Invent or Die 17 - 中島聡×夏野剛

内田:お二方はシンギュラリティソサエティを立ち上げられた二人ということで、久しぶりの対談らしいですね。

夏野:すみません。僕がサボってました。

内田:昨年の8月以来だそうですよ。

夏野:まじ?

中島:もっとじゃないですか?

内田:スタッフ情報ではそうなっています。なので、話もたくさんしたいこともあるんじゃないかなと思いますので、今日は色んなことで話してもらいたいと思いますが、今回のテーマは「ジャパンテクノロジー復活への道」という事でございます。お二人にバッサリ切られちゃいそうですけどね。一応、こんなテーマを準備しています。

また、サブタイトルも二つあるんだそうです。見えますかね。最近、この話題多いですね。「メタバースの時代は本当に来るのか」っていうのと、「テクノロジーの未来に日本は存在感を発揮できるのか」ということです。こちらもバッサリ切られちゃいそうですけど、お二人にもろもろお話を伺えたらと思っております。

夏野:僕は思うんですけど、そんなことを話している場合じゃないんじゃない。だって、本当にウクライナの状況は、日本の企業の未来がどうとか、そんなのんきなことを言ってる場合じゃないことになっていますよね。この21世紀の今、こういう状況を目にしなきゃいけないことになるとは、想像もしなかった。しかもこれが、企業経営にめちゃくちゃ関係があるんです。

明らかにプーチンは忖度の結果、情報があがってないじゃないですか。でも多くの日本企業もそうかもしれないし、もしかしたら海外企業もそうなんだけど、多くの経営者も疑似プーチン状態にあるんじゃないかと思うんです。だって、忖度している人は多いと思いますよ。という感じから始めたらどうでしょうか?中島さん。

中島:いいと思います。現実味がないのも確かだけど、でも例えばチェチェンが攻められた時とか、あまり気にしなかったじゃないですか。西側メディアは。

夏野:それは、今回こそインターネットの力が、大きかったなと思っていて、チェチェンの時は全然情報があがってこなかったわけです。それに対して今回は、ゼレンスキーがすごいっていうのもあるんだけど、4000万人の国家だと、いきなりインターネット回線を全部閉じるみたいなことができないし、またここでイーロン・マスクがかっこいいよね。
スターリンクをいきなり提供しちゃって、しかもいきなり通信機が全部届くみたいなことをやっちゃうわけなんだけど、この時代の違いもあると思うんです。だから、チェチェンの時との大きな違いは情報量。そこが今回面白いって言ったら、失礼なんだけど恐ろしい違いがここに生まれているなって感じはするんです。

中島:そうですよね。Twitterとかが出てきた時に最初の頃は、自分がやってることを実況中継できるっていうことを発見して、みんな喜んでやったじゃないですか。それが、まさか戦争で起こるとは思わなかったですよね。

夏野:そう。ただ、今回きつかったのは、ロシア軍が撤退した後の地域とかで、本当にリアルな死体の画像などが、どんどんソーシャルメディアにあがっているわけです。こういうことをプーチンは全く意識がなかったんでしょうね。プーチンが、SNSの威力を分かっているとはとても思えない。この裸の王さま的なことが、ものすごく今回起こっているなって感じがするんです。

中島:そうですよね。気持ちが悪いのが、この後どうなっていくかっていうのを考えた時に、かなりの可能性で、どのぐらいかかるか分かんないけど、プーチンがクーデターなりで倒れてっていうのが、多分7〜8割はあるじゃないですか。

夏野:ただ、それだと怖いですよね。核戦争っていう話が出てくる可能性もある。

中島:倒れる前に核戦争に走る可能性が、少なくとも1〜2%はあるような気がするわけです。

夏野:ありますね。

中島:その気持ち悪さと言ったらないですよね。

夏野:本当に。

中島:それで、こんなことしてる場合じゃないっていう話ですよね。

夏野:ということで、フェーズが変わっちゃったなって。この一年半ぐらいの間に、コロナで一旦フェーズが変わって、さらにこのウクライナ戦争でまたフェーズが一個変わったような感じがするんです。

中島:ウクライナって全く閉じてないですからね。

夏野:いや、恐ろしいことが起こっちゃったなっていう感じなんです。

■忖度が生み出している独裁者

中島:やっぱり独裁者は怖いですね、本当に。

夏野:ただ、独裁者も別に望んでなってるわけじゃなくて、周りの忖度でこうなってるっていうのが凄いなって思って。

中島:でも、そうしたら忖度をみんなでしてくれれば、プーチンは自分がやばいことに気がつかずに、ポンと殺されちゃうかもしれないです。それはいいんじゃないですか?

