Invent or Die 10 - 中島聡 ×夏野剛

司会:お二人の対談は2年ぶりということですが、2年間であった変化、近況をお聞きします。中島さんは如何でしょうか。

中島:一番大きな変化は、最近働き始めました。mmhmm(ビデオ会議用映像スタジオソフト)のソフトウェア会社に入りました。シリコンバレーにある会社で100%リモートで働ける会社です。新しいライフスタイルを模索しているところです。

司会:この、いつまでも開発を貪欲にされている姿はかっこいいなと思います。夏野さんは2021年6月にKADOKAWAの代表取締役にご就任されたとお伺いしております。近況は如何でしょうか。

夏野:ネット番組で気を許すと炎上することがわかりましたので、これからはネット番組でも地上波モードで適切に、ポリティカル・コレクトネスに生きていかなければならないことを最近学びました。

司会:大事な学びですね(笑)。赤裸々に語って頂きありがとうございます。そんなお二方が今回、発起人となりまして、2018年8月8日に設立されたのが、デジタルネイティブな世代の若者を中心としたコミュニティ「シンギュラリティ・ソサエティ」です。本日は、設立3周年を記念した特別対談ということで、お二方から貴重なお話をお伺いしていきたいと思います。

アメリカでのコロナ禍の現実

夏野:シアトル在住の中島さんにお聞きします。アメリカの友人に話を聞いたり、メジャーリーグの試合をテレビで見ていたりすると、アメリカの方が先にWithコロナの状態になっている感じを受けます。マスクしないでメジャーリーグの試合を見ている人がたくさんいる。最近は、アメリカ政府に対して「無策だ!」とギャーギャー騒ぐよりは、現実的にワクチンを打って、少しフリーになりましょう。みたいな感じになってきている。一方で、日本はどうなっているのかと言うと、政府が無策だ、お医者さんが可哀そうだ。みたいに、感情論が先に立っている気がして、正確な議論がなされず、ワクチンに対するデマも流れている状況にある。現状で、日本と比較してアメリカの方が感染者と死亡者数が多いが、アメリカの方が日本より、Withコロナのモードになっている気がする。この状況はどうでしょうか。

中島:アメリカはWithコロナの状況から脱したモードになった感じがします。大きいのは、ワクチン接種が進んだことで接種したい方は既に接種完了できてる状態にある。アメリカ国内には十分なワクチンがある。
 全米のワクチン接種率は60%くらいだが、シアトルでは80%台。面白い傾向として、デモクラットの州が80%台で、リパブリカンの州が40%台のイメージで、アメリカ社会は2つに分断されている。
 今、病院に入っている方のほとんどは、ワクチン接種を受けていない方達。ワクチンができるまで、アメリカでは激しいロックダウンをしていました。アメリカでは日本と違い、政府がレストランに「閉じろ」、「5人以上集まってはいけない」と強い命令を出せるので、皆嫌がっていた。危機を脱し、ワクチン接種を受けた段階で、皆がロックダウンには耐えられない状況になっていった。
 政府がワクチン接種を受けられる状況を作っているので、ワクチン接種を受けない方が悪い状況になってきている。あまりはっきり言わないが、デモクラット側は、僕らは受けていて、アンチワクチンの人がリパブリカンに多いのはしょうがないと考えている。ただ、彼らに合わせてロックダウンはしていられない。ということで、ロックダウンを解除していった。
 デモクラットの人達は、自分はワクチン接種を受けているから、ロックダウンを解除して良いと考えている。リパブリカンの人達は、アンチワクチンどころか、コロナなんか怖くないと考えている人もいるので、結局両方ともロックダウンしないで良いと考えてロックダウンしない。
 2つのアメリカが混在している状況で、なぜか両陣営が一致してロックダウン解除として、アメリカではアフターコロナに突入している。

夏野:日本ではワクチンを受けている、受けていないをそばに置いて、学校も休校すべきかもそばに置いて、政府がちゃんとやってくれないからこんな事になっているのだ、とメディアを含めて言っているばかり。アメリカでは、そういう状況ではないということですかね。

中島:そうですね。ロックダウンが激しかった頃は、厳しすぎると政府が批判されていましたが、その状況を脱して、ワクチンが進み始めたら文句は言わなくなった。たぶん、今の段階でロックダウンしようとしたら、政府は批判されると思います。

ロックダウンはベーシックインカムの予行練習!?

夏野:なるほど。今日本の2回目ワクチン接種率は35%で、1回目接種率は45%なのです。割と高くなってきているが、今日の世論調査では、65%の人がロックダウンしたほうが良いと言っているのです。日本では、法律が無いので、政府にロックダウンの権限が無いので、ロックダウンできないが、65%の人間がロックダウンしたほうが良いと言っていて、不思議なことが起こっている感じがします。

中島:不思議ですね。ロックダウンは本当に厳しい時にはしたほうが良いですけど。

夏野:本当のロックダウンを経験したことが無いので、感情論で言っているような気がしますよね。

中島:そうですね。アメリカのロックダウンは本当に厳しかったですよ。レストランとかはバタバタと潰れました。保証も一応出ましたが、日本と違って、レストランよりも従業員を守るような保証の仕方だったからです。今、歪んでいるのは、その保証が良すぎるので働かない方が良いと思っている連中が多くて、人が足らないところがでている。

夏野:これは、ベーシックインカム的な事が起きている。

中島:ベーシックインカムの実験をしているようなもの。息子もレストランを経営しているけど、全然人が採れないですよ。アメリカ・シアトルの最低賃金が15ドル(日本円で1,600円位)に上がりましたが、それでも採れないです。

夏野:だって誰も働きたくない。補償があるから。

中島:ちょっと保証し過ぎたのかなというのと、ある意味、いいベーシックインカムの予行演習になっているような気がします。

夏野:なるほど。ということでした。本題に入る前に今の状況を中島さんにお伺いしてみました。

ロックダウン中の飲食店の現状

司会:まさに一つ目のテーマが「コロナとビジネス」についてだったので、すごくタイムリーなお話でした。やはりコロナの影響により、世界規模であらゆるビジネスが変化を求められている中、飲食店への影響が大きいと思います。先程、話題にも上がりましたが、中島さんの息子さんが飲食店を経営されていて、今回のロックダウンで影響があったと思われるのですが、そのあたりどの様な感じだったのか、どういう影響を受けたのか、具体的にお話をお聞かせいただきたいです。

