

書く場所は ~/.mulmoterminal/config.json です。無ければ作ります。設定画面の Sessions that survived a restart からでも変えられます。

{
  "sessionIdleReapDays": 14,
  "sessionReapIntervalHours": 24
}

タイマーは起動時に仕掛けるので、効くのは次の起動からです。

設定画面のその節に、保存した値といま動いている値の両方が出ます。食い違っていれば、まだ再起動していません。

やめるときは sessionIdleReapDays を 0 にすれば、自動では消えなくなります。そのうえで、一覧の各行の停止ボタンで一つずつ止められます。どちらを選んでも、会話の記録は消えません。

まとめ

プリントは焼き直せるので捨てられて、ネガは捨てられません。捨ててよいかどうかは、もう一度作れるかどうかで決まります。

再起動をまたいで生き残っているのは、画面とプロセスの入れ物です。掃除で消えるのはそちらで、会話の記録は別のファイルに残ります。同じ行から再開できます。

焼き直せないのは、記録に入っていない画面の表示だけです。ログを遡ることがあるなら、日数を既定より長くします。

この記事をシェア

関連記事

記事一覧に戻る