夏野:殺されるんですかね。

中島:忖度しなかったら、やばい、やばいっていう情報がもっとあがってきて、プーチンは危機感を持つわけじゃないですか。

夏野:そう。忖度する方がプーチンの死期を早めるみたい。

中島:ですよね。要は、危機感に煽られると窮鼠猫を噛むで核のボタン押しちゃうかもしれないから。

夏野:そういうことか。

中島:だから、忖度も悪くないかもしれないです。

夏野:悪くないんだ。でも、すごい話してますよね、本当に。

夏野:いや、恐ろしいことが起こってます。やっぱり、これは会員限定放送になってからやろうかな。今話すと、また炎上しそうだから。忖度については後で会員限定になった後にじっくり、「プーチンになっちゃいけない」っていう話をします。

中島:でも、そうですよね。忖度されちゃう立場じゃないですか、今。

夏野:だから、それが見える時の見えない時の違いをどうやって、見分けるかみたいなことを考えています。相手によって見えやすいやつと、見えにくいやつがいるんですよ。

中島:人じゃないですか、結局

夏野:そう。しかも、忖度する奴って信用できない奴がいるんです。

■コロナとウクライナ…連続して起きる世界史的事件

内田:でも私、今聞いてて思ったんですけど、コロナが出て、ウクライナ問題が起きたじゃないですか。こんなすごいことが、二回も立て続けにきたことなんて、今までなかったんじゃないですか?

夏野:歴史上はあるんです。

内田:そうなんですか。

夏野:歴史上は、山ほどあるんです。

内田:こんなに続けてくるもんなんだなと思って、それが時代なのかなって。

夏野:それは単なる確率論。

内田:偶然?

夏野:確率論の話です。

内田:そうなんですね。そこに不思議はないんですね。

夏野:ない。

内田:無い。わかりました。バッサリ。

夏野:戦争の間に大地震がくるだの、火山が噴火するだの、火山が噴火したから戦争が起こるだの、世界の歴史上は山ほどある。

内田:偶然?

夏野:偶然じゃないです。必然だったりします。火山で気候変動があって、地球が冷寒化したがゆえに、戦争が起こりやすくなって、食べ物が取れないようなことは、過去に山ほどある。

内田:話をちょっと変えてもいいですか?

夏野:はい、どうぞ戻してください。

■中島聡も参戦?ソフトウェアが戦争の形を変えた

内田:ウクライナ戦争の話をするんですけど、今回みたいな、戦争は本当に情報がすごく重要になっているじゃないですか。エンジニアにできることって、すごく多いのかなと思ったりしたんですけど、その辺お二人から見たらどうなんですか?

中島:今一個、ボランティアのエンジニアがロシアのサーバーを攻撃するっていうのが始まってます。あれは結構面白いかも。僕もやろうかなと思って、一応グループには入ったんですけど、とりあえずそのグループには、このサーバーを叩けみたいな。ただ単にサーバーのURLと、IPアドレスだけが送られてくる非常に不思議なグループがあるんです。

内田:送られてきて、それでみんなで攻めていくんですか?