中島:一番身近な話で、うちの息子はもともと1つ「ADANA」というレストランを3年くらい経営していて、レストラン経営が厳しく、やっと黒字になって、2軒目の「TAKU」という店を開けた3日後にロックダウンが来ました。アメリカのロックダウンは、日本と違って、「お酒を出すな」の要請ではなく、完全に「閉じなさい」なので、いきなり閉じ、最初の段階では保証もなかったので、すごい厳しい状況に追い込まれました。ただ、すぐに政府がロックダウンの結果として、職を失った人には、通常の失業手当にプラスして、週600ドル出すと言ったんです。これはべらぼうなお金で、これを聞いた息子は、無理に雇って赤字を垂れ流すより、全員解雇した方が皆幸せになると考えたそうです。失業手当が出る上に、週プラス600ドル出るので、全員解雇としたそうです。すごい異常な状況でした。従業員の為にも、お店の為にも全員解雇しても良いという状況で、2つのレストランを合わせて26人程、従業員がいましたが、全員一斉解雇でした。ただ、レストランを経営していると、家賃があるので、2,3カ月経つ頃に耐えられなくなり、1件目の「ADANA」というレストランは閉じました。リース契約上、閉じれる方を閉じ、閉じられない方「TAKU」を残して、ひとまず、両方のレストランの従業員も解雇して、お店も閉じてはいるが、片方の「TAKU」のみリースを残している状況で、とりあえず耐え凌ぐ状況となりました。それでもその時点で赤字を垂れ流す状態でした。このような状況で、人は切ることができても、家賃は払わなければいけないので、潰れてしまった会社があった。、もしくは、経営者自身も収入が無いがいので、息子のように経営者は守られなかった、補償が出なかったのです。そこで耐えられなくて、別の仕事を探した人がいたので、レストランはバタバタ潰れました。数字としては出ていませんが、感覚として、レストラン全体の半分くらいは潰れた、自主的に閉じた感じです。という凄い話がありました。 今は、テレビのブラボーチャンネルの「トップ・シェフ」という番組(日本でいう料理の鉄人のようなイメージ)があり、それに出ることが決まり、ファンが増え、フードインフルエンサーとして生きていけるような気配が出てきました。そのような感じです。

日本のリアル 

司会:すごいですね。大きく変わった感じですね。
夏野さんは如何ですか、身の回りを見ていて、「ビジネスに対してコロナが与えている影響」についてお聞かせください。

夏野:飲食、観光、特にインバウンドが全く無くなってしまったので、この辺りの産業の方々は本当に大変なことになってしまいましたね。日本の場合は、色々な形で政府より補助金が出ていて、特に飲食に関しては、緊急事態宣言が出ていると、一日6万円、蔓延防止処置では、一日4万円が給付され、変な話ですが、レストランの規模に関わらず出ているので、パパ・ママ+アルバイト従業員でやっているようなお店では、十分にやっていけるようなお金が保障されているのですが、逆に居酒屋、チェーン店はもの凄く大変なことになっていて、非常に厳しい事になっている業界がある。一方で、金融、通販、コンテンツ業界等は、過去最高益を更新している所がたくさんある状況で、二極分化が激しく起きているのが、今の日本の現状だと思います。

司会:今の内容についてもう少し深堀りしてお聞きしたいと思うのですが、伸びた業界(金融、通販、コンテンツ)があると思いますが、中島さん、夏野さんから見て、今まさにコロナ禍によって盛り上がっている事業等を具体的に上げて頂けないでしょうか。

夏野:コロナだから盛り上がる事業というのは、あまり無いと思いますが、家での消費という部分で外に出られない状況では、Netflixに代表されるようなサブスクリクション、ビデオオンデマンド系は強いと思います。
これは、アメリカでも一緒なのでしょうか?

中島:そうですね。うちの会社「mmhmm」もリモートワークが増えている中でzoomが伸び、ビデオ用プラグインツールのmmhmmも新規の会社としてはお金が集まった。

夏野:東京だとUber Eatsのようなデリバリー系は凄いことになっていますね。Uber Eatsだけではなく、ウォルトやネコ等、あらゆる国のあらゆるデリバリー系のサービスが東京に参入していて、何でも頼める状態になっていますね。

中島:ある意味で加速したんですよね。色々なものが。

夏野:そうですね。雨が降ると、配達員が足りない状態になっていますよね。今回僕は、規制改革をやっているのですが、実はこれまでの日本では飲食店が既存の許可ではお弁当を出すのが許されていなかったのです。今回のコロナ対策では、お弁当を売る許可を全部の飲食店に認めるのと、酒販免許が無くても、レストランがお酒を売ることを認めている。この2つを認めたことで、飲食店がデリバリーやテイクアウト、お酒の販売ができるようになって、これはコロナ後もずっとやりたいなと思っています。なぜ逆に今まで認められていなかったのかと感じています。

契約がオンラインで完結!

中島;アメリカで、日本との対比で面白いかもしれないのが、コロナ禍の前から、すこしずつドキュサインを使い始めていて、契約をオンラインでサインどころか、クリックするとサインのかわりになるものが、、コロナ禍になって一気に加速しました。色々な業種がドキュサインを導入していて、不動産の売買等の殆ど全てのことがオンラインで出来るようになった。実際に私もコロナ禍になってから不動産購入していますが、物理的な書類へのサインは一切行わず、振り込み含めてパソコン操作のみの全部オンラインで不動産取引ができるようになりました。
 最近では、人を雇って何かする、例えば家のリモデル等もオンラインで契約できるようになったので、私としてはとても便利になりました。

夏野:これは、アメリカでもコロナ禍で一気に進んだ感じになるのでしょうか。

中島:コロナ禍前から一部の業者で導入されていたが、コロナ禍以降は一気に他の業者に広がりました。

KADOKAWAの大ヒットに依存しない経営

司会:昨今、ネット通販だけではなく、ゲーム・オンラインコンテンツ関連企業の業績が急拡大していますが、今後のメディアのあり方に関して、中島さんからKADOKAWAの社長である夏野さんにご質問があるそうです。

中島:ドワンゴはインターネットでニコニコ動画等をやっている会社として今後の成長は見えてくるのですが、KADOKAWAは昔ながらの紙出版メディアをお持ちの会社で、どのようになってゆくのか、どのようにしたいのかをお聞かせください。

