配電盤の中の電線には色が付いています。地下鉄の路線図にも色が付いていて、駅の案内板では線の名前より先に色が目に入ります。小さな抵抗器には、細い帯が三本か四本、色で巻かれています。
どれも文字で書けるものです。電線に「接地」と印刷してもいいし、路線名を並べてもいい。それでも色を選んだのは、文字は読まないと分からず、しかも急いでいるときには読まないからです。
同じ形のものを間違えずに扱う手段として、人は文字より色を先に選んできました。色は読む前に届きます。
九回読むのは無理がある
ターミナルで動く AI を何体も並べて動かすと、同じ形のマスが九枚並びます。MulmoTerminal はそのための画面で、一マスが一体の AI にあたります。無料で、オープンソースとして公開されています。
三つがクライアントのプロジェクト、三つが自社サービス、三つが個人のもの。そのうちの一枚に指示を出しました。この関数を全部削除して、書き直して。
打った先が、違うマスでした。
acme-web と acme-api は、フォルダ名の最初の四文字が同じです。二段目に小さく出ているパスを読んだのですが、読み間違えました。
マスにフォルダの名前は出ています。ただ九枚並んでいると、それを九回読むことになります。急いでいるときは読まずに位置で覚えますが、位置は並び順の設定で変わるので、そこで間違えます。
配電盤の電線に名前を印刷したのと同じ状態です。
色を一つ付けるだけで消える
プロジェクトのフォルダに設定ファイルを一枚置くと、そのフォルダで開いたマスだけ見た目が変わります。
{
"name": "acme-web",
"headerColor": "#0b2545"
}
二行で足ります。name が名札になって、headerColor がヘッダーの帯の色になります。
帯が色づけば、それだけで九枚が見分けられます。読まずに分かるので、急いでいるときも間違えません。
色は七つまで指定できる
全部指定するとこうなります。
{
"name": "acme-web",
"badgeColor": "#2563eb",
"headerColor": "#0b2545",
"headerTextColor": "#e6f0ff",
"cellColor": "#0e1117",
"cellBorderColor": "#1f6f4f",
"dotColor": "#22c55e",
"buttonColor": "#a7f3d0"
}
最初から全部書く必要はありません。文字の色を省くと、背景から読みやすい色が自動で決まります。背景だけ決めれば、文字が読めなくなることはありません。
書くのが不安なら、AI に頼んでもかまいません。そのためのスキルが同梱されています。
動いている間だけ、設定した色に戻らない
最初に必ず戸惑うところです。
色を設定して AI を動かすと、設定した色ではなく別の色になります。終わると設定した色に戻ります。
これは不具合ではありません。状態の色が、自分で決めた色より優先されます。考えている、答えを待っている、終わった、という状態はヘッダーの背景色に出るので、そのあいだは状態の色になります。
理由は、色の上に載る文字のほうにあります。紺色の上で読める薄い水色の文字は、琥珀色の上ではほぼ見えません。自分のヘッダー色に合わせて選んだ文字色は、混ざった状態色の上では読めなくなります。
根本的には、色分けより状態のほうが大事です。色分けはどのプロジェクトかを教えます。状態はいま答えるべきかを教えます。後者のほうが急ぎます。
それでも自分の色で通したいなら
状態のときにも自分の配色を使いたい場合は、状態を名指しできます。
{
"headerColor": "#0b2545",
"headerStatusColors": {
"working": "#6d28d9",
"done": { "background": "#166534" },
"blocked": { "background": "#7c2d12", "text": "#ffe8a3" }
}
}
指定できるのは作業中、完了、要対応の三つです。何もしていない状態はありません。headerColor がそれそのものなので。
文字の色を省けば、背景から読める色が自動で決まります。ここでも、背景だけ指定して読めなくなることはありません。
一つだけ、消せない色がある
状態の色を丸ごと切ることもできます。そうすると作業中と完了のあいだも自分の色が残って、状態は枠線と点と小さな表示が伝えます。
ただし一つ例外があって、要対応には意図的に効きません。答えるまで何も進まない唯一の状態なので、別の色を明示しない限り琥珀色を保ちます。
色を統一したいより、止まっていることに気づくを優先しています。琥珀色を消せてしまうと、九枚のうち一枚が止まっていることに気づけなくなって、盤の意味が変わってしまいます。
使うモデルも、同じファイルで決まる
色と並んで、そのフォルダで既定で使うモデルも書けます。
{
"provider": "openrouter",
"model": "moonshotai/kimi-k2.7-code"
}
色とモデルが同じファイルにあるのは偶然ではないと思います。このプロジェクトは安いモデルで回すと決めたら、マスの色もそれが分かる色にしておきたいからです。
うっかり高いモデルで大量に回していた、を防ぐには色で分かるのが一番早い。抵抗器の帯と同じ使い方です。
全部のプロジェクトに既定を置ける
七つの色は、パソコン全体の設定にも書けます。そこでは全部のフォルダの既定になります。
プロジェクト側に書いてあれば、そちらが勝ちます。基本はこの配色で、大事なプロジェクトだけ別の色、という形にできます。
使ってみる
MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。
npx mulmoterminal@latest
ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はなく、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。
動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。
| 確かめ方 | 無ければ | |
|---|---|---|
| Node.js 22.12 以上 | node -v |
nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す |
| Claude Code | claude --version |
macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン |
Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。
書く場所は、そのプロジェクトのフォルダの一番上に置く .mulmoterminal.json です。無ければ作ります。パソコン全体の設定である ~/.mulmoterminal/config.json ではありません。
{
"name": "acme-web",
"headerColor": "#0b2545"
}
AI にファイルを書かせたときは即座に効きます。エディタで手で書いたときは、タブを再読み込みします。ファイルを見張ってはいません。
そのフォルダで開いたマスのヘッダーが紺色になって、名札に acme-web と出れば成功です。動いている間は状態の色が優先されるので、何もしていないときに見てください。
やめるときは、.mulmoterminal.json からその項目を消せば戻ります。ファイルごと消してもかまいません。
まとめ
電線も路線図も抵抗器も、文字で書ける情報にわざわざ色を付けています。文字は読まないと分からず、急いでいるときには読まないからです。
同じ形のマスが九枚並ぶと、同じことが起きます。フォルダ名は出ていても、九回読むことになるので読まなくなります。クライアントの三つを赤系、自社の三つを青系、個人の三つを緑系にすれば、打つ前に系統で分かります。
状態の色が自分の色より上に来るのは、色の上に載る文字が読めなくなるからで、そして止まっていることに気づくほうが急ぐからです。