中島:それなりに自分で考えた方式で、サーバーにアタックする。

内田:そういうやり方があるんですね。私からだと、全然訳わかんない感じなんですけど。

夏野:僕は今までの歴史上、ソフトウェアのエンジニア、つまり、エンジニアっていうと、今はシステムエンジニアとか、コードを書ける人をエンジニアって言うイメージが強いんだけど、そもそもはハードエンジニアが主体で、特に戦争においては、ハードエンジニアが重要だったんですけど、今回の戦争は完全にソフトウェアエンジニアがものすごく重要になっている戦争だなという風に思います。

特に、兵器の種類も、ハードエンジニアが得意な戦車とか、こういうものが、どちらかというとソフトウェア的な、つまり画像認識に基づいて、上から落ちて攻撃するジャベリンとかって、どちらかというとソフトの勝利だと思うんです。そういうソフトウェアエンジニアが主力になってしまった戦争が今回起きていて、それは今の現代兵器ではソフトウェアが重要だということもあるんです。

もう一つすごいのは、エンジニアだけじゃなく情報戦に関しても、例えばウクライナコントロールマップっていうのがあるんですけど、これはSNSに発信された情報に基づいて、今、戦況がどうなっているのかっていうのを、Googleマップ上に落としているマップなんですけど、きわめて正確に、今現在ウクライナの戦闘状況がどうなっているのかっていうのを、世界中に公表しちゃっているわけです。

情報機関でも何でもない人達が、こういう情報を提供できる戦争っていうのが、僕は初めてだったので、そういう意味では、これからの戦争のあり方を、本当に塗り替えてしまうような衝撃的な戦争に、このウクライナ戦争はなっているなという感じがします。

中島:そもそも、一企業であるスペースXが片側に協力するとか、あり得ない話ですよね。

夏野:びっくりします。

中島:Twitterで依頼が来たんですよね。

夏野:いきなりTwitterで依頼が来た後に、何日か後にいきなりウクライナ政府に通信機が届くっていうのがすごいですよね。

中島:あり得ないですよね。

夏野:あり得ないこと。ただこの回線が維持できているということで、経由地は分からないけども、例えばマリウポリから上がってくる映像って大部分がスターリンクなんじゃないですかね。インターネット回線は落ちているはずだからね。

中島:周りを塞がれちゃったらダメですもんね。

夏野:恐ろしい時代の進化が、しかもこのロシア軍のついていけなさ感が、ものすごい日本企業に通じるものがあって、時代が変わっているのに、いまだに戦車でやっているの?みたいな感じが、やばいです。

内田:本当に軍事大国なのかなって思っちゃいましたけどね、映像とか見て。

夏野:でも、今までの軍事力っていうのは、戦車の台数とか、持ってる飛行機の機数とか、核弾頭の数とか、兵士の人数とか、そういったもので測っていたので、ロシア軍は強大なんです。

内田:数だけなら。

夏野:ただ、占領戦と、守る方、攻防戦っていうか、防戦って全然違うので、そういう意味では、そこの違いは勿論あると思います。

内田:世界中から個人が参加できる戦争って感じのイメージがあって、戦争のイメージが変わります。色んな所で多発してもおかしくないんじゃないかって、怖さを感じますけどね。色んな形の争い。

■情報網が戦争の抑止力になる時代がやってきた

夏野:いや、逆じゃないですかね。この情報網が抑止力になる時代が来てる感じが僕はしますけどね。つまり、偽旗作戦もそうだし、それから残虐な行為とかもそうなんですけど、今まではバレないから前線でやったことは相手のせいにして、またさらに攻め込むみたいな、20世紀の戦い方が、まだ通用すると思ってたロシア軍に対して、情報がどんどん伝わることによって、彼らも窮地に追い込まれるわけです。

しかも、電波が通じなくなっちゃったから、携帯電話で自分の母親との会話が傍受されるみたいな、めちゃくちゃ。第二次大戦かこれは、みたいな事が結構起っちゃっていて、要はこれって完全に情報戦争にロシアがついていけてないっていうことですよね。そういう通信機器も整備してないし、この新しい時代に全く対応できてない。だから、本当に敗戦直前の日本軍みたいな状況に、今のロシア軍は陥っている感じがすごくします。

■本当に怖いのはソフトウェアでも強い中国

中島:そうですよね。それで思うのは、じゃあロシアでよかったなとは思います。この後、中国がこういうことになったら大変ですよね。彼らはどんどんソフトウェアが強くなってるじゃないですか。