夏野:我々として、出版社とは考えてなく、IPクリエーション企業と位置付けています。紙や電子で文章として書いていく物、(漫画を含め)がIPの源泉になることが多い。理由として、一人で創れる点が大きいです。
 KADOKAWAでは、一人で創った作品は年間5,500点の新刊を電子のみまたは、紙+電子の両方で出しています。5,500点の内、何十点かはすごく売れるのです。すごく売れた場合はお金が付き、人が付き、アニメ化や映画化が起こります。映像、動画、映画を作るのは一人の力ではできないので、原作が良いものでなければできないです。
 なので、ウケたもの、売れたものが次の展開に進めます。アニメならば年間35本程度、映画ならば10本程度、合わせて映像になるのが年間50本程度ある。この中からゲームになるものがある。これらの源泉になる原作と呼ばれるものが年間5,500点本、出していることがKADOKAWAのパワーになっていて、「メディアミックス戦略」と呼んでいますが、なぜか日本のライトノベルがアメリカやアジアで売れている。
これは、ベースになっている、年間5,500点のレベルが高いからだと考えています。KADOKAWAは出版会社ではなく、IPを次々に生み出す会社と考えている。他の出版会社との違いとして、大ヒットへの依存が無く、小さいクラスターにめちゃめちゃささるものが色々あり、「鬼滅」のようなヒット作が出ない代わりに、特定のソサエティにささる作品、例えば「ソードアートオンライン」のような作品が何本も何本も出ている。だから、簡単にはへたらない。
 同じ様な事はニコニコ動画でも言える。有名なインフルエンサーはYouTubeにいってしまうが、2,000人程度のファンを持つ配信者はYouTubeで稼げないので、ニコニコ動画の方が向いている。誰か何かにはまるというものを用意できるポートフォリオを持っているのがKADOKAWAやニコニコの強みと考えています。これを更に強力にしていこうと思っています。
※IP:Intellectual Property(知的財産)

中島:昔の出版社は出版がメインで、メディアミックスはたまに起り、ラッキーでたまたま儲かっていたけど、現在は、メディアミックスをメインとして行っていて、少年ジャンプが連載するのと同じ感じです。

夏野:少年ジャンプの場合は、掲載する件数が限られてきてしまう。KADOKAWAの場合はメジャーな雑誌・メディアを持っていないが故に掲載件数を限らず、いろんなところにささるものを幅広くやるという部分が力だと思っています。

中島:僕、実はコロナ禍の前にメディアミックス戦略を立てたんです。一つ原作者としてのコンテンツがあって、それをゲーム、映画に展開するまで全部計画を立てて、ゲーム会社を作り、漫画を作り始め、中国のドローンメーカーとの話も進んでいたのですが、コロナでダメになった。今度はKADOKAWAさんとやりたいですね。

夏野:ひとつ面白い話で、僕はKADOKAWAの全コンテンツを理解できないんです。誰も理解できない。1人の人間が5,500点のコンテンツ全部の良いところを理解することはできないんです。なので、それぞれの編集者がいて、全部で600人いる編集者がそれぞれが行けると思った作品に賭けていく。これが力だと思っています。

中島:それでも、自然淘汰の競争は起こっているんですよね。

夏野:そうですね。年間、1人の編集者が9~10作品を取り扱い、その中からヒットが生まれてくる。このような仕組みとなっているのがKADOKAWAの強みだと思っています。

中島:それは、一発のヒットに頼らずに続けていけるので、強いと思います。

夏野:そうです。なので面白くてユニークだと思います。最近だと、アジアの他の国から生まれてきた作品で例えば、タイから生まれたボーイズラブが日本で流行ったりするわけです。これが面白いなと思います。もともとボーイズラブ自体が皆にささるコンテンツでは無いので、一部の腐女子にはめちゃめちゃささるわけです。

小説と漫画、ヒットするのはどっち?!

中島:今は、メディアミックスで成功するのは、小説と漫画のどちらが多いですか?

夏野:コミックの場合もあるし、ライトノベルから始まって、コミカライズとアニメーションの両方をやる場合もあるので、結果的にヒットするのは両方です。原作がライトノベルだとしても、コミカライズは必ず起きるんです。

中島:文字から始まり、良いものだとコミカライズが起こり、それからアニメ化が起こるわけですね。

夏野:その場合もありますが、コミックからアニメに行く場合があります。あるいは、コミックが先でライトノベルが後から来る場合があります。

日本の作品が世界展開できない理由

中島:日本では流行っているドラマの元がコミックだったりする場合もありますよね。そのような部分でうまく世界展開できると良いですね。

夏野:そこが難しいところで、まず言語の問題があります。最初に作るときに英語で作らないと、トランスレーションの時点でタイミングが一拍落ちる話があります。2つ目に、ほとんどの時代設定、環境設定を日本ベースにしていると、感情移入ができないんです。ここが難しいところです。

中島:すごくもったいないですね。

夏野:はい。すごくもったいないです。日本ですごく流行っている、「キングダム」という漫画があるのですが、始皇帝を描いた漫画ですが、漫画の原作を読む限りでは、全て中国の話なので、日本っぽさはゼロで良くできた漫画ですが、これを映画化された時は、全員日本の俳優で作ってしまったのですごくもったいないと思いました。

中島:それはすごくもったいないですね。

夏野:しかし昔、「レッドクリフ」という映画があって、日本のエイベックスが作った映画ですが、香港のジョン・ウー監督で、日本人の俳優が3人くらい出ているけど、後は全部中国人で、中国語で撮ったのです。日本での興行はあまりうまくいきませんでしたが、中国での興行は成功した名作です。というように、言語の壁、時代背景、ターゲットのマーケット等、実写化だとどうしても日本に設定してしまうのですね。

