Invent or Die 2 中島聡 × 井上智洋


2018年10月19日(金)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第二回 中島聡 x 井上智洋」の書き起こしです。


「実は AI 含む IT によって仕事を失った人がですね、どうも低所得層の方に移っちゃうっていうところで、全体的な所得の伸びと相殺されちゃってるっていうことなんですね。」

井上 :私はですね、駒澤大学の経済学部の教員ということなので、経済学者ということになります。なんですけども、大学の時にですね 、Computer Science の勉強をして、ゼミが人工知能に関するゼミだったのでその時にAIに関する知識を身に付けました。それから IT 企業に就職したんですけども、ちょっとエンジニアに向いてないなと思って3年弱くらいで辞めてしまいまして、中島さんとは逆で、あんまりエンジニア気質ではないということになります。

大学院から経済学を始めてですね、今の専門はマクロ経済学という事になります。デフレ不況からどうやったら脱却できるか、日本の経済成長率を高めるにはどうしたらいいのか、そんな事を研究する学問になんですけど、そっちが本業なんですが最近は副業でですね、経済学者の立場から人工知能について論じるという事をやっております。最近は、副業の方が忙しくなっていますが。2年前にですね、「人工知能と経済の未来」という本が出版しまして、下側が帯になってまして泰蔵さんの名前が私の名前より大きく書かれているんですね。本屋さんに行った方が、これを泰蔵さんの本だと勘違いして買ってくれる人が一杯居たらいいなと思いますね。

それで早速なんですが、最近ですね、人工知能が人々の仕事を奪うとか、奪わないといった事がいろいろ議論されているんですが、世界的に火付け役になった論文が、フライとオズボーンというオックスフォード大学の先生の「雇用の未来」という論文で、そこから日本人に馴染みのある職業で消える確率の高いものを並べてますけども、私正直いって10年、20年後これらの職業が無くなるとは思っていないんですね。そう言うとですね、「職業消滅しないんだ、良かった」と思う人がいるかも知れませんけども、世の中の行われている議論でちょっとおかしいところは、職業が無くなるのかどうかっていう議論してるんですね。無くなるのかどうかっていうのは余り論点ではなくて、『各職業において雇用がどれだけ減るか』っていうことなんですね。例えば7割も雇用が減っちゃったら、かなりその分野で生き延びるのは難しくなっていく訳です。どんな職業でも、いわば機械との競争に打ち勝って、ホスピタリティが高い、クリエイティビティが高いという事で生き残る人は出てくるかと思うんですが、そうでないとですね仕事がなくなっちゃうという可能性も私はあると思っています。仕事が失った人が、技術的失業というんですけども、失業した人が他の職業に転職するんですね。そういう事を経済学者は労働移動と言うんですが、転職できれば OK かと言うと、どうもアメリカの様子を見てるとそうでもないという話をしたいんですけども、アメリカで起きてることです。

低所得者は主に肉体労働に従事し、中間所得層は事務労働で、高所得者は頭の労働に従事という風に、今かなり単純化して考えますけども、今アメリカではこの事務労働の所の雇用がですね、かなり減っているという状況です。具体的にはコールセンターのスタッフ、経理係、それから旅行代理店のスタッフ、こんな感じのお仕事が減ってきています。それで仕事を失った人がですね、頭脳労働の方に行ければいいんですけども、そうじゃなく、その多くの人はですね、肉体労働の方に入ってしまって、具体的には介護のスタッフ、それから清掃員といったお仕事で、こういったお仕事は日本と同様に、労働需要が高いということで、そんな仕事に就く人が多いですけども、別に転職できればいいじゃないかと思うかもわからないんですが、その中間所得層にいる人が低所得層移ってしまうので、低賃金化しちゃうわけですね。

アメリカではですね、この緑の線を見て頂きたいんですけども、所得の中央値と言ってですね、99に人がいたら50番目の所得の人の所得ということで、その真ん中あたりの所得の人が今世紀入ってから全然ですね、所得伸びてないんですね。そういう状況があるのは、実は AI 含む IT によって仕事を失った人がですね、どうも低所得層の方に移っちゃうっていうところで、全体的な所得の伸びと相殺されちゃってるっていうことなんですね。だからと言って、私はここで AI とかITとか導入すべきじゃないと言ってる訳ではなくて、なるべく人々がこっちのですね、頭脳労働なり高所得の方のお仕事に就けるようなですね、教育を変えるとかですね仕組みを変えるって事も必要だと思ってます。

ただ、とは言え、みんながみんなその頭脳労働に向いてるとは限らないので、肉体労働の方に方にいっちゃって、低所得になっちゃっても、豊かさを享受できるような、そんな社会にしないといけないという風に思っています。究極的にはですね、あの所得分布が、かなりですね、歪というかですね、普通の職業の所得分布って、低所得層がちょっといて、中間所得層がボリュームが厚くて、高所得層が、金持ちいくらでもいるんですけども、まあ全体的には数は少ないという、大体こういう分布になっているんですね。それで、今でもあのクリエイティブ系のですね、職業では低所得層がめちゃくちゃ多いんですね。中間所得層が低所得層より少ないんですね。で、高所得層はさらに少ないんですけども。低所得層が一番のボリュームゾーンっていうのが、実はクリエイティブ系の職業ですね。だからあのミュージシャンの人とかですね、芸人さんとか思い浮かべていただければいいかと思うんですけども。芸人さんのほとんどっていうのは、年収10万円以下なんですよね。で、下手すると、年収マイナスって人もいます。なんでかって言うとですね、交通費とかが支給されないでですね、自腹で払ってるんですね。舞台に上がれば上がるほど、むしろお金が減っていくという人もいます。こっちを釣り鐘型と呼んで、こっちをロングテール型と呼んでるんですけども、中間所得層がポコって無くなっちゃってるわけですね。

だから、さっきの、このアメリカのですね、この中間所得層の没落っていうものが続くとですね、究極的にはこんなんなっちゃう、という話なんですね。こういう風にですね、 AI を含む IT のですね、発達っていうのは今後も避けられないと思っているんですけども、雇用が不安定になるとかですね、格差が広がるという問題も出てくる可能性はかなり高いと思っています。やっぱり、もっとみんな豊かになるような社会にするために、少なくともですね、最低限の所得は保証されないといけないだろうということで、最近はベーシックインカムについてですね、私も導入すべきだということを導入すべきだと主張しています。詳しくは、こちらの本に書いてあるんですね。興味持たれた方は、読んでいただければと思います。この後で、中島さんとの対談でベーシックインカムの話はかなりやるかと思います。