僕、少し前にアメリカのシンクタンクが対中国の防衛の話をまじめにしている会議に出たことがあるんですけど、その時にその人達が、要はアメリカ政府の要人とか、そこから雇われたシンクタンクの人達が、本気で、アメリカ各地にいる中国人が、例えば、Googleで働いている中国人だったり、スタンフォードで教授をしている中国人とかが、いざとなったらアメリカを裏切る可能性があるから、準備した方が良いって本気で言ってるんです。

怖いでしょう?それって、普通ありえないじゃないですか。中国からアメリカにほぼ帰化して、Googleで働いてる人は幸せなんだから、中国を応援するはずがないですよね。多分、大半の人がそんなことはないんだけど、でも今何十万人といるわけで、そのうちの5%でも実はスパイだったとか、あとからスパイになりましたとかなると、アメリカ国内はグタグタになりますから、それは結構本気で心配しているみたいです、彼らは。

夏野:だから、そこがまたアメリカの弱さですよ。だって、本当にスパイにするんだったら、そんな判りやすい中国系の人をスパイにする訳ないじゃないですか。それって第二次大戦中に日系の移民を強制収容所にやったのと同じ。むしろ、全然関係ないところ、全然関係ないWASPの人間を金で買収した方が絶対いいですよね。バレないから。

それはトランプ以来の馬鹿さ加減なんだけど、それってどこの国にもありますよね。日本の政治家でも、本当に馬鹿じゃないのっていう発言を、大真面目にしてる人がやっぱりいっぱいいるから、それはロールプレイな感じがします。アホな選挙民に向けてのロールプレイな感じがします。そんなわかりやすいことしないでしょう。

中島:ちなみに、イーロン・マスク、今度テスラ側でもやったんです。ウクライナってソフトウェアエンジニアでいい人たちがいて、テスラで働いているウクライナ人が国のために戦うんだったら三ヶ月間有給休暇をあげるっていうアナウンスをしたんですよ。

夏野:でも、三ヶ月は短いですね。

中島:確かに三ヶ月は短いです。三ヶ月で勝てるかっていう問題はある。

夏野:行くのに二週間くらいかかるし、帰ってくるのに二週間ぐらいかかる。正味二ヶ月か。

中島:でも、戦争休暇を出すっていう。

夏野:ちょっといいですね。

中島:いいですよね。だから、やっぱり決断の速さはすごいですよね、あの会社は。

■戦争も企業も「忖度」が組織を滅ぼす

夏野:中国の話なんですけど、やっぱり中国はそういうエンジニア力もあるから怖いんですけど、でも中国ほど忖度の国はどこにもないんです。だからやっぱり、本当の事が本当の形で伝わらない時にリーダーが謝るって、これは戦争中の日本もそうじゃないですか。前線はボロボロに負けてんのに、いい情報しか言わないとか、今回のロシアもそうだけど。

でもよくよく考えると、昔の戦争って全部それで負けるんです。だから中国は、中国の怖さっていうのはやっぱり忖度。この忖度っていうのが、組織を滅ぼすっていうのが、この日本の低い忖度のレベルから、この高度な軍事的な忖度まで至る、この人間の忖度が組織力を壊すっていう、これを見てるような感じがしていて、今めちゃめちゃ習近平は学んでる感じがするんです。

中島:でも、面白いですよね。じゃあ、忖度をできない、もしくは忖度しようとしたら分かってしまうような組織作りはどうしたらいいのかっていうのは、会社でも国でも大事な話になってきますよね。

夏野:そう、そこですよ。まだ、会員限定じゃないからまだ言わないですけど(笑)。

内田:なので、ここからは有料にしようと思います。その方が、より深い話が出てくるんじゃないかと思います。皆さん、ここからは会員限定ということになります。

内田:なので、有料にさせていただきます。会員限定にさせていただきます。それぞれのサービスで、ぜひ会員登録をお願いします。ただし、シンギュラリティー・ソサエティと、シンギュラリティーラボの会員の皆様は、そのままご視聴いただけます。それでは会員限定になります。

夏野:やっぱり、日本の企業に限らず、中島さんがいた時は違うかもしれないけど、その後のマイクロソフトなんて忖度の塊みたいな会社じゃないですか。少なくとも日本法人はそうなんです。外資系の会社って、やっぱり国外で起きてることってよくわからないんで、そうするとシアトルへの忖度とか、シリコンバレーの忖度とかができるやつがやっぱり出世するんですよね?