中島:そこは切り替えたほうがいいんじゃないでしょうか。ハリウッドに行くなり、中国に行くなりして作ると。

夏野:そうすると、日本であまり売れないのです。

中島:日本で売れなくても良いと思います。

夏野:そこが割り切れていないですね。多くの場合は日本の映画も日本のドラマも日本のテレビ局が絡むので。

中島:そこは要らないです。

夏野:要らないのですが、製作の過程においてはそれが映画の投資をする人にとって、一つのルーティンになっているのです。

中島:製作委員会でしょ。これはもったいないです。

夏野:製作委員会です。東宝とかテレビ局を入れると日本マーケティングになってしまいます。

中島:KADOKAWAさんはその義理とか無いではないですか。

夏野:日本で公開しないものを作るという判断ができたら、それができると思います。

中島:KADOKAWAさんの立場だったらそれができるのではないですか。

夏野:僕は投資の判断はできるのですが、まず監督がいないのです。

中島:それはビジネスディールにして、監督はハリウッドで雇うのです。

夏野:ご存じの通りハリウッドにはいろんな方がいるのです。プロデューサー誰々を引っ張ってきてとか、それをやったことがある方が日本にはいないのです。

中島:それは僕はやるべきだと思いますよ。このドラマをハリウッド映画化するためにKADOKAWAの名前でお金だけ日本で集めて、東宝やテレビ局は排除して、誰かがアメリカに行って、お金を持っているから、良いプロデューサーとシナリオライターを雇って、これが元ネタです。映画化しましょうと話を持ち掛けるんです。

夏野:あり得る話だと思いますが、多くの場合はお金だけ持っていかれて終わりだと思います。ハリウッドの方々はすごく強力なので。もしやるとしたら、ソニーがやっているみたいにコロンビアピクチャーズを買収してこっちの人間にしてしまって、ハリウッドで好き勝手やらせてしまう。というのがソニー・ピクチャーズがやったパターンですが、そのくらいはやらないと駄目かなと感じます。

中島:日本のコミックやライトノベルなどのクリエイティビティのプールの大きさがすごいじゃないですか。

夏野:そうなんです。まさに「攻殻機動隊」や「バイオハザード」なんかは日本のIPだが、ハリウッドで作らなければ、あのようにはならなかったのは何故なのかというところを真剣に考えなければいけないと思います。

中島:そこはいいじゃないですか。専門家がたくさんいるわけですから。

夏野:日本マネーみたいにしないためには、ソニーみたいに映画会社を買うくらいのことをしなければ、仲間ができない。いいカモにされて終わってしまう。

中島:今は出口として、Netflixもあるから、NetflixとKADOKAWAの間にワンクッション置く会社をハリウッドに作るんです。KADOKAWAが日本資本として。

夏野:その場合は、Netflixがハリウッドに対していらないと言います。直接やりたがると思います。

中島:直接やるにしても、そこで監督雇って、俳優雇わないといけないから。

夏野:そうですね。でも、Netflixにはその能力があります。

韓国ドラマの強さ

中島:今、Netflixで韓国ドラマがすごく頑張っていますよね

夏野:そういう意味でNetflixでは、「今際の国のアリス」というのが、全世界である程度の視聴者数を記録しましたが、あの作り方はありだと思います。これは、日本で作っていて、Netflixがベースのお金を出して作っています。これは近未来を描いているので、あまり日本という設定ではなくなっているんです。ですので、そのようなパターンを狙うのはありだと思います。
 韓国は国内市場で食っていけないため、割り切っているのだと思います。

中島:彼らの強みだと思います。

夏野:本当に割り切っているのだと思います。
日本は中途半端に国内市場がそれなりにあるので、そこら辺が違いだと思います。

中島:日本はこれから少子化ですから。

夏野:本当ですね。時間の問題だと思います。

中島:僕は見たいですね。KADOKAWAが作った面白いドラマをNetflixでどんどんと。

夏野:過去作は結構出ていますね。

中島:いい作品が多いですからね。これからどんどんお願いします。

夏野:はい。頑張ります。

9割はリモートワークもう元には戻れない?!

司会:夏野さんはドワンゴの社長時代からいち早くSlackを導入されたり、コロナ禍においては在宅手当を月2万円を支給するなど、働き方改革には非常にアグレッシブに取り組まれていらっしゃいますが、業績への影響や社員からの反響はいかがでしょうか?

夏野:僕がやっていることは、世界的に見ると、アメリカの企業がやっていることとそれ程変わらないですから、今回良かったのは、コロナ前は中間管理職の方がリモートワーク等無理と言っていたが、仕方なくやってみたら、今はもう戻れませんという状態になっている。やはり、一日往復で2時間くらい無駄にしていたじゃないですか。準備を含めると、2~3時間くらい無駄にしていたわけじゃないですか。これから解放されたことで、我々の会社は絶対に前の状態には戻れない。オフィスに通うみたいなことはありえないという会社になった。

中島:本当にオフィスのデスクを無くすなどされていますか。

夏野:ドワンゴの方は机を無くしちゃいました。もちろん来た時に使えるようにフリーアドレスの席は用意した。ただしほとんどの社員は来ないです。固定席がいらないと言った人には月2万円の在宅手当を出すようにしたので、交通費もかからないからあげるよと言ったら、皆喜んで来なくなりました。

中島:KADOKAWAの方はどうですか。

夏野:ドワンゴは9割ほどだが、KADOWAKAの方は、75%程度となっている。編集者は編集や最後の校正の時にどうしても出なければいけない。それでも皆元には戻れないと言っています。

中島:素晴らしいですね。

これからの福利厚生

夏野:福利厚生についても、ホテルに安く泊まれるようなものは全て止めて、サブスクリプション手当にしました。Netflixやamazonプライム等のサービスを購読するのを月2,000円まで出すようにしたら、大好評です。

中島:そうすると、つまらない領収書の処理とか不要になるから、いいですね。

夏野:サブスクを皆に見てもらって、クリエイティビティを磨いて欲しいので、やっています。

何がヒットするかは出してみないとわからない!

中島:そうですよね。サブスクリプションはこれからのメディア戦略の出口じゃないですか。

夏野:本当にその通りです。「こんまり」とか見ていると、言語の問題ではなく、普通になり得るものもある訳です。先程のお話とは真逆にはなります。「こんまり」は凄いと思いますが、英語が全然できない不思議なアジア人というキャラであれだけの人が見ているのが凄いと思います。

中島:出してみないとわからないですね。結構前になるのですが、松田聖子や宇多田ヒカルが結構なお金をかけてアメリカでデビューしたのですが、全然売れなくて誰も知らなかったが、なぜかPUFFYがバカ売れした。だからやってみないとわからない。

夏野:出してみるというのは、すごく大事だと思いました。

オンライン会議はZOOM一択!!