「第4次はこのまま行くとですね、アメリカかなって、私は2年ぐらい前に思ってたんですけども、最近予想を変えました。中国じゃないかという風に思ってます。ひょっとすると、アメリカ中国入れて、アメリカ、中国、インドの三つのですね、大国が横並びという形になり、かつ中国が頭ひとつ抜けかなというふうに考えていますね。」

「未来ではインドと中国がアジアで最初にテイクオフして、日本は後からノロノロついていく、テイクオフする、あるいはなかなかテイクオフできないという状況になってしまうかもしれない。それぐらい、今ですね、日本がですね、 AI を含めて科学技術力が衰えているし、起業家マインドっていうのもですね、中国やアメリカに比べてですね、かなり衰えているという風に思っています。」

井上智洋氏: それからですね、もうちょっとポジティブな話をしますと、人工知能はですね、第4次産業革命ってですね、産業に革命的な変化をもたらすだろうということなんですが、第1次から第4次まで並んでいますけども、その、それぞれの産業革命で、鍵となる技術というのがあります。それを汎用目的技術と言いまして、ひとつの技術が、いろいろな分野で使えますということなんですが、それが第1次では蒸気機関、第2次では内燃機関、電気モーター。内燃機関というのはガソリンエンジンですね。第三次はコンピュータとインターネット。第4次は AI とビッグデータ 、IoT ということなんですが、ここで注目していただきたいのは、それぞれのですね、産業革命でこの汎用目的技術をいち早く導入した国が、「ヘゲモニー」覇権を握ってきたということですね。最初の産業革命ではイギリス、次がアメリカ。ヨーロッパではドイツ。第三次は引き続きアメリカ。 第4次はこのまま行くとですね、アメリカかなって、私は2年ぐらい前に思ってたんですけども、最近予想を変えました。中国じゃないかという風に思ってます。ひょっとすると、アメリカ中国入れて、アメリカ、中国、インドの三つのですね、大国が横並びという形になり、かつ中国が頭ひとつ抜けかなというふうに考えていますね。

第4次産業化革命がですね、もう第二産業革命以来の、かなり大きな変化になると見ているんですが、なんでかと言いますと、経済の構造をですね、抜本的に変えてしまうからということですね。今のですね、経済、資本主義をですね、私は機械化経済と呼んでいるんですが、それはですね、機械と労働と、この二つ input あって、生産活動を行われて、それでアウトプットである、なんかあの工業製品とかが作られるという、こういう経済なんですね。この経済を、数理モデル作って分析してみると、実際にそうなんですが、経済成長率2%ぐらいで、だいたい落ち着いてついてしまうということですね。発展途上国とか、キャッチアップの過程にある国はですね、中国とかインドみたいに6%を超えるの成長率が実現するし、日本でも高度経済成長期って10パーセントを超える成長率が持続していたんですけども、だんだんだんだん経済成熟してくると、2%かそこらの成長率しか得られないということですね。これがですね、第4次産業革命になって、このかなり AI ロボットを含む機械ですね、オートマチックに物が作れるというですね、そんな経済。これを純粋機械化経済と私を呼んでいるんですが、第4次産業革命後にですね、徐々にこんな経済へと転換していくということですね。まぁ、一応、人間の役割は残ってるんですけども、その人間の役回りは結構変わってくるってことですね。この新しい技術を研究開発するとか、生産数を全体をマネジメントするっていうのが人間の仕事であって、直接物を作るのですね、かなり機械に任せられるようになるんじゃないかということですね。こういう経済に関する数理モデルを作って、結果だけを示しますと、経済成長率がもんどんどん上昇して行っちゃうという、そういう経済ですね。だからもう今年2%の成長率だった、来年は3パーセント。再来年は5%。次の年には8%とか、どんどん成長率、高くなっちゃうと。高度経済成長期どころのお話ではない、ということですね。

もし、こういうことが本当に可能であれば、第4次産業革命後に上昇路線に乗った国と、何かその技術的失業、 AI 失業とか怖いんですね、あんまりAIとかロボットとか導入しないようにしましょう、っていう国はですね、こっちのあの青い線の停滞線路線の方に行ってしまうと。こうやって色んな国が分岐してしまう可能性ってあると思っています。もちろん停滞してるんだけど、後から上昇路線に乗る国っていうのもあろうかと思います。これを私はですね、第二の大分岐という風に呼んでいます。最初の大分岐というのは、経済史の用語でありまして、縦軸が一人当たり所得で、さっきと縦軸は違うんですけど、さっきは経済成長率ですね、これが未来に起きることで、過去に起きた大分岐というのは、こちらになっていてですね、一人当たりの所得がですね、産業革命を機にイギリスはじめとする欧米諸国が上昇路線行きました。日本を除くアジア、アフリカ諸国が停滞路線に行きました。

それでは日本はですね、送らばせながら、こっちの上昇路線に行くことができたという、そういう歴史があります。中国、インドはこの時は停滞路線に行ってしまいましたが、未来の大分岐では逆のことが起きちゃうんじゃないかっていう、私は心配があります。ようするに日本は過去の大分岐では、いち早く上昇路線方に行ったのですね。うち私は上昇路線に行くことをテイクオフと呼んでいますけども、日本がアジアで最初にテイクオフした。それが今度はですね、未来ではインドと中国がアジアで最初にテイクオフして、日本は後からノロノロついていく、テイクオフする、あるいはなかなかテイクオフできないという状況になってしまうかもしれない。 それぐらい、今ですね、日本がですね、 AI を含めて科学技術力が衰えているし、起業家マインドっていうのもですね、中国やアメリカに比べてですね、かなり衰えているという風に思っています。 こういう状況ですね、変えたいというのがですね、一つシンギュラリティ・ソサエティさんので目的でもあろうかと思うんですが、そんなふうに私が思っています。そういうわけで、ちょっとすいません長くなりましたが、私からは以上になります。

司会 :はい、ありがとうございます。

ここからは井上先生と中島さんの対談の方に移らさせて頂きます。

「これはもう子供達にも全部滲みついていると思ってます。それは何かと言いますと、人生を何か守りに入っちゃうんですよね。例えば中学生のなりたい職業ランキングって見るとですね、第3位ぐらいに公務員ってのが入ってたりしてですね。素晴らしい公務員のが一杯いますけども、生活の安定のためだけに公務員になるって言う人が増えるような社会ってやっぱり活力ないですよね。ただ、今はそういうことに不況が10年20年続いてですね、どんどんみんなが守りに入っちゃってベンチャースピリッツみたいなものは無くなってしまっているということはあります。」