ということで、やっぱり忖度っていうのが、組織力を壊すっていうのは、軍隊の歴史もそうだし、企業の歴史もそうじゃないかと思う。名経営者と言われる人ほど、僕は忖度に惑わされているんじゃないかと思います。

■日本の大企業で行われている日常的な「忖度」

中島:でも、僕も同じことを考えてたことがあって、忖度っていう言葉じゃなくて、例えば、ソニーの中にバイオグループがあって、パソコンの事業をやってた時の話を思い出すと、結局パソコン業界に詳しい人はパソコン事業部にしかいないので、パソコン事業を続けてもやばいっていう情報は上がらないんです。それはしょうがないんじゃないかなと。自分たちの首を切られるか、もしくは自分たちの下をリストラされるかもしれないと思うと、その業界に詳しい人が悪いニュースを上に上げないっていうのは。ことごとく起こっているような気がして。

夏野:例えば、トヨタの車なんて面白くない車ばっかりじゃないですか。それは、ユーザーインターフェースに携わっている人とか、それからテクノロジーとかに関心がある人だったら、みんな当たり前に思っていることなんです。トヨタの車が悪いって言っているんじゃなくて、トヨタはそういうことを守ってるんだろうと思ってるわけです。
それがトヨタの強みだと思ってやってるんだろうって思ってたら、最近のCMとか見ると、どう見てもこの豊田社長は自分の会社がそういう会社と見られているし、そこが強みだってこと分かってないんじゃないかなっていう気がする。

中島:いや、難しいですよね。でもあの会社はそれこそ本当に。

夏野:でも、それは似たようなことが、他の会社にも言えるんじゃないかと思ってて、例えばGoogleの経営者は、アンドロイドがあんなにつまんないOSだってことを理解してないんじゃないかと思うんです。そんなこと誰も挙げてこないから。ジョブスだって、Appleだって、Appleがつまんないって、iOSがクソだみたいなことを言う奴がいなかったかもしんないけど、でも明らかにiOSと比べると、僕はアンドロイドはやっぱりつまらないOSだと思うんです。
操作感が悪い。でも、一向に改善されないなと思っていたら、これはやっぱり経営者に誰もそんなこと言わないんだと思うんです、みたいな話。

これが、だから僕も最近、一生懸命会社の為に色々やっているんだけど、最近あえて5年目の社員とか、10年目の社員とかと個別にズームミーティングとかやるようにして、何か俺は間違ってないか、っていうのを、あえて聞くようにしてるんです。聞くと出てくるんです。だけど、直下の役員連中からは一切出てこないんです。忖度されてるかもとか思ってすごい危機感を抱いた、自分にも。

中島:これは確かに有料でしか話さない方がいいかもね(笑)。でも、確かにそう。それは嫌ですよね、自分が裸の王様になっちゃうのはね。

もしトヨタの話にに関心がある人がいたら『トヨトミの野望』っていう本を是非読んでください。あそこに真実が書かれてますので。

中島:私は、会社を売っちゃったから言えるけど、前に経営してた会社では、トヨタさんが一番大きなお客さんだったから、結構偉い人と話してたけど、本当にソフトウェアのことが分かってなかったんです。でも、うちはソフトウェア納入している立場だったのもあり、あまり言えないです。

本当にトヨタのこと思うんだったら、うちに頼まずに内製しろですよね。もしくは、僕を雇えって話ですよね。でもそういうことは言えない。だって、こっちは売上かかってるから。デンソーとかだってそうじゃないですか。本当にトヨタから降りてくる仕事で生きている会社とかがいっぱいあるので、みんなで持ち上げながら、難しいです。あれは、直らないです。