司会:ここで、ニコニコ動画の視聴者より夏野さん宛にご質問を頂いております。
質問:「リモートワークに切り替えた際に大変だったことはありますか?」

夏野:いがいに大変だったことは無かったと思います。ひとつ思い出したのが、Google meetやciscoのWebexがとても使いにくく、zoom一択ということがわかりました。

中島:zoomの成功具合は面白いですよね。

夏野:大した違いは無いのですが、長く使っていると少しの違いが大きく感じます。あとは、安定性が全然違いますね。zoomは安定性が高く、低レイテンシーで良いですが、WebexとGoogle meet はどうしようもない感じ。それが一番困ったことでした。

中島:不思議だと思います。目の前にzoomがあって、彼らにも開発者がいるのだから、頑張ればよいのにできない。

夏野:いくらでもできると思います。Teamsに至っては本当に使いにくくてどうしようも無い。真似れば良いのに。簡単なことだと思うのですが。

中島:たぶん大変なのだと思います。

英語が話せるエンジニアには最高の時代

司会:続いては中島さんに質問が来ております。
質問:「勤め先のmmhmmのCEOでいらっしゃる、Phil Libin(フィル・リービン)さんがとある記事で金沢に住んでみたいと仰っていたそうですが、世界的にどこにいても働ける人材になっていくために必要な資質や条件はどのように考えているでしょうか。」

中島:今までであれば、近くに住んでいる人が有利であった部分が取り払われたので、生産性の問題になったと思います。特にソフトウェアエンジニアはソフトウェアが書けるかどうかだけだと思います。ただ、英語が話せないときついかもしれないです。なので、英語が話せるエンジニアにとっては最高の時代になったと感じます。
 Googleは、リモート勤務の方の給料を下げると言っているが、自分が勤めるmmhmmはそこ(勤務場所)の差別はしないと言っていて、どこに住んでいてもシリコンバレーの給料が出るので、日本の田舎等の物価の安いところに住んだら、べらぼうに得だと思います。結局どのようにしてリモートで働けるようになるかというと、ネット上のプレゼンスを増やしていくしかない。
 最近、Appleからリクルートが来たが、appleのAR/VR開発部門のトップを務めている方が、オープンソースで公開しているGitHubのソースコードを見て、雇いたいと言ってきた、ということがありました。面白いですよね。そのようなチャンスは今から、あらゆる人に巡ってくると思います。

自分に何ができるのかを知っている人が強い

司会:為になるお話をありがとうございました。
夏野さんは理想の働き方などはございますか。

夏野:僕自身はあまり理想の働き方というものは無いのですが、中島さんが仰っていることは、自分ができることは何というのを自分でしっかり分かっている人が強いのだと思います。もちろんですが、それが人に認められるくらいの力があるのが大事です。やはり皆が、自分は何ができるのかをあまり意識していない人が多いなと、日本の場合は特に感じます。だから、自分はこれができるというものをもっと前面に出して、そこを磨いていくキャリア設計をした方が良い。仕事は会社から与えられるものではなく、自分で選んでいくものなのだと意識を持っている人が世界中で何処にいても働ける人になるのだと思います。

努力を努力と思わない仕事をみつける

司会:ありがとうございます。
自分に何ができるかというところと、加えて今後は働き方に関して、AIの影響が出てくると考えられますが、中島さんのメルマガで、2021年はAIに仕事を奪われる最初の年になると大胆予測されていますが、そこについて詳しくお聞かせいただけないでしょうか。

中島:2021年が初めというわけではないですが、AIができることがどんどん増えているので、特に単純作業は人間から奪われていくわけです。企業としては生産効率を上げていきたいわけでして、できるだけ一人当たりの生産効率を上げるということは、簡単な仕事はコンピュータにさせて、人間にはクリエイティブなことをさせることになりますが、その場合はどうしても仕事の数は減ると考えています。
 そのような中でどうやって自分の良さを見せていくのかを考えたときに、自分にしかできないこと、自分が光るもの、自分が夢中になれるものをはっきりと把握している人が強いと考えています。
 特に私の場合はプログラミングが趣味ですが、私の場合はプログラミングに関することを勉強するのは苦でも何でもなく、夜遅く働いたり、朝4時に起きて働いたりするのは苦ではなく、楽しくてしょうがないのです。
 申し訳ないなと思うのは、僕みたいに楽しくてしょうがなくて仕事している人と、嫌々ながら、毎週土日を楽しみにしながらプログラムを書いている人を比べたら、僕の方が優秀なのは決まっているわけです。楽しんでやっているわけですから。そこは踏み違えてはいけないと思っています。
 日本は、苦しんでいるプログラマーが多いみたいです。特にゼネコン構成で下請けにいるような人達。やはり、プログラミングが楽しくないのに、上から落ちてくる仕様書通りにプログラムを書いているので、苦痛でしかないのがわかるので、そこでは働いてはいけないのではと思います。本当に夢中になって、努力を努力と思わない仕事を見つけてほしいなと思います。

終身雇用の終わり働き方をアップデートする

司会:ありがとうございます。私自身がプログラマーなので、心に刺さる思いで聞いておりました。
 それでは、本日最後の3つ目のテーマ「コロナとライフ」について、お話をお伺いしていきます。中島さんのメルマガで、大卒者の半分が定職に就けない時代が来ると書かれたことがありましたが、その点について詳しく教えていただけないでしょうか。

中島:大卒者の半分が定職に就けない時代というのは、既に現実になりつつあると考えています。特に日本の場合は正社員を絞って、なるべく派遣や有期雇用社員にしているので、今まで通り、大卒者が一度正社員として就職して、終身雇用で引退までという時代は終わりつつあると考えています。
 そのような中で、終わらせない部分もあるわけです。特に経団連の企業はなるべく終身雇用制度を終わらせたく無いので、そこにしがみついている人たち、それからそれを守ろうとしている労働組合がまとまって、全体の割合で見れば20~30%程度まで終身雇用制度にしがみつく割合は減ってくると考えています。そこで正社員になった人はいつまでも終身雇用を維持しつつ、会社としてはゾンビのように存続する。一方で、ほかの人たちの大半は、正社員になれない、正社員になったとしても、おおよそ3年くらいで転職するスタイルに変わっていくと思います。
 「日本の終身雇用が終わります。」と言われつつ、なかなか終わらないのは、終わりつつある部分と、終わらない部分の2つの世界があり、あるいは虐げられているフリーターや派遣の方達、正社員としてしがみついている人達、フリーランスで自由に働いている人達の3つの世界があって、混在している状況なので、その中で自分がどこにいるのか、ある程度意識した方が良いと思います。
 なんとなく正社員にならなくてはいけないではなく、正社員にならなくてもよくて自分はフリーランスとして頑張るとか、もしくは、ここの会社には入るが、ここは踏み台でしかなく、自分のキャリアパスとしてこういったものを目指すといった、今までの終身雇用時代とは違うキャリアパスを大学に通っている頃から意識しないといけない時代だなと考えています。