「日本の会社はもっと変人を囲え、ということを申し上げておりますですね、スティーブジョブスさんみたいなですね、言ってみればものすごい変人な人をですね、最初ATARIでしたよね、ゲーム会社に努めていたんですけど、あまりのも変人すぎてですね、昼間、他の人と働かせておくのは厳しいっていうことで、夜の勤務にさせたりしてですね、そうまでしてでも、変人でですね、全然お風呂も入らなし、野菜しか食べないような、ジョブスって人を一生懸命囲って、その果てにですね、 Apple 社がある」

中島聡(以下 中島) : ありがとうございました。中島です。あのさっき初めてお会いしてお話をした時に、私だいたい日本に来る時にアマゾンで面白そうな本を7,8冊適当に買って飛行機の中で読んだりするんですけど。この前来た時に7冊買ったら、偶々偶然井上さんの本が2冊入っていて。今ちょうどでてきた経済学の話とベーシックインカムの話なんですけど。そしたら今回対談ができるとのことでとても喜ばしく思っています。

で、私色々と質問があるんですけど。まず最初に大分岐の話は私にはすごくすーっと落ちて。先生の本を読んでいる時に大分岐の話が出てきて。最初にこの第一次の大分岐の話が出てきた時に、じゃあ第二の話が出るのかなと思ったら、ちょっと私の予想と違ったんですよ。というのは私はこのSocietyを始めた時にも言ったんですけど、やっぱり日本はそのバブルが崩壊した後の失われた10年20年30年目に入ってますけど一人当たりの GNP が伸びてないんですよ。で、それに対してアメリカは激しく伸びてると。この前日経か何かに出てましたけど、バブル崩壊前の89年度の世界の株価総額トップテンの中の7社が日本だったにもかかわらず、今見ると一社も入ってないと。だから、大分岐の時程の差でもないけど実はその第三次産業革命でも分岐が起こっていますよと。

という話に先生が持っていくのかと思ったらその話はしていないので、まぁいいのかなと思ったけど私は、ちょっとそこは。

井上智洋(以下 井上) : そういう意味でいますと、成長率は2%ぐらいに落ち着くという話をしましたが、アメリカがちょうどこの20年間実質成長率2%ぐらいなんですね。で、日本が0.9パーセントぐらいなんですね。で、2%と0.9%ってそんなに差がないんじゃないかって皆さん思うかもしれないんですけども。でもこれが複利的に増えていくわけですから、10年20年経つとかなりの差になってくるというのは確かで。1992年ぐらいですか、日本はアメリカに対して一人当たり所得で僅かながら一回抜いたんですよね。ただ、その後デフレ不況が長く続いたせいで、今一人当たり GDP かなり差をつけられている。片や0.9パーセント片や2%ってことで、かなりの差になっちゃってるということですね。それを指して大って程じゃないですけど、分岐していると言えば分岐しますね。

中島 :まぁ、その分岐してる理由の話が結構重要で。私はその理由が大きく分けて二つあり。一つはまず日本の経営層がやっぱり技術の事が分かっていないんですよ。なんで分かってない人がいつまでも経営層にいるかっていうことすら問題なんだけど、アメリカもやっぱり駄目になった企業はいっぱいあるんですよ。その GM にしろ、最近GEも駄目になってきたけど、IBM にしろ。やっぱり、その経営層がちゃんとテクノロジーをうまく利用して引っ張っていけない企業はダメになっているという意味で言うと日本と同じなんだけど、アメリカの場合はやっぱり企業の新陳代謝も激しいし、人も激しく動くので、そのマイクロソフトだったり、Facebook だったり、Google だったりっていうすごい企業が一気に伸びるので、その駄目になった企業はあるけど全体的に見ると伸びるって事が起こっていると。

でも日本の場合は、やっぱりっぱりそこにもう一つ雇用規制の話もあるけど人が切れない。でっ、その人が切れないってことは結局一人当たりの生産性を上げられないんですよ、企業は。だって、生産性が上がるってのは何が上がるかってなると一人当たりの仕事ができるようになるから上がるんだけど。でも必ずしも売上も上がらないとなると人を切るしかないんだけど、日本の場合は人を切れないから結局生産性が上がらないっていう不思議なことが起こっていると。

で、それプラスその中で日本の場合大企業はなぜだか潰れないんですよね。僕はその政府が結構公共投資で救っているから潰れないだろうと思ってるんだけど。それもあって企業の新陳代謝が起こらないからいつまでもITのことをわかってない経営者が上にいる企業がいて、優秀な人材を抱えているから、こんなことになったんだ。っていうのが、今の話ですけど、私はすごくを思っていて。その辺はどう思われます。

井上 :そうですね。あのー元々雇用の流動性が日本では確かに少ないって言うのも、もちろん一つ要因としてあるんですけども、そのデフレ不況が長く続くとデフレマインドが身に付いっちゃうんですね。 これはもう子供達にも全部滲みついていると思ってます。それは何かと言いますと、人生を何か守りに入っちゃうんですよね。例えば中学生のなりたい職業ランキングって見るとですね、第3位ぐらいに公務員ってのが入ってたりしてですね。素晴らしい公務員のが一杯いますけども、生活の安定のためだけに公務員になるって言う人が増えるような社会ってやっぱり活力ないですよね。ただ、今はそういうことに不況が10年20年続いてですね、どんどんみんなが守りに入っちゃってベンチャースピリッツみたいなものは無くなってしまっているということはあります。 ただ、ごくごく最近になってちょっと変わってきたと思ってまして、何かというとうちのゼミ生とかでも三年くらい会社に勤めてから起業したいという学生が出始めていてですね。私は自分のゼミ生からそんなことを言う学生が出てくるとは思わなかったんですね。私なんかもまぁお酒が好きでですね、飲んだくれなんですけども、正直ゼミ生もみんな飲んだくれの集団かなと思ってたんですよ、申し訳ないことに。そしたらもうかなり知的好奇心もあって、今日も4人来ていますけども、かなり積極的に新しい技術とか知識とかを吸収して何かしてやろうという、そういう子たちが最近になってちょっと増えてきたという風に思っていますが、まぁかなりこの20年間、日本は活力を失っているのは確かですね。

中島 :まぁその~せっかくだから同じこと言ってしょうがないから、あえて反対するとその第4次産業革命が2030年でしたっけ?ぐらいに起こって大分岐って仰ってますけど、実は三次と四次は僕は連続してるんじゃないかと・・・

井上 :すいません。やっぱりあんまり意見違わないんですけども、あの実は特に最近なんですけども、私はその第一次産業革命と第二次産業革命をセットにして工業革命と呼んでですね、第三次と第四次をセットにして情報革命と呼んでしまっていいかなと思って。まぁどっちも二段階ロケットみたいになってると言うことなんですね。まぁ最初の情報革命の最初の段階で日本はいきなり躓いて転んでしまったという風に思います。それで一回転んだ時にまた立ち上がって追い抜けるかって言った時に、アメリカでも中国でもそうなんですけども、プラットフォーム企業がいっぱい AI に対して投資してるので、第三次で勝てないと第四次でも結構難しいと、私は不可能じゃないと思っているんですが、かなり難しいっていうのが今の情勢だと思うんですが、難しくは無いんですかね?

