台所の引き出しは、考えずに開けられます。菜箸はここ、計量スプーンはその隣、輪ゴムは奥の右。中を見る前に手が伸びています。
誰かが親切に片付け直すと、三日ほど手が迷います。整理としては前より正しくなっているのに、開ける速さは落ちます。手が覚えていた位置と、目で読む位置が食い違うからです。
工具箱の上段、車のウインカーの位置、消火器の設置場所。どれも配置が正しいかどうかより、変わらないことに価値が置かれています。
使う頻度が高いものほど、置き場所を動かしたときの損が大きくなります。
朝の一分
ターミナルで動く AI を、毎朝五体立ち上げます。MulmoTerminal はそのための画面で、一マスが一体の AI にあたります。無料で、オープンソースとして公開されています。
毎日同じ五つのプロジェクトで、順番も決まっています。何も起動していないマスには、よく使うフォルダのボタンが並んでいて、そこを押せば起動します。
その位置が毎日違います。昨日三番目にあったものが、今日は一番目にいます。
だから毎回、ボタンの文字を読んでから押します。五回それをやると、朝の起動に一分かかります。
最後に開いた順で並んでいる
原因は単純で、ボタンは最後に開いた順で並びます。
昨日の作業の順番が今日の並びになって、今日の作業の順番が明日の並びになります。手が位置を覚えられません。
毎晩誰かが引き出しを片付け直しているのと同じ状態です。
順番を宣言すると固定される
プロジェクトの設定に一行書きます。
{ "orderPriority": 10 }
小さい順です。負の数も使えるので、0 の全部より前に出すこともできます。
全部に書かなくていい
ここが一番実用的な部分です。
未設定のフォルダは末尾にまとまって、既存の順序を保ちます。一つのプロジェクトに書き足しても、他が動きません。
毎日開く五つだけに書けば足ります。その五つが上に固定されて、残りは今までの順のまま後ろに続きます。
もし未設定を 0 扱いにしていたら、一つ書いた瞬間に他の全部と順位を争うことになります。一つ書いただけで全部の並びが変わったという事故が起きます。そうなっていないので、気楽に一つから始められます。
二か所で効くが、条件が違う
この設定は二か所で効きます。そして条件が違います。
格子の並び順に効くのは、並び順が宣言した順のモードのときだけです。フォルダのボタンには、常にこの順で効きます。
格子の並び順には三つのモードがあって、呼んでいるものが上に浮く、自分で並べる、宣言した順の三つです。最初の二つにしている限り、格子の表示は変わりません。
なぜボタンだけ無条件なのか
これは考えると納得できます。
格子の並び順は、いまどのマスを見たいかの話です。状況で変わるので、モードで切り替えられるべきものです。
ボタンの並び順は、どこを押すかの話です。こちらは変わらないほうがいい。手が覚えるべきものだからです。
引き出しの中身は模様替えしてもよくて、引き出しそのものの位置は動かさない、という区別に近いと思います。
数字は間を空けて付ける
実際の付け方です。連番にしないほうがいいです。
10 毎日開くメインのプロジェクト
20 その API 側
30 ドキュメント
...
100 ときどき開くもの
間を空けておくと、あとでこの二つの間に入れたいが書き足せます。11 と書けば済みます。連番だと全部書き直しになります。
負の数が使えるのも同じ目的です。書き終わったあとで、その全部より前に出したいものが現れるからです。
同じ順位なら、現在の順を保つ
同じ数字を持つものは、いまの順を維持します。
一つ知っておく点があって、順位はフォルダの属性であってマスの属性ではありません。同じプロジェクトで三体開いていても、三つは隣に並びます。
作業フォルダは、もとの順位の一つ後ろ
作業用に切ったフォルダの順位は、もとの順位の一つ後ろになります。末尾に落ちるのではなく、切り出し元のすぐ隣に並びます。
これは枠の色相を少しずらすのと同じ発想で、同じプロジェクトの仲間だと分かり、かつ本体ではないと分かる状態を作っています。
プロジェクトが順位を宣言しているときだけで、未設定なら作業フォルダも未設定のままです。
使ってみる
MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。
npx mulmoterminal@latest
ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。
動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。
| 確かめ方 | 無ければ | |
|---|---|---|
| Node.js 22.12 以上 | node -v |
nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す |
| Claude Code | claude --version |
macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン |
Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。
書く場所は、そのプロジェクトのフォルダの一番上に置く .mulmoterminal.json です。無ければ作ります。パソコン全体の設定である ~/.mulmoterminal/config.json ではありません。
{
"orderPriority": 10
}
AI にファイルを書かせたときは即座に効きます。エディタで手で書いたときは、タブを再読み込みします。
格子の並びも揃えるなら、一つ操作します。ツールバーの並び順ボタンを押して、宣言した順のモードにします。押すたびに、呼んでいるものが上に浮く、自分で並べる、宣言した順の順で切り替わります。
フォルダのボタンのほうは、モードに関わらず常にこの順です。
空いているマスに出るフォルダのボタンで、そのプロジェクトが先頭に来れば成功です。
やめるときは、.mulmoterminal.json からその項目を消せば戻ります。ファイルごと消してもかまいません。
まとめ
手が覚えた置き場所は、配置が正しいかどうかより、変わらないことに価値があります。引き出しを片付け直されると、整理としては良くなっても開ける速さは落ちます。
よく使うフォルダのボタンは、最後に開いた順で並びます。毎晩並びが変わるので、毎朝読んでから押すことになります。
順位を宣言すると固定されます。未設定のものは末尾にまとまるので、毎日開く数個にだけ書けば足ります。数字は間を空けて付けておくと、あとから割り込ませられます。