転職のタイミング

司会:ありがとうございます。
キャリアパスを考えていこうとなったときに、自分のやりたいことや、強みみたいなものを何処かで見つけていくのかなと思いますが、中島さんや夏野さんがご自身の経験から、自分の強みや、やりたいことを見つけたタイミングはございますか。

中島:私の場合はっきりわかったのは、大学院を出た後、NTTの研究所で働き始めたときでした。学生アルバイトとしてアスキーで働いていたとき、マイクロソフトも関わっていたので、NTTは違うな、NTTにいると終身雇用制で20年働くと年金が出るので皆それを頼りに働いているのですが、それは自分の人生として違うなと考え、マイクロソフトに行くのだとその時に気が付きました。24、25歳くらいの時です。それはとても良かったです。気が付いた上に、そこで転職が気軽にできたので、後から考えると、よい決断をしたなと思います。

司会:当時は転職などもしやすい時勢だったのでしょうか。

中島:その頃、転職は大変な時代でした。教授からはお叱りを受けるような大変な時代でした。

司会:そのような中で職を変えていって、それは間違いではなかったということですね。ありがとうございます。
 夏野さんは如何でしょうか。

夏野:私の場合は、アメリカの大学院に行った時にちょうどアメリカでインターネットが始まりつつあった時でした。それをきっかけに、私はこの道しか無いと考え、日本に帰った後ベンチャーを立ち上げましたが潰してしまい、酷い思いをしました。その後、仕方なくNTTドコモに入ったことから考えると、本当に自分の人生の選択が正しかったのか、自分ではわからないです。今でも正直わからないです。わからないですが、少なくとも、炎上もしつつも面白いと思ってくれる人もたくさんいて、支援してくれる人もたくさんいるという状況にあるということは、それなりに認めてくれている人もいるので、一応は人生として合っているのかなと感じます。

iモードは日本初のDX!

中島:ドコモのお話は聞きたいです。NTTとドコモは同じと考えています。

夏野:そこは違いました。あの頃は違ったのです。1992年にドコモという会社が分散させられた時は、移動通信がそんなにうまくいくと思っていなかったのです。その時にNTT本体の常務だった大星さんを追い出す名目で独立させた。NTTドコモ初代社長の大星さんはNTT本体の常務から出世競争に負けて、追い出されたのです。
 NTTの常務だったのに追い出されたから、「ここはNTTとは違う」と言って始めたのがNTTドコモです。社長を務めた後、会長になり、外部の講演に呼ばれるようになると、「私はNTTが大嫌いです」と外で平気で言っていた。さらに社長時代に一個だけやり残したことがある。それは、社名から「NTT」を取ることだ。というようなことを平気で言ってしまうような人でした。
 私がNTTドコモに行ったときに最初に社長に言われたことが、「NTTと一緒になるな。」「うちはNTTじゃないんだ。」「じゃないとお前は雇わない。」でした。

中島:ドコモで夏野さんがやられたことってすごいじゃないですか。結果オーライではなく、結果を知っていたわけでもなく、始める前ではありえない動きだと思います。なぜあのようなことができたのでしょうか。やらせてもらえたのでしょうか。

夏野:正直に申し上げると、あの時にインターネットをわかっている人が誰もいなかったのです。1997年にNTTドコモに入りましたが、この1997年は、楽天が無ければ、Amazonも参入していない。yahoo.co.jpも1996年4月にできたような時代で、NTTにもインターネットの技術者がいないのです。研究所には多少はいましたが、NTTドコモの中には誰もいなかったのです。そのような中、出身が文系の学部ですが、技術系の人事だと勘違いされて、技術系の人事にいました。

中島:今はDX(デジタル・トランスフォーメーション)が話題になっているじゃないですか。日本の企業はDXが出来ないと。いざDXをやろうとすると、どこかのITゼネコンを雇って、業務の一部をデジタル化するというつまらないことをしていると感じます。
 それに対して、iモードは日本初のDXだと思うのです。DX自体は、今まであるものを電子化することではないと思うのです。インターネットとかテクノロジーを活用して、新しい価値を提供する話じゃないですか。iモードはまさに旧態依然とした、NTTの子会社のドコモからあんなことができたというのはすごいことです。そこに今の日本のDXができないところのヒントになることがあると思うのです。

夏野:そういう意味では、まだ日本の企業が技術を持っていた時代だったというのがあると思うのです。通信の技術は、当時からモトローラやノキアやエリクソンが強かったのですが、アプリケーションの技術を持っていなかったのです。本当は、AppleやGoogleがやったことは日本のメーカーはできたはずなのです。ただ日本のメーカーはリスクを取らないので、そこでリスクをとる会社がたまたま出てきて、それがドコモだったのだと思います。

中島:でもそれは、アプリケーションだったし、エコシステムを作ってサードパーティにお願いしたじゃないですか。

夏野:それは、そういう発想で作っている。

中島:あれだけのことを旧態依然とした会社ができたのだから。

大企業さえ社長で変わる

夏野:思うのは、会社はドコモの場合は何万人と社員がいます。NTT全体では20万人位いますが、NTTドコモはグループ会社を含めるとおおよそ4万人くらいの社員がいます。4万人の会社でも、トップが誰かによって会社の雰囲気ががらりと変わるのです。初代社長の大星さんはベンチャー企業以上にベンチャー精神の人だったので、NTTとか、官僚的なことが大嫌いな人だった。これが2代目の社長は、少し違う意味で技術思考の人だった。そして、3代目は、、強いNTT型の人が社長になった。その瞬間に幹部の言動ががらりと変わっていった。。企業経営においてリーダー・トップの人が誰かというのが、会社全体の雰囲気に影響を与えるというのを、身にしみて感じました。それは、どうしようもない大企業であっても、急に社長が変わったら、会社が良くなるという話はよく聞くじゃないですか。そのようなことが本当に起こるのだと身に染みて感じました。