中島 :余り難しいって言っちゃうと悲観的になるからからあれですけど、その「分岐がすでに始まっているんだよ」と、やっぱり危機感を持たなきゃいけないと思うんですよ。まぁその突然2030年の分岐が起こるんじゃなくて、今既にに起こり始めていて、その差がドンドン開いていくという真っ只中にいる人たちが「今何をすべきか?」って言うのを、このソサエティはちゃんと考えるべきだろうと。私もその10年前ぐらいまでは何だかんだ言って大きな企業人の偉い人と会って「ちゃんとインターネットの時代に備えなきゃいけませんよ」みたいなことを言ってきたんですけど、結局通じないので、言い方悪いけども彼らを見捨てようと最近思ってるんですよ。でも、しょうがないですよ。そもそも転職したことも無いし、スマホも使えないとか言ってるわけだから、もういいですよ。彼らは。それよりもやっぱり、その一つ下、二つ下の・・・その一回り二回り下の人達が段々気が付き始めているわけですね。そろそろ危ないんだと・・・。ていう人達をサポートしてその人たちが活躍できる舞台を作る若しくは私みたいね私も就職してすぐは NTT に入ったわけですよ。でその瞬間は保守的だったわけですよね、やっぱり早稲田の大学院まで出たんだからアスキー出版みたいな訳のわからベンチャー企業に行かずに、そこいつでも入れるから。でも大学出てすぐにしか入れない NTT 入ろうっていう保守的な思いで入ったんですよね。でも私はあの時にもう僅か1年で辞めちゃいましたけど、それはマイクロソフトって企業がすごい魅力的に見えたからだけど。でも、私はその運がよかったって言えば運が良かったけど、そういうちょっと変わった人間だったんですけど、やっぱもう少しそういう変わった人間を増やさなきゃいけないなと・・・

井上 :はい。 それは本当にそう思いましてですね、あの時々、会社でですね、お話させて頂く機会があるんですけど、もうその時にもですね、 日本の会社はもっと変人を囲え、ということを申し上げておりますですね、スティーブジョブスさんみたいなですね、言ってみればものすごい変人な人をですね、最初ATARIでしたよね、ゲーム会社に努めていたんですけど、あまりのも変人すぎてですね、昼間、他の人と働かせておくのは厳しいっていうことで、夜の勤務にさせたりしてですね、そうまでしてでも、変人でですね、全然お風呂も入らなし、野菜しか食べないような、ジョブスって人を一生懸命囲って、その果てにですね、 Apple 社がある ということなんですが、まあ日本の会社もですね、そこでじゃないにしても、やっぱちょっと変わった人間とかですね、あの変な経歴の人ですね、受け入れるような、寛容さというか、多様性をですね、許容するような体質がないと、なかなか日本の企業も伸びていかないかな、という風に思っています。

中島 :この話は、しているとキリがないんですけど、もう一つ私が感じたのは、私も、ものすごくベーシックインカムはやるべきだと思ってるんですけど、その中で財源の話が出てきた時に、私は常にマクロ経済学者は、要は、日銀が、中央銀行が、国債を買い始めると、とにかく歯止めがなくなるから、最終的にはハイパーインフレになるよ、というのが正しい、と今までずっと言われてきたので、そんな方法でいいのかなっていうのは、すごく疑問に思っていたので、そこをちょっと突っ込みたいなと思ったんですよ。

井上 :そうですね。ちょっとスライドが後ろの方にあるので、中々出てこないと思うけども・・・結局ですね。日銀がお金を発行してですね。それをですね直接なり間接でもなんでもいいんですけども、世の中にお金をばら蒔いてですね、もうちょっとお金の流れを良くしてかないと今の日本はダメだっていう風に私は思っています。歴史を見てるとすね、お金の流れが悪くなると、皆さん思い切ったことをやらなくなっちゃて、デフレマインドが染み付いてしまうということなんですね。じゃあ「日銀が金融緩和とかやってるじゃないか」っていう話なんですが、その日銀が金融政策を行ったところで、お金が二か所で根詰まりを起こしちゃうってことなんですね。そろそろ出てくるな(スライドが)。二か所で根詰まりがおちゃうっていう話なんですが、まあ一つは日銀が発行したお金を、市中銀行(みずほ銀行、三菱UFJ銀行etc)が、お金を貯め込んで、あの~「ブタ積み」って言うんですけども。民間銀行から企業にまずお金が流れていかなきゃいけないのに、全然流れていかなくて、民間銀行は地方銀行に当座預金というのを持っていて、そこにどんどんお金を溜め込んでるってのが今の現状なんですね。それで、さらに企業から家計に対してですね、お金が流れていかないっていう現実もあります。今それがよく言われている「内部留保として溜め込んでんじゃないか?」っていうことですね。そんなお金の流通が悪くなってしまっているっていうのが、これまでの失われた20年できていたことなんですけども。それに対してですね、政府が自分のお金発行してですね直接家計にお金撒いてしまえばいいとかですね、あるいは政府が中央銀行に国債を買わせて、その見返りにお金を貰って、それを家計に直接バラ撒けいいとかですね「お金の流れを変える」っていうことを私は非常に大事だと思っています。そういうことをやらないとデフレ不況から絶対脱却できないっていうわけでは無いんですけども、実は今でもこんな風なことはやっています。政府が国債を発行してその国債を中央銀行がお金を買取って、その中央銀行が民間銀行にお金を供給して、民間銀行は政府にお金供給して、政府が家計に追われまくっていう・・・。まあそういうようなことは一応やっているんですけども、消費税増税するとどうなるかって言うと、お金の流れが逆向きになっちゃうんで。まぁ~こうやってお金バラ撒くのをヘリコプターマネーというんですけども、逆ヘリコプターマネーみたいなことが増税すると起きちゃう・・・ということなんで。色々と皆さん 意見と思うんですが、消費税増税には反対という立場なんですね。
まず家計がお金を持って、お金を使うっていうことをしないと、中々景気が良くならないし。そうやって企業が家計がお買い物をしてくれるんだったら、「もっとモノもじゃんじゃん作ろう」っていう気になるし、そういうことを繰り返していくとそのデフレマイントからインフレマインドの方に変わって行って、「積極的な投資」っていうのをやるようになると。AIとかITに対しても思い切った投資というのをやるようになるのかなっていう風に思っています。なのでマインドの話とベンチャースピリッツがあるかどうかって、「マインドの話とお金の話って切り離せないんだ」っていうことは、ちょっとマクロ経済学の立場としてはですね、皆さんに知って欲しい事だと思っています。