夏野:やっぱり僕は、Appleとか、スティーブ・ジョブスとかイーロン・マスクとかがすごいなと思うのは、そこに頼ろうとは思ってなくて、別に批判を受けても関係ねえ、批判があるのが当たり前だと思っている。それにトヨタもそうだし、日本の企業の経営者って、みんな批判があっちゃいけないみたいなことを思うから、直下の人たちが、あー批判は受けてません、大丈夫ですみたいな情報をあげて。

でもプーチンも似てるような気がするんです。ああ、プーチンさんがやってること大丈夫ですと言い続けてチェチェンも大丈夫だし、ジョージアも大丈夫ですから、ウクライナも大丈夫ですって言ったら、こんなことになっちゃって。

だから、自分も同じ状況になっている感じがして、プーチンになっちゃいけないっていうのは、この一カ月位、別にプーチンさんみたいな御殿を作れないし、権力も持てないけど、規模も1億何千万人の国民の頂点と、7,000人の会社の社長じゃ何とも言えないけど、しかし思いました。忖度はやばい。

中島:確かに、マイクロソフトの場合、ビル・ゲイツとスティーブ・バルマーは、その面で随分違いましたよね。ビル・ゲイツがやってた時は、やっぱりビルはすごい細かいとこまで踏み込んでくるし、騙されないんです。技術的に強いから。だけど、スティーブバルマーになったら、技術の事は下に任せるようになっちゃったから、情報は上がらなくなったでしょうね。だから、2000年代の10年ぐらい駄目だったのはそのせいでした。

夏野:だから、この危険性っていうのはリーダーに立つかもしれない人は、みんなやっぱりどこかで意識しておいた方がいいかもしれない。

中島:それを言ったら、日本の政治なんて、それこそ霞が関が、政治家に向かって全部忖度してるから。

■実は官僚から忖度されていない政治家たち

夏野:これは今、僕も規制改革の中に入ってみてわかったことがあって、政治家は、きついですよ。大臣になってるけど、大臣から外れたら、一切忖度されないからね。後ろになんとか族とか持ってると、まだ忖度されたりとか、権力を誇示し続けないと、官僚はあっという間に忘れちゃうんです。

僕もこの規制改革の仕事を、何年間かやってすごく思うことは、官僚の忖度は本当に短期的な忖度だということです。しかも、命まで取られると思ってない忖度です。どういうことかというと、末端までは忖度しないんです。今現実に、例えば官邸から目が届くエリアの官僚。つまり言わば、各省庁で言えば審議官以上、局長以上には忖度するんだけど、その下は一切忖度しないです。だって、目が届かないから、みたいな話がある。しかも、官僚もすごくて、どうせこいつ一年しかいねえだろうなとかいうのを、すごく見ているの。

民間企業の忖度の方が生命線を握られちゃってるじゃないですか。民間企業って。特に日本企業の場合、終身雇用だと思っている人が多いので、アメリカの企業だったら別にそれで合わなきゃ辞めちゃえばいいんだけど、日本の企業の場合は、そこでこの会社で生きられなくなっちゃったら、俺は終わり、みたいなやつが多いから、だから、官僚よりも民間企業の方が忖度がきついっていうのは、僕のこの2年、3年ぐらいの規制改革で、かなり官僚とダイレクトに付き合い、なおかつ、かなり政権の中枢に近い所にいて思うことです。

中島:でも、官僚の忖度の仕方っていうのは、要は本当に気に入られようとしてるんじゃなくて、コントロールしようとして忖度するわけじゃないですか。

夏野:一部の上級者はそうなんですけど、その下では忖度っていっても、とりあえずこれぐらいにしといたらいいかなってあんまり意識ないです。

中島:でもそうすると、日本の国を動かしてるのは誰なんだっていうのはね。

夏野:これは、アメリカの国を動かしてるのは誰なんだって言っても、あんまりよくわかんないのと同じです。

内田:コメントに、話そろそろ変えましょうかっていう。

夏野:忖度はよくないっていう話でした。以上です。

■日本のソフトがいけてない理由はどこにあるのか?