中島:iモードはすごく勿体なかったですね。

夏野:力不足ですみませんでした。

中島:でも、トップのお話は分かります。

夏野:ものすごく影響がありますね。その様なものだと身に染みてすごく感じました。
なので、良いトップであろうと頑張っています。

中島:良いと思います。やはり、年齢だけで決まらない部分だと思います。

リーダーの考えを伝える

夏野:何を大事にしているのかは、しっかりと伝えないといけないなとすごく気を付けていて、トップが何を大事にしているのかをしっかりと伝えないと、何をしたらよいのかがわからなくなります。なので、僕はクリエイティビティ、つまり過去と同じ事は絶対にやるなという話と、テクノロジーは使えるものは何でもフルで使えという話と、本気でそれにやる気があること。やる気が無いなら仕事を替わってくれという3つだけを大事にして欲しいというお話をずっと言い続けています。この3つさえやってくれれば、法に触れなければ何でも良いと言っています。それが少しずつ浸透していると感じています。

中島:大事だと思います。僕は、マイクロソフトが一番良い1990年代にいたのですが、その時はビルゲイツが何を考えているのかということを、皆が考えていました。それがうまくいくと、会社がうまく回り、出世もできるのです。ある時点で、僕自身がビルだったらこう考えるというのが分かるようになってきました。そうしたら、ものすごく仕事がしやすくなりました。相談しなくて良いですから。プログラムを書いていても、何か大きなことを自分で決めなければいけない場面で、昔ならば上司に尋ねるような場面が、ビルだったらこうするというのが分かると、相談もせずにやって、それが結果オーライになることが分かっているので、すごく仕事がしやすくなるのです。これが会社の中に生まれたら、ものすごい力になります。

夏野:まさに、iモードをやっていた時に、社長に聞きに行くことは何もなかったです。こうやれば褒められるというのがわかっていたので、どんどんやっていきました。工場に説明してもどうせわからない状態でした。それがトップとの信頼感だと思います。

中島:それがリーダーシップですね。ある意味、何を大切にしているのかが分かりやすいリーダーが良いと思います。わかりやすいのが夏野さんの強みだと思います。

夏野:分かりやす過ぎて、炎上してしまうんです。

中島:でも、特に自民党の上の方の人達は何を考えているのかわからない人達ばかりでは無いですか。

政治家の難しさ

夏野:政治家はリーダーではないので、面白いです。そのような政治家、例えば、大臣等になった時にどっちのタイプかが見えます。大臣になった時に得体のしれない政治家がいる一方で、大臣になった時に得体の知れる政治家もいます。例えば、河野さんは得体の知れる政治家のパターンです。

中島:僕は河野さん、好きです。とても分かりやすいと思います。河野さんを総理にしましょうよ。

夏野:ただ政治家として、旗色鮮明というのは、700人、800人いる国会議員の中で互選で選ばれるのが総理なので。また、国会議員はそれなりに選挙区で選ばれてきているので、皆が対等だと思っている。これはきついので、僕は政治家になれないと思います。

中島:やらない方が良いと思います。例えば菅さんは典型的で、ほんとに何考えているのかわからない人でしょ。

夏野:それが、面白いのですが、官僚に対しては何を考えているのか明確なのです。だから、内閣府の人間や官僚は結構、菅さんはやりやすいそうです。むしろ、安倍さんの方が何を考えているのかわからないそうです。だから、官僚が把握できているのは確かにそうで、明確なのです。政治家の場合、どうしても国民に対するメッセージ性で見られてしまうので、もう一方の側面で官僚組織の親玉なので、そのような意味では、官僚の使い方を良く分かっている。

中島:二面あるから難しいですね。

夏野:二面あるから難しいんですよ。

中島:最近、夏野さんは日本政府絡みの仕事をやられているじゃないですか。

夏野:そうですね。前から日本政府絡みの仕事をやっていますが、政権側の仕事と言うよりは、規制改革をやっていて、規制改革は独立委員会になります。だから、規制改革推進会議というのは二年単位の任期なので、政権が変わっても、野党になっても二年任期は一緒になります。独立しているので、よくネットでは政権寄りになっていると言われるが、決してそのようなことは無いです。規制改革は、どちらかと言えば官僚は嫌がる仕事ですから、このような役回りが来たら、やらなければいけないなと思う仕事だと思っています。

中島:そうですか。僕の場合は会議が長そうで嫌だなと思ってしまいます。

夏野:そうですね、会議は頻繁に開催しますし、本当にのらりくらりで、面従腹背とはこういうことかと思うことがたくさん起きますが、今回のコロナ禍で日本もドキュサイン(1)の話も1年間で一気に進みました。これは規制改革で「はんこ撲滅運動」をやり始めて、これがコロナで結構効いています。そういう意味では、緊急時ということに託けて前に進んでいるのは事実です。
(
)ドキュサイン(DocuSign)・・・180ヶ国以上で使われている電子署名サービス

日本は法律に沿ったビジネス(既得権益)ができる

中島:なんで日本は官僚が法律を作ってしまうのでしょうか。

夏野:議員でも作れるのですが、問題は官僚が正しく作る法律はあまり問題が無くて、問題は、一回作った法律を見直さない事なのです。だから時限立法がアメリカではよくあるのですが、5年で必ず見直すみたいな条項付きの法案が結構あるじゃないですか。本来なら、日本の法律はすべて時限立法すべきだと思っていて、5年間経ったら全面的に見直しみたいな条件をつけて通さないと、一回通った法律はその周りに色々な制度や外注先が付いてきますので、いじれなくなります。そっちが問題だと思います。

中島:日本は法律ができると必ず最適化されて企業、ビジネスが生まれるじゃないですか。

夏野:そうなんです。それが既得権益になってしまうので、動かしたくなくなるので、時限立法みたいにして、5年間で必ず見直しますとか、5年間経ったらもう一回法案通します。みたいにしておくと、だいぶ話が変わると思います。

中島:僕のところは親が結構な年なので、いわゆる老人ホームに入っているのですが、そこで学んだことは老人ホームのビジネスモデルが、介護保険のシステムに特化されているということです。あれは法律を変えない限り、今は10兆円くらいですが、どんどん増えて、とんでもない額になっていきます。あれは老人一人当たりをいかに介護保険の適用者にして、そのお金を吸い取るかという部分に特化されているではないですか?!