中島 :ちょっと疑問なのが「何でハイパーインフレは起こるのか?」と。お金を例えば毎年2%ずつ増やしますね。ベーシックで食えますよ。だったら、普通に考えたら毎年2%ずつインフレが起こって当然なわけじゃない ですか?お金の数が増えて薄まるんだから。それで凄くウマく行くような気するんだけど、実はそれを起こらずに何か知らないけどデフレが続いて、あるところでボンっとインフレが起こるみたいな。何でなんだろうと思いましたよね。

井上 :そういうのは最近「岩石理論」とかって言われてんですけども、そのようですね中々大きな石を蹴飛ばしても坂道に石があって蹴飛ばしても大きいから転がっていかないんだけど、1回転がり始めるとも止まらないみたいな感じなんですね。日銀のお金をこういう感じにバラ撒いてしまうとハイパーインフレが起きるというのは、そういう理論だと思うんですけども、実際そうはならないと言ってる経済学者もいて、ちょっと意見が分かれるところで・・・どっちかって言うと日本ではハイパーインフレが起きちゃう派の方が主流なんですよね。アメリカでは割とそうでもないんですけども・・・。クルーグマンとかスティグリッツというようなノーベル賞をもらったような偉い経済学者達が私が言っているのと近いようなこと言ってるんですね。で、正にスティグリッツって言うノーベル賞もらった人はですね、高額紙幣を発行しようなんてことを普通に唱えています。別に取り分け変わったこと言ってるわけじゃないんですが、何か日本にいると浮いてしまうというのはあります。緩やかにですね、例えば今仰ったように毎年2%ぐらいずつお金の量を増やしていけば、緩やかなインフレになると私は思っていて、べらぼうに物の値段が上がってしまうようなハイパーインフレには私はならないと思ってます。かなりこれまで歴史上に起きていたハイパーインフレって、とてつもない量のお札を発行しているし、あと戦争とかで生産設備が破壊されている時にハイパーインフレって起きやすいというのもあります。それは需要と供給のバランスを考えた時に需要する方が供給する方よりすごく多ければインフレが起きる訳ですけども、ということはお金を持ってば需要が増えてしまうのでインフレになりやすいんですが、もう一つの原因として供給側ですね。その生産する為の設備がなければ供給力が減ってしまうんで、第一次世界大戦後のドイツとか、あるいは太平洋戦争の後の日本とかもうそうですが、生産設備が戦争とかによって破壊されている時にはですね、供給側が弱ってるんでハイパーインフレは起きやすいというのはあります。だけども今は工場が破壊されたり何でしてる訳では無いこの経済の中ではそんなにハイパーインフレを心配する必要はないんじゃないかっていうことと、あともう一つはインフレを食い止める為の金融政策の技術っていうのが無かったんですね、昔は。だけど、今はインフレ率目標っていうのがあって、日本銀行も2%って言うインフレ率目標を掲げています。日本はその2%に達していない状況ですけども、それは過度のインフレを抑えることとデフレ脱却にも使えるという風にはされていて、2%を大幅に超えるようなハイパーインフレを起こしてしまったような日銀総裁がいれば、その総裁をクビにすればいいわけでですね。そういう単純なことすらもですね、人類は長らく気付かずにいたんで、幾らでもお札を刷って、ほったらかしにしていたっていうことはあります。でも今はそういうのは防げるような社会環境にあるのかなと思います。

「常に統合政府で考えないといけないっていうのは一部のマクロ経済学者の中では常識ですね。ただその常識っていうのが、世の中で広く共有されてるかと言ったら全くされていない状況でですね、日本の財務省もそうですけども、マスメディアもですね、財政再建しなければいけないっていうことが話の前提でですね、全ての議論がなされているんで、その前提部分をまず疑うところからやってほしいなという風に思っています。」

「 経済学者の話って、皆さんあんまり信じない方がいいですよ。全て半信半疑で聞いた方がいいと思ってまして、大事なテーマこそがもう意見が真っ二つに分かれるんですね。唯一ほぼ意見が分かれないのは軽減税率ですね。軽減税率はやめたほうがいいっていうのはそんなに多分意見分かれなくて、ほとんどの経済学者があれはダメだよねって言う。なんでかって言うと生活必需品とそうでない物の線引きってものすごく難しくて、ヨーロッパではずっとそれで揉めてきてる歴史っていうのがあるんで、普通にそういうこと知ってる経済学者は軽減税率なんてやるべきではないという意見になるんですがそれ以外の事、消費税増税すべきかどうか、財政再建すべきかどうか、日銀が国債保有したらチャラになるかどうか、これらはもう全部真っ二つに意見が半々ぐらいに分かれちゃうんですね。全くあてにならない集団ですね。」

中島:ちなみに、こういう、今ちょっと違いますけど、中央銀行が国債を買ってると、少なくとも数字上は国の赤字が増え続けるじゃないですか。それはすごく気分的に悪いと。子供達からお金を借りてるんだと言う。でも、実は政府が発行すると、そうならないですよね。まぁある意味に言っちゃえば日銀が持ってる国債はなかった事って出来ますよね数字的には。

井上 :はい、私はそう思ってまして、このグラフがそうなんですが。赤がですね、言わば政府の借金ですということなんです。緑の方のグラフが日銀が保有している国債の残高ということなんですが、これ緑がぐんぐん伸びているわけですね。ちょっと最近買取量を減らしてますけども。日銀が国債を買い取って行くと、赤のグラフに対して緑が追いつく。で、追いついたらどうなるかって言うと世の中にある国債が全部日銀保有になる。つまり日銀と政府をセットにして考えた時には、そういうのですね「統合政府」って言うんですけども「統合政府」っていうのが本当の国なんですよね。要するに日銀って政府の子会社みたいなもんじゃないですか。だったら日銀と政府をですね一体として見てですね、世の中にある国債を全部吸収しちゃったんだったらそれは借金なしって考えてもいんじゃないかっていうそんなことを唱えてる経済学者が日本に私も含めて何人かはいるんですが、主流はそうなってないんですね。財政再建が必要だ!増税が必要!だってことを言っている。
でも今日もちょっとテレビでやってましたけども、その消費税増税するたびにですね、景気が腰折れしてですね、日本はデフレ脱却できなかったっていうことを繰り返しているんですよね。あの3%から5%に上げたのは、橋本内閣の時でしたけども、あの時もかなり景気が悪くなってですね。それで結局、橋本内閣てのは選挙で負けてですね、崩壊しちゃったわけですけども。この前の2014年の時もですね、景気の低迷をもたらしたということなんで。財政再建というのを考えすぎるとなかなかデフレ脱却は実現できないと言うふうに思っています。

中島 :でもIMFが相変わらず財政不調だと色々言うじゃないですか。
あれはある意味間違ってる、意味がないこと言ってるという事ですか?

