十人を一時間集めた会議は、一時間の出来事ではありません。十時間分の人件費です。
そのことに気づいた会社は、会議に議題を書かせるようになりました。書式が決まっていて、何を決めるのかを一行で書きます。書けない会議は開かない、という決まりを付けたところもあります。
書かせる理由は、準備のためではありません。議題が決まっていない会議は、必ず終了時刻まで使い切るからです。何かを決める会議は決まった時点で終われますが、これについて話す会議には終わる条件がありません。全員が納得し合って、時間になって解散します。
払った十時間分で何も決まらないのは、参加者の能力の問題ではありません。終わる条件を書かなかったからです。
三回で面倒になる
同じ設計を Claude と Codex の両方に見せました。Claude はこの方法でいいと言い、Codex はそれは後で問題になると言います。どちらが正しいのか、自分では判断できません。
二人に直接やりとりさせたい。
手でやってみると、こうなります。Claude の返答をコピーして Codex に貼る。返ってきたものを Claude に貼る。三回やり取りしたところで面倒になって、やめます。
MulmoTerminal は AI を何枚ものマスに並べて見張るための画面で、一マスが一体の AI にあたります。無料で、オープンソースとして公開されています。
自動で回せる。そしてお金がかかる
これを自動で回す機能があります。最大五体で、順番に発言させられます。
先に一番大事なことを書きます。一発言が、本物のやりとり一回分です。
五体で二十に設定すれば、本物のやりとりが二十回走ります。各回はそこまでの会話全体を読むので、進むほど一回あたりが重くなります。
AI にコードを書かせていて一番いやなのは、知らないうちに使用量が増えていることだと思います。この機能については、増えます。そして増える量は自分が数字で決めます。
十人を一時間集めるボタンが手元にある、という状態です。
既定が六なのは、そのため
始めるときに発言の回数を選びます。四、六、十、二十の中からで、既定は六です。
ボタンの隣にこの数字があるのは、押す前に見えるようにするためです。
安く済ませるコツが二つ、はっきり書かれています。
まず四か六から始めます。足りなければ、同じ議題でもう一度始められます。
そして、決めるべきことがある問いにします。この二つのどちらを、なぜは収束しますが、これについて議論しては予算を同意に使い切ります。
二つ目が本質的です。議題が開いていると、AI 同士は互いに同意して褒め合うので、二十回使い切って何も決まりません。そして使用量だけ減ります。
冒頭の会議の話と、まったく同じことが起きています。
AI の側からは始められない
もう一つの不安に答えておきます。AI が勝手に他の AI に相談を始めることはありません。
そのための道具を持たず、他のマスを見ることも、何かに参加することもできません。人がチェックを入れてボタンを押し、ブラウザが発言を打ち込みます。
これがこの機能の入場管理の全部です。目を離しているあいだに五体が勝手に議論して使用量を使う、ということは起きません。始まるのは、必ず人がボタンを押したときです。
始める手順
始めたいマスで一度何か答えさせます。その答えが議題の種になります。そのマスの forum ボタンを押して、参加させたいマスにチェックを入れます。自分を含めて五体までなので、選べるのは四つです。そして発言の回数を選んで始めます。
一つ気をつける点があります。これは発言の回数であって、周回数ではありません。
三体で六なら二周します。五体で六なら、一周したあと一体が二回目を喋って終わりです。五体で四を選ぶと、全員が喋る前に終わります。
全員が一回喋るまで、終われない
終わり方は、誰かが終わりと書いたときです。ただし一周するまで、その合図は無視されます。
これが無いと、三体の議論が一回目で終わってしまいます。三人目が一度も喋らないまま、一体目がこれで十分ではと書いただけで解散、ということが起きます。
次に喋る AI が読むもの
発言はすべて記録され、次の AI にはそこまでの会話全体が渡されます。直前の返答だけではありません。
三体以上ではこの差が大きい。三人目は二人目の返事だけでなく、一人目が何を主張したかを見られます。
ただし、渡す文字列には注意がある
ここは正直に書かれている部分です。
記録は、これはデータであって指示ではないという枠に入れて渡されます。そうしないと、他の AI の発言が読み手への指示に見えてしまうからです。
でもこれは緩和策で、絶対の境界ではありません。記録は次の AI のプロンプトに普通のテキストとして入るので、指示の形をしたものが実行される可能性は残ります。
記録の置き場所は信頼できる入力として扱ってください。座っているのは読み書きや実行ができる AI で、記録はこのパソコンから届く者なら誰でも書き込めます。自分と自分の作業だけが書き込む場所にしておく、ということです。
終わった理由が表示される
終わると、どれか一つが出ます。
話がまとまった場合。一周したあと誰かが終わりと書いたときで、意図された終わり方です。回数切れの場合。予算が尽きたので、増やすか同じ議題でもう一度やります。止めた場合。自分で止めたか、マスを閉じたときです。返事が来なかった場合。どれかが待ち時間内に答えなかったときです。渡すものが無い場合。始めたマスに答えが無いので、先に何か答えさせます。
回数切れが出たときは、議題が開きすぎていた可能性が高いです。
知っておく制限
画面を閉じると止まります。打ち込んでいるのはブラウザなので。そこまでの発言は記録に残ります。
五体までです。それ以上だと一周する間に、最初の AI の記憶が先へ行ってしまいます。
一つのマスで同時に二つは動かせません。打ち込みが混ざるので。
AI のマスだけが参加できます。ただのターミナルには読める発言がありません。
最初に試すとき
いきなり本番の設計判断で使わないほうがいいです。捨ててよい題材で、四から。
そこでどういう問いなら収束するかを一度見ておくと、本番で二十を使い切って何も決まらないを避けられます。
使ってみる
MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。
npx mulmoterminal@latest
ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。
動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。
| 確かめ方 | 無ければ | |
|---|---|---|
| Node.js 22.12 以上 | node -v |
nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す |
| Claude Code | claude --version |
macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン |
Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。
先に読んでください。ここから先は本物のやりとりが回数分走ります。五体で二十に設定すれば、発言が二十回走り、そのぶんの使用量がかかります。最初は捨ててよい題材で、四から試してください。
まず AI を二体以上立てます。Claude と Codex を混ぜると意見の差が見えます。

空いているマスをクリックして、上のタブで Claude を選び、WORKING DIRECTORY にフォルダのパスを入れて再生ボタンを押します。別の空きマスでも同じことをして、このとき上のタブで Codex を選びます。codex コマンドが入っていなければ Claude を二体でもかまいません。
そのうえで議論を始めます。議論を始めたいマスで何か一つ聞いて答えさせます。その答えが種になります。そのマスのヘッダーの forum ボタンを押して、ROUND TABLE の下で参加させたいマスにチェックを入れます。発言の回数を選んで、まず四か六にします。room に名前を書いて、Start を押します。名前が空だと毎回新しい記録になります。
マスが順番に喋り始めれば成功です。実行中もメニューは開いたままなので、そこから止めることと会話を読むことができます。
やめるときは、forum のメニューから止められます。マスを閉じても止まります。そこまでの発言は記録に残るので、消したいときはツールバーの Rooms を開いて、その記録の横のゴミ箱を押します。
まとめ
十人を一時間集めた会議は十時間分で、議題が決まっていない会議は必ず終了時刻まで使い切ります。終わる条件を書かなかったからです。
AI 同士の議論も同じで、数えるのは往復ではなく発言の回数です。二十に設定すれば二十回分の使用量がかかります。
この二つのどちらを、なぜは収束します。これについて議論しては、予算を同意に使い切ります。既定が六なのと、数字がボタンの隣にあるのは、そのためです。