内田:中島さんに、質問が入りました。一般のソフトはなぜイケてないか、中島さんに解説してほしい、っていうのが入りました。

中島:日本のエンジニアを見ると、別に全然できる人はできるので、構造的な問題だと思います。大きなことをやる会社に、大きく張ってくるVCがいないとか、あとはやっぱり割と、日本市場ってそれなりに大きさがあるので、ちょっと成功したらすぐ上場しちゃうとか。

mixiが物凄いいい例で、mixiってFacebookより遥か先にすごく素晴らしいソーシャルネットワークを作ってたのに、こじんまりして終わっちゃったのは、日本で上場したからです。早めに黒字化しなきゃいけなくなっちゃって、海外に出ていけない時に、Facebookが赤字垂れ流しで、莫大な赤字垂れ流しで、お金を使って世界市場とりにいっちゃったから、そこの差じゃないですか。
別にmixiのソフトがFacebookより悪かったなんてことは全然なくて、エンジニアも負けてなくて、ただ早めに上場しちゃうとか、そういうリスクを張ったVCの大きなお金がないとか、その辺じゃないですか。

内田:本当だったら海外を目指すべきなんですかね。そうすると海外の上場だったり、もし上場するんだとするならば。

中島:日本市場が妙な大きさを持っているのがいけないんです。映画とかもそうじゃないですか。映画とかは、カドカワさんは映画を作ってるけど、日本市場で成功すれば元は取れちゃうぐらいの規模があるので、海外に行く必要ないんです。

内田:そこでビジネスになっちゃうんですね。

中島:それがこじんまりと終わる。韓国は小さいから逆に、世界で成功するしかないみたいに頑張ってるから、ああやって伸びてる。Kpopもそうだし。

夏野:確かに。

■千載一遇のチャンス!字幕付き映画を見るようになったアメリカ

夏野:今、千載一遇のチャンスが訪れてきて、今恐ろしいことが起こっているんです。何が起こってるかって言うと、あのアメリカ人が、歴史上ありえないことが起こっていて、字幕付きで映画を観たり、アニメを見たりすることが苦にならなくなっちゃったんです。コロナのおかげで。

アメリカのマーケットは3億人以上いるわけです。ここが一番、大きい市場なんです。このコンテンツにおいては。もちろん、アジアとか中国とかもあるんだけど、でもやっぱりアメリカの市場って大きいんだけど、やっぱりここは英語圏の市場だったんです。
これがやっぱり韓国の映画がでてきたとか、ネットフリックスとかアマゾンプライムが出てきて、ネットフリックスとかアマゾンプライムって別に吹き替えも用意してたけど、みんな字幕で言語で映画とかドラマを見るって、別にいいじゃんって、いきなりなっちゃったんです。この2年間で、本当に変わりました。

中島:そのあたりのことは僕も感じますよ。アメリカに住んでるとすごく。

夏野:そうですよね。アメリカがいきなりインターナショナル、グローバリゼーションに目覚めた。あのドメスティックなアメリカが。これは、日本のコンテンツ業界にとっては、ものすごいチャンスです。

内田:映画もそうだし、ドラマとか、アニメ。

夏野:コミックもラノベも、今バーンズ・アンド・ノーブルに行くと、異世界っていうコーナーがあるんです。「異世界」ですよ。異世界という日本語が英語になっているんです。しかも、バーンズ・アンド・ノーブルですよ。マジかって。

■Facebookのメタバースがまったくいけていない理由

中島:メタバースね。

内田:メタバース、そうです。本当にこういう時代がくるのかって、いって。

中島:僕、2つ意見があって、Facebookが言うメタバースは来ないと思うんです。一つのメタバースがあって、Facebookが運営する。そこに色んなコンテンツが提供されて、人が。例えば、一つのコンテンツで買った洋服を持って別のコンテンツに行くみたいなのって、やっぱり世界観が壊れるからあり得ないと思っていて、それよりも、もっとマルチバース的に、それぞれのコンテンツの中に、バーチャル空間があって、それぞれがビジネスとして成り立っている中で、人それぞれ選ぶという。