井上 :そうですね。常に統合政府で考えないといけないっていうのは一部のマクロ経済学者の中では常識ですね。ただその常識っていうのが、世の中で広く共有されてるかと言ったら全くされていない状況でですね、日本の財務省もそうですけども、マスメディアもですね、財政再建しなければいけないっていうことが話の前提でですね、全ての議論がなされているんで、その前提部分をまず疑うところからやってほしいなという風に思っています。

中島 :これが僕すごく不思議で、コンピューターの世界では割と良いもの悪いものに関しては、例えばね多少の意見の違いは誰でも、java とSwiftとどっちがいいみたいな好き嫌いのことはあるけど、基本的に例えばSwiftと objective C でどっちがいいかって言ったら意見は分かれないぐらいにSwiftが正しいわけですよね。コンピューターの世界では。で、それぐらいの話をしてるはずなのに意外とその政府にも反対意見、先生と違う意見の人がいて、IMFの人にも違う意見の人がいるって言うのはなんか経済の世界っていうのは不思議だなったすごく思いますよね。(経済学者の言うことは聞かない方が良い。唯一意見が分かれないのが、軽減税率はやめたほうがよい!ということだけだ!)

井上 :経済学者の話って、皆さんあんまり信じない方がいいですよ。全て半信半疑で聞いた方がいいと思ってまして、大事なテーマこそがもう意見が真っ二つに分かれるんですね。唯一ほぼ意見が分かれないのは軽減税率ですね。軽減税率はやめたほうがいいっていうのはそんなに多分意見分かれなくて、ほとんどの経済学者があれはダメだよねって言う。なんでかって言うと生活必需品とそうでない物の線引きってものすごく難しくて、ヨーロッパではずっとそれで揉めてきてる歴史っていうのがあるんで、普通にそういうこと知ってる経済学者は軽減税率なんてやるべきではないという意見になるんですがそれ以外の事、消費税増税すべきかどうか、財政再建すべきかどうか、日銀が国債保有したらチャラになるかどうか、これらはもう全部真っ二つに意見が半々ぐらいに分かれちゃうんですね。全くあてにならない集団ですね。

中島 :日銀が株を買う事に関してはどう思います?

井上 :あんまり筋の良い政策ではないと思ってます。やっぱりなるべく公的な機関である日銀なりが民間のやる事には口を出さない方が良くて、ま、国債でも買ってりゃいいんじゃないですかっていう話なんですが。ただ、国債を幾ら買い取っても、政府の方がその分支出してくれないとお金が世の中に出回ってこないという状況で、苦肉の策として、「まあ、ありかな」ぐらいには思いますね。株を買えばですね、日銀が自分でお金を発行して株を買う訳ですからその企業なりにお金が行くわけですね。それによって出回るお金の量ってのは増えていくんで、ヘリコプターマネーみたいなことを企業に対してポンってやっちゃってるんですよね。家計に対してではなくて。それは、余り筋のいいことではないけども、まあ、ありかないかと言ったら、デフレ脱却の為にはま、しょうがないかな・・・っていう風に思いますね。

中島 :今仰った様に株を買うっていうことは会社だったり株主は得するけど、一般の、株を持ってない人は得しない訳ですよね。それに対してベーシックインカムであれば全員が得するので。

井上 :そうですね、お金を発行した時に得られる利益のことをですね、貨幣発行益という風に言うんですけども。あの例えば、昭和61年に昭和天皇在位60周年記念コインての発行をしてですね、これ10万円の額面なんですけども、金としての価値は3万円しかないんですね。じゃあ7万円どうしたかって言うとそれは結局政府の収入になっちゃうんですね。ま、そういうのを貨幣発行益とかシニョレッジって言ったりするんですけども、1万円札だと20円しか発行するのにお金かかんないんで、後の9980円は貨幣発行益という風になります。貨幣発行益の定義ってそうじゃないだろって結構専門的な人から突っ込みがありそうなんですが、私はそう考えていいかなと思っています。そうするとですね、この貨幣発行益を誰が得るのかっていう話なんですが、さっきみたいに企業の株を買ってしまうと企業が貨幣発行益を得てしまうということにほぼなります。なんですけども、それってちょっと不公平じゃないのっていうのがあるんですね。そうじゃなくて国民全員に均等にこの貨幣発行益を分割して配当すべきじゃないかっていう主張を私は持っていて、そういうのを国民配当とか国民ボーナスなんていう風に言ったり、あるいは貨幣発行益の国民配当と言ったりするんですが、そういうものをですね、ちょっとずつ国民全員に配るっていうのは割とやるべき事かなという風には思っています。ただこの辺になってくると、かなりちょっと経済学者の中でも「井上っていうの、最近なんかぶっ飛んだこと言ってるよね」っていう風な評価にはなってきちゃいます。はい。

中島:でも僕は思うのは、例えば少子化の問題もそうじゃないですか。ベーシックインカムになると要は国民一人当たりいくら出る訳で、子供たくさんいると収入多い訳ですよね。

井上 :そうですね。はい。

中島 :だから、子供が5人いれば7万円といったら5x7=35万円入ってきます。じゃ、もっと作れって話に・・・・・なんかあまり単純化しすぎてるかもしれないけど何か良い、良い様に思う。

井上 :やっぱり子供がですね、あまり皆さんが作らないっていうのは今いろんな要因があるんですけども、はっきり言えるのはやっぱりお金がないから作らないっていう人は結構いるんですね。まずはお金がないから結婚できないってこともあるんですけども、結婚してる夫婦でもうちは苦しいからって言って一人で我慢しようって言う、子供は一人だけっていう、僕の友達でも、お前絶対いっぱい稼いでるだろっていう人までですね、ある IT の結構大企業のグループ会社の社長やってるんですけど、絶対持ってると思うんですけども一人しか子供作れないとかっていうんですよね。でも本当にそうであればですね、子供限定のベーシックインカムっていうのはまずやるべきかなって、まあ子供手当てっていうのが昔、民主党時代にありましたけど、あれをもうちょっとちゃんとやるべきかなと思っていて。私は理想としてはもう子供からご老人まで全員に配るっていうことなんですが、ただ大人に配るとナマケモノにお金やるのは嫌だとかですね、結構色々という人はいますんで、その問題がクリアされるまでは子供限定のベーシックインカムっていうのはやったらどうかなっていう風にはちょっと思ってますね。