夏野:まさにその通りだと思います。

中島:あれは危ないですよ。冗談抜きで、10兆円が20兆円になり、40兆円になり、特に高齢化が進んでいくと、まずいと思います。

夏野:これは、厚生労働省が今までやってきたことは、まさに民間を活用して高齢者の介護を充実させることを実現させるために作ってきたわけで、それに特化するのが出てくるように設計されている訳です。

中島:でも彼らは、お金が欲しいがコストを掛けたくないので、介護保険から10万円位でるみたいですが、週に3回お風呂に入れてくれるという感じなのです。とんでもない税金の無駄使いをしているのです。

夏野:これはどうしようも無いです。そもそも最初に設計した時に、老人の比率が現在の状況になることは推測できても良いはずなのに推測していない。今の有権者を見ると、60代、70代、80代の投票率が異常に高いし、人口構成も多いので、そこに手をつけられない感じなのだと思います。

中島:破綻の道を歩んでいると思います。

経済学の実験

夏野:ただこれは恐ろしいことが起こっているのですが、マクロで見ると、60歳以上の個人金融資産が1,200兆円くらいあるのです。日本政府の公債、負債を全て含めると1,200兆円くらいあるので、そこでバランスが取れているのでそこまでは良いのですが、恐ろしいことが起こっています。今、企業の内部留保が460兆円くらいあるのですが、民間がお金を回せていない状態なので、マクロ経済で見ると政府がお金を回している状態になっています。政府がお金を回すためには、国債を発行しなければいけないので、国債を発行すると、民間がお金を回さない、個人が貯めているお金が国債を買っているので、日本経済全体で見ると、お金が回っている。しかし、民間企業経由ではなく、政府経由で回っているという状態なのです。なので恐ろしい形で、日本経済は破綻していないのです。

中島:そうですね。辻褄は合っていると思います。

夏野:だから、壮大な社会実験をやっている感じなのです。

中島:そうですね。普通だったら、ハイパーインフレになってもいいはずなのに、ならないと。

夏野:多少のインフレを目指しているのです。そうすると、国債の価値が相対的に下がるので、国民の老人たちが持っている金融資産も価値が減るので、皆がハッピーになるという考えです。言ってみれば、自然的に発生する徳政令みたいなことを狙っているわけです。2%のインフレ率を目指すというのは、まさにこういう事です。ところが民間でお金が回っていないので、物価が上がらないから、なかなかインフレにならない。なので、経済学の実験としては極めて面白いことが起こっています。

中島:アメリカでも最近は、デモクラット側の人が、日本の国債発行の仕方を見て、アメリカも真似しようという事を言い出している。

夏野:アメリカは貯蓄率が低いので、結局は国債を発行すると、買うのが日本と中国になってしまうのです。そうするとこれは、経済の危機に繋がるわけです。

中島:やめて欲しいですね。

夏野:国内で消化できないので、やはりこのパターンは取れないと思います。本当は辻褄を合わせるのであれば、相続税をものすごく高くすると、辻褄が合うのです。

中島:そうですね。みんな召し上げてしまえばですね。

夏野:ただその時に面白いのは、一億円位までは控除額にすると、8割、9割の人は、今までと同じように大して相続税を払わなくて良くて済むのですが、1割、2割の人がものすごい額を払うことになる。だから1億円の控除額にするといけると思います。

中島:日本は富裕層が最近はシンガポールに行ってしまっていませんか。

夏野:一昨年(2019年)の7月1日以降は、出国する時に課税されることになっているので、今はもうできないです。2019年6月末で出国ラッシュは終わりました。それ以降は出国して移す時点でその時の資産に課税されるようになりました。

中島:それはいい事ですね。出国となると悲しいですから。

集まった時は、仕事をせずに遊ぶ!

司会:今回の対談を視聴している方からの質問を頂いているので、そちらについても答えて頂きたいと思います。
夏野さんへの質問で、リモートワークでの新人採用は難しくないですか?

夏野:リモートワークでの採用は普通に行っております。唯一、びっくりするのは、リアルに会ってみたら、すごく背が高いことに驚いた。それがわからないことくらいです。背が高かろうが低かろうが、あまり影響がないので、新人採用は全てオンラインで完結しています。4月1日の入社式の時に初めてリアルに会うので、そういう時に意外にでかいと驚くことはあります。

中島:その後はリモートで働いてもらうのですか。

夏野:結局、リモートで働いてもらうことになるので、背が高かろうが、低かろうが関係無いです。

中島:うちの会社は基本すべてリモートなので、仕事はリモートとなるので、個人的には全然会わない訳です。なので、時々集まるのですが、集まったときは仕事をせずに遊び、せっかく一緒に過ごせるので、雑談して、食事して、ゲームして、家に帰ってから仕事をします。逆になりました。

社長の考え・発言が大切 社長の考えをよく聞く

司会:続いて頂いている質問です。
リーダーやトップはわかりやすいのがいいという話があったと思うのですが、今の会社の社長が去年変わったのですが、何をしたいのかがわかりません。その他、トップの気持ちが解るようになるには、どのようにしたら良いのでしょうか。経験を積むことでしょうか。
以上の様な質問が来ております。いかがでしょうか。

夏野:まず、何をしているのか解らないというのはどのようなレベルで言っているのか判らないので何とも言えないのですが、社長が何を考えているのかわからないというのは、どういう価値観を持っているのかわからないと言うこと、その下の人達は皆、疑心暗鬼になってくるのです。もしかしたらこのように思っているのかもしれない。いや、違うのかもしれない。それはものすごくコミュニケーション・ロスを生むので、あまり効果的に人を動かせていないという事になると思います。それから、トップのことが理解できるようになるにはどうしたらよいですか。という質問ですが、それが伝わっていない時点でトップが悪いので、下が何かする必要は無いと思います。

中島:大切なことはトップが言っていることを聞くことです。意外と頭の悪い人は、間にいっぱい居るので、上司と上司の上司が違うことを言うことがしばしばありますが、表向きは「はいはい」と言っておけば良くて、聞かなくて大丈夫です。トップの言うことだけ聞いていれば大丈夫です。マイクロソフトでもそのような経験を何度もしています。最悪の場合は、上の人をクビにしたことがあります。あまりにも変なことを言い出したら、上司の上司に、上司が言っていることがビルゲイツの言っている事と違うよと言えばしっかりと聞いてくれるので大丈夫です。それを聞かないような会社であれば、その会社を辞めた方が良いですが、変な人は飛ばして、トップの言うことを聞きましょう。

司会:夏野さんがあるあると頷いていましたが、実際に経験があるのでしょうか。

夏野:やっぱりあります。本当に面倒くさいですね。