Context Engineering 完全ガイド — AI エージェントの長時間運用で精度を落とさないコンテキスト設計

Context Engineering 完全ガイド — AI エージェントの長時間運用で精度を落とさないコンテキスト設計

Claude Code を午前中から走らせて、昼休みに戻ってきたら、同じエージェントが数時間前に自分で書いたコードを「初めて見ました」と言い出す — こういう体験に心当たりがあるなら、本稿は役に立ちます。

2024 年までの LLM 開発の中心は プロンプトエンジニアリング、つまり「どう書けば LLM にうまく仕事を頼めるか」の最適化でした。

2025 年 9 月、Anthropic は Effective context engineering for AI agents を公開し、新しい概念を打ち出しました。

Context Engineering — 複数ターン・長期にわたるエージェント運用で、何をコンテキストに置き、何を捨てるかを設計する反復プロセス

Claude Code や MulmoTerminal のような長時間動くエージェントでは、1 ターンの指示文最適化ではなく、セッション全体でのコンテキスト設計が勝負になります。

本稿では、Prompt Engineering との違い、長時間セッションで起きる問題(Context Rot)、そして推奨される 5 つの技法を、実例とともに整理します。

Prompt Engineering と Context Engineering の違い

Prompt Engineering (従来)

Context Engineering (新しい概念)

プロンプト設計は 1 枚のポスター制作、コンテキスト設計は美術館の順路設計 — 時間軸と空間が全く違います。

Anthropic の表現を借りると:

what configuration of context is most likely to generate our model’s desired behavior?

「どういう文脈の配置が、我々の望む挙動を引き出しやすいか」。これが Context Engineering の問いです。

Context Rot — 長文脈は性能を下げる

現象

LLM のコンテキスト窓を大きく埋めるほど、精度は下がります。これを Context Rot と呼びます。

公称 1M〜2M トークンのモデルでも、実運用レンジは 100-500K というのが 2026 年の現実です。

原因

Context Rot の実感

Claude Code や Codex を長時間使っていて、

これはモデルの劣化ではなく、Context Rot です。

Context Engineering の 5 技法

技法 1: Compaction(圧縮)

目標: メッセージ履歴を要約して、新しいコンテキストで続ける。

長いメッセージ履歴 → 要約 LLM → 要約 → 新しいセッションに引き渡し

保持すべきもの:

捨てるべきもの:

Claude Code / MulmoTerminal のセッションでは、自動 compaction が走ります。コンテキストが閾値を超えると、過去の履歴を要約して、新しい session を begin する。

技法 2: Structured Note-Taking(構造化メモ)

目標: エージェント自身に、進捗や依存関係をファイルに書き出させる。

Agent: 作業中にメモを書き出す → ファイル → 次ターンで読み直す

例: Claude Code の plans/ ディレクトリ

これは人間の「ノートを取る」のソフトウェア版 です。Think out loud を外部化する。

技法 3: Sub-agent Architectures(サブエージェント構成)

目標: 専門的なサブエージェントが仕事をして、統括エージェントに凝縮した結果だけを返す。

統括 (orchestrator)
├── sub-agent A (詳細調査、10,000 トークン使う)
├── sub-agent B (別の調査、15,000 トークン使う)
└── sub-agent C (さらに別の調査、8,000 トークン使う)
     ↓
     それぞれ 1,000-2,000 トークンに要約して orchestrator に返す

Orchestrator から見ると、入力は全部で 5,000 トークンに収まります。実際には裏で 33,000 トークンの詳細調査が走っています。

Anthropic の Research 機能(Multi-agent research system)はこの構成を採用しており、Building effective agents の Orchestrator-Workers パターンに相当します。

技法 4: Just-in-Time Retrieval(動的ロード)

目標: 全データを最初から入れずに、識別子だけ持って、必要なときに取る。

軽量な識別子 (ファイル名、ID) をコンテキストに保持
    ↓
エージェントが必要になったら、tool call でロード
    ↓
使い終わったら忘れる

例: Claude Code の glob と read

これにより、文脈窓を圧迫せず、必要な情報には到達できる状態を保ちます。

技法 5: Hybrid Strategy(ハイブリッド)

実運用では、上記の 4 技法を組み合わせます。

Claude Code の実装例

これが Anthropic 公式の推奨する “do the simplest thing that works” の実装形になります。

MulmoTerminal での Context Engineering

MulmoTerminal は長時間動くエージェントのコックピットです。Context Engineering の技法が内蔵されています。

Cockpit Roster(1 行サマリー)

Decision Digest

Session Memo

Round Table

エンジニアが今日から実践すべきこと

1. CLAUDE.md を書く

まだ書いていないなら、プロジェクトごとに CLAUDE.md を書きます。

これだけで、エージェントの精度と一貫性が目に見えて上がります。Claude Code 公式のベストプラクティス に書き方のガイドあり。

2. 長時間セッションは分割する

1 セッションで 10 時間動かすより、2 時間ごとに意図的に区切って compaction するほうが精度が上がります。

3. plans/ ディレクトリを使う

長い作業に入る前に、エージェントに plans/xxx.md を書かせます。進捗・決定・残タスクをここに追記させる形にします。

4. Sub-agent で詳細作業を外に出す

Claude Code の Task tool(または Codex の /task)を使って、詳細作業を sub-agent に委譲し、要約だけを main に返させます。

5. 動的ロードを前提にしたプロジェクト構成

エージェントが glob で探索して到達できる状態にしておきます。

まとめ

プロンプトエンジニアリングは「書き方」、Context Engineering は「設計」 です。長期的に重要なのは後者。

関連リンク


Singularity Society はテクノロジー集団として MulmoClaude / MulmoTerminal / MulmoCast を開発しています。エンジニア・起業家向けの実践プログラム BootCamp も運営しています。

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