中島 :そろそろ時間が近いので・・・
一番ベーシックインカムが好きなんだけど気になってるのはベーシックインカムっていうのは、私の理解では非常にコストの安い経済政策だと。要はその審査とか要らないですから、役所の人数も減るわけです。でも、それをやろうとすると実は霞ヶ関が猛反対するんじゃないかなと。霞ヶ関どころかいろんな補助金、例えば私立助成金なんてのは典型的なもので、あんなものはもういらないわけですよベーシックインカムをやれば。でもそれを辞めるとなると、私立大学,高校は全員反対するでしょ。それからその先ちょっとその例えば、老人ホームに落ちている養老保険だとか、後下手すると農林水産業に対する補助金とかもベーシックインカムをやれば、別にその低所得者の中でも儲からないからとか言う人も気にしなくて良くなる訳で。そういうのは全部廃止しないとベーシックインカムの意味は僕はないと思ってるんですけど、そう言うと多分反対する人が多くて、だからこそベーシックインカムはできないんじゃないかなという危機を僕は持っていますが、それについてはどう思われますか?

井上 :その可能性ありますね。今、私学助成の話ありましたよね?私はあの駒澤大学という私立大学に勤めていながら私学助成とかホントにやめてほしいと思っています。何でかと言うとですね。あの「こういう改革をしたらの助成金増やしますよ」みたいな改革案を提示してくるんですけども、現場の教員から言わせると「そんなことやったでしょうがないだろう!」って思うんですよね。そうなんですけど、お金欲しさに無駄な会議をし、無駄な報告書を作るということを今大学では一杯やってるんですね。その為には・・・まぁそれだけじゃないですけど、大学の先生の研究時間ってのは減っていて、特に理系の先生なんかの研究っていうのをちゃんとやらないと日本の科学技術力が伸びていかないんですけども。そういう理由でも科学技術力がどんどん日本では衰えていて、もう30年経つと日本からノーベル賞とか出なくなるなんて事はこの間の本庶(ほんじょ)さんも言ってますし、 2年前ノーベル賞もらったあの大隅さんとかも言ってますけど。今はそうやって日本の科学技術力がもうガッタガッタに衰退しているという状況ですね。それで、そんな文科省が・・・現場の先生から言わせれば、「そんな改革してもしょうがない」っていう案を提示してくる背景には経団連とか財務省とかが控えていて、まぁその辺の複雑な権力構造っていうのがあるのが、私は問題だなと思っていてて。自分たちがそういう権力を発揮したいが為に裁量的なお金の使い方っていうのを官僚とか政府っていうのはしたい。何か裁量の部分っていうのは私は可能な限り無くしたいんですよね。裁量があるところにはだいたいパワハラと不公平っていうのがやっぱ蔓延るんですよね。そんな裁量権っての使えば、この間文科省でですね。役人さんが子供を裏口入学させたとか言って問題になってましたけども、裏口入学しているかどうか?って、もうどうでも良いんですよ。別に、アメリカだって裏口入学なんて幾らでもありますし、日本で全体の1%や2%の人を裏口入学してたってどうでもいいじゃないか?と思うんですね。あの問題はその背景にあるところが一番大事でですね。結局それだけの権限が官僚に握られちゃってるって言うことなんですね。そういう官僚が私立大学、まぁ国立もそうですけどに対してですね、不当な影響力を行使してるって言う背景があって。実はそっちの方が私は大きな問題だという風に思っています。そういうものを無くすためにも「ベーシックインカムっていうのは導入されるべきかな」なんていう風には思ったりします。

中島 :ありがとうございます。私もその辺はすごく同意しているので、どうやって変えたらこれから考えていかなきゃいけないけど、結局、政治家を誰かそういうことを理解してくれる人を立てて、応援するしかないかなと思っていて、私は自民党は嫌いなんだけど、そうは言いながら自民党がいないと動かない国なので、じゃあ誰をサポートしたらいいかなって考えて、ひょっとすると小泉さんかな、みたいなことをちょっと思っています。ただ小泉さんと会ったことがないので、是非一度お会いして、どんな人物かを見て、もし理解していただけるなら、小泉さんあたりを説得して、そういう方向に持っていけると日本は変えられるんじゃないかな、みたいな期待はちょっと持っていますので、是非紹介してください。ということで、今日はこんな感じで。ありがとうございました。

井上 :ありがとうございました。

司会 :井上先生ありがとうございました。今一度皆様大きな拍手の方をお送り下さいませ、ありがとうございます。すみません、話がすごく盛り上がっているんですけれども時間の方が少々短くて・・・またぜひ第二弾とかも考えて頂けたらと思いますので、よろしくお願い致します。

井上 :ええ、まぁ社会保障制度としてやりましょうっていう話と両方あって、両方実施すべきだと思うのですが、貨幣発行益を配当するというのは、天然資源が採れる国、例えばイランなんかは年間国民に1人ずつ180万近く払っているらしいんですね。それは公的な収益があるからそれだけの国民に対する配当が出来るんですね。じゃあ日本は天然資源が無いから何も出来ないかと言うと、やっぱお金って常に増やし続けないと経済は成長しているわけだから。例えば子供が成長していってその分血液を増やさないといけないのと同じように、お金ってのは経済の血液みたいなものなのでお金も増やしていかないといけない。そうしたらお金を増やしたときのそのお金を誰が受け取るかっていう問題が出てきて、結局お金を受け取る人が貨幣発行益を得るわけですけれども、それって国民全員が均等に得るべきじゃないかって思っていて、では貨幣発行益は誰のもの?っていう議論が今までほとんどなされてなかったんですけど、それって国民のものにしないとおかしいんじゃないか、っていうのが私の意見です。

あともう一つ、税金をベーシックインカムの財源にするということを正当化するのはかなり難しい話で、子供たちだけだったらまずはクリア出来るかもしれない。子供というのは、これは実は自民党や旧民主党でも意見が分かれているのですが、子供というのは家族で育てるものか、社会全体で育てるものかいうことです。私自身は無党派で別に何党でも何でも良いんですけれど、社会全体で子供を育てるって観点はもう不可欠だなと思っていて、そういう視点を持たないと少子化というのは解消出来ないと思ってますので、少なくとも子供限定のベーシックインカムっていうのは社会で子供を育てましょうって理念からは引き出せるかなと思っています。ただ大人の怠け者にまで配るとなると、かなり反対というのは多くなると思うのですが、私は怠惰であるということ自体も一種のハンディキャップだと思ってます。ですが・・・その話をちょっとすると長くなってしまうので、まぁそういう主張もあるんだなっていう程度にとりあえず受け止めて頂ければなと思います。

司会 :中島さんは何かコメント等ございましたら・・・

中島 :まぁ多分結論的には同じなんだろうけど、私のベーシックインカムに対する考え方は、割と昔のSFに出てきたようなユートピア的な世界、労働はロボットがしているから人間は遊んで暮らせるっていう未来が、まぁユートピアとして来ても良いわけですよね?ただ、それに至る過程で分かってきたのは、そういう世界は普通にはやってこないよと。その前に激しい貧富の差が起こると。それはもうアメリカで証明されていて、要はユートピアが来る前に激しい貧富の差が起こるわけですよ。一割の、ひょっとすると1%の人がそういうロボットとかを作る立場。投資家であり、ぼろ儲けをして他の人たちは職がないという世界が来ちゃうわけですよどうしても。それが起こると何が起こるかというと、民主主義で全員が平等に票を投票するので、結局「そういう世界は嫌だ」とか、「あんな金持ちはやっつけよう、殺してしまえ」みたいな激しい政治家が出てきて、無茶苦茶な世界が起こるっていう危機感を僕は持っていて、それを止めるには要は「ユートピアを加速する」しかなくて、金持ちの金を引き剥がして貧乏な人に渡すしかないわけですよ。で、その方法として高い税金をかけて配るというのも一つだけど、それとは別に貨幣を毎年発行することによって持ってる人たちのお金を薄めて全員に配る。それによってユートピアを実現しようという方が、私としては分かりやすいですね。まぁ多分結論としては同じなんだけど。

井上:そうですね、今ベーシックインカムを導入するとなると、私みたいな話になっちゃうんですが、将来AIやロボットが発達してきて、ベーシックインカムを正当化出来るかと言ったら、そしたら中島さんがお話ししたような内容になるという点では一緒です。

司会 :よろしいですか?どうしましょう、もし…ちょっと時間が、あ、じゃあ(質問者が挙手)、はい。

質問者:消費者で年金が色々大変だとかいうことはよく分かるんですけれど、人口がどんどん増えていくとやっぱり資源が有限なので色々大変だよねっていう考え方もあるかなって思うんですけど、やっぱり急激に変化しないかんじで成長していく方が後々としては良いんでしょうか。それとも経済学と同じでちょっとずつ増えていった方が良いんじゃない、みたいな。(井上:それは子供の数?)子供の数ですね。

井上:そうですね、子供の数はちょっとずつ増えていった方が良いと思ってまして、これからAIやロボットが人間の代わりに働くようになるので、あんまり直接生産活動に労働者の頭数が必要とは私は実は思っていないんですね。そういう観点からすると資源を分け合うという意味からしたら、もう人数は少なければ少ないほどいいんじゃないかっていう人もいるんですね。ただ、今の中国を見てても分かるように、結局これからは人数が少なくても良いんですけれども、頭脳を持っている人というのは大事だと思っているんですね。労働者の頭数をわーっていっぱい揃える必要は無いんですけれども、まぁ今戦争がまさにそうなっていて、国民全員を徴兵して戦う必要って全く無くて、高度な訓練を受けた少数の専門的な軍人がいれば戦争に勝てるっていうそういう時代なんですね。それが経済でも同じことが起きてしまうと思っていて、頭脳を持った少ない人数でもってどんどん価値を生み出しちゃうっていう「頭脳資本主義」と私は呼んでいるんですが、そういう時代がやってきてしまうというふうに思っているので、じゃあ直接労働者の頭数は少なくても良いじゃないかって話になるんですが、ただその頭脳を生み出す母集団が結局多い方が良いということがあってですね、それでIT企業の時価総額ランキングを見ると、全20社の中で中国の会社が9社も入っているんですね。それだけですね、すごい起業家が中国に生まれているというのは色々な要因があると思うんですが、単純に人口が多いってのもあると思うんですね。それだけ日本の10倍以上の人口がいれば、それだけ凄い起業家も出てくるっていう話なんですね。まぁそういうところから考えて、優れた頭脳を生み出すためにも人口はやっぱりそんなに減らない方が良いというふうには思っています。

司会 :中島さんからは何かありますか?

中島 :大丈夫です。ちょっとオンラインで1つ質問が入っているのでこれだけちょっと最後に答えると「ベーシックインカムを導入すると人間の幸福度はどうなるのでしょう?」、まぁその働きがいとかやりがいとかね、っていう質問が来てて、それは僕は結構気を付けなければいけないなと思っています。というのはアメリカで見てると実は鬱病になっている人は結構金持ちに多かったり、金持ちの奥さんとかね、多いんですよ。自分が必要とされてないってなると人間は鬱になりやすいので、そこは気を付けなければいけなくて、ただ僕は期待してるのはボランティア活動だったり創作活動だったり、例えば音楽で食っていくとか今は無理じゃないですか、でもベーシックインカムがあれば出来るわけで、そういう音楽や絵とか、趣味に生きる人みたいなのが増えてそこで幸福感を得てくれれば良いなとは思います。またちょっとユートピア過ぎるかもしれないけど。

司会 :井上先生はいかがですか?幸福とか・・・

井上:そうですね、まぁ大体中島さんが仰った通りなんですが、特にですね、今の時代にそういうのが多いっていうのは、なんとなく人間って役に立たなきゃいけないとか必要とされてないといけないという気持ちが近代人には強すぎると思ってるんですね。昔からそうかというと貴族とかいっぱいいたわけですよね。じゃあ貴族はみんな鬱病になったかと言うと別にそうでもないと思うんですね。だけど近代においてはなんとなく必要とされていないと具合が悪くなってしまうということだと思うんですが、別に世の中の役に立たなくたっていいじゃん?っていう開き直りはこれからの時代に必要な価値観だと思ってまして、別にニートでも良いじゃないですかって話なんですよね。どうせみんな将来は多く人がニートになると思っていますんで僕は、AIやロボットに働かせるというまぁもうちょっと・・・かなり遠い未来かも分からないんですけれども、そうなると思っているんで。もちろん社会貢献するのは良いことですけれども、別に貢献出来なくてもOK、趣味に生きるのもOK、っていう感じでですね、まぁあとはそういうボランティア活動をしたりとかですね、何かそういうことで賃金労働っていうものにそんなに囚われなくても良いんじゃないかなというふうには思っていますね。

司会 :はい、ありがとうございます。すみません議論は尽きないですけれども、一旦この辺で締めさせて頂きたいと思います。では第一部の対談はこちらで終了させて頂きます。本日は井上先生、中島さん、どうもありがとうございます。もう一度拍手をお願い致します。