確かに、それが何の世界でもいいです。ファイナルファンタジーでもいいし、フォートナイトでもいいけど、そこで大半の時間、一日の大半の時間を過ごす人が出るっていうのは、すでに起こりつつあるし、その延長上にあるのが、要はマルチバースなんじゃないかなと僕は思ってるんですけどね。

でも、やっぱりコンテンツが大事だと思わないですか?世界観。

夏野:僕は、本当に中島さんが今言ったように、メタバースって、フォートナイトとか、あつ森じゃん。そこの世界観に没頭して、その世界の中で演じていれば、それでメタバースじゃん、すでに。だから、マーク・ザッカーバーグのプレゼンは史上最大に残るバカプレゼンだったなという風に思っていて、だって、メタバースの中の自分のアバターと、自分が喋ったらメタバースじゃないじゃん。勘違いしている。

元々、発想されたものを発想した人だから、ああいうことを言うんだろうなと思うけど、僕は情けないとい。やっぱり最大の問題は、ヘッドマウントディスプレイなんです。ヘッドマウントディスプレイをずっとつけたまんま何時間いられますか。物理的な障害を超えられない以上、ユーザーインターフェースは別にスマホでも、あるいはニンテンドースイッチでも、なんでもいいんです。没入感があれば、それでもうメタバースと認知ができる。

あとはやっぱり電脳通信的な、要はテクノロジーの進化によって、脳波との同期がされる電脳通信、脳内通信的なことができた時に、よりその世界観が深まっていくという感じが僕もしている。
中島さんが仰っている通り、今の難解なユーザーインターフェースだと、本当に一つの世界、Facebookの世界観で全てのメタバースが実現できるなんてことは難しくて、やっぱり各カルチャーの文化間の中での、一つ一つのマルチメタバースみたいなことが起こっていて、それが技術の進化によって、HMDとかがいらなくなってきた時に、もっと進化するみたいな話なんだろうなと、僕も思ってます。
だから、現時点のテクノロジーを持って、Facebookはメタバースになりますって言っちゃえるっていうのは、よっぽど周りの奴らがみんな忖度してんだろうなあって思いました。

中島:僕もすごく思いました。あれは、本当に忖度されまくりです、きっと。それで、メタバースに関して言うと、僕はやっぱりコンテンツの力で、そろそろ映画とかゲームの作り方を、もう少し最初からちゃんと両方いっぺんに作るべきじゃないかなと思ってるんです。

今って、例えばスターウォーズっていう映画をお金かけて作って、それをゲーム化してるじゃん。それってもったいないと思っていて、僕なんかから見ると、例えばスターウォーズは映画は大好きだけど、そこの世界に自分が入ってきたいと思うんです。
それも映画公開と同時に。だから、映画を作る時は、3D空間を作るために、ものすごくお金をかけるわけで、最初からそれはメタバース的にユーザーが自由に歩き回れる空間にしようと思って映画を設計すれば、そういう作り方で映画を作り、映画が出た瞬間にその世界に入って遊べるゲームを同時に出す。
ゲームもシナリオとかなくて、本当に自由に歩き回れるぐらいのゆるいものでよくて、その中で自分が映画を見て感動したシーンに行って遊ぶとか、友達とその中でスターウォーズごっこをするとか、そういう今までと違う、もっとディズニーランドに近いようなゲームを作って欲しいなってすごい思うんですよ。

夏野:でも、僕はそれが一番良くできていたのはXboxだと思うんです。Xboxのキネクトが出てきた時に、スターウォーズのゲームがあったんですけど、まさにその感覚で、まさにライトセーバーを持って、敵をやたら切っていくんですけど、そこにクローン兵が現れて、あれがやっぱりその世界観に一番近かったなって、でも残念ながらキネクトは止めちゃったからね。

中島:でもあれは、眼鏡かけなくていいからいいですよね。

夏野:そうなんですよ。HMDを掛けなくていいからよかった。実はあれ、お酒を飲んで酔っ払ってやったら最高に面白いですよ(笑)。キネクトは最高でした。残念です。

内田:コメントに「RPGだったら、日本の世界観が一番な気がしますが、そういった強みの延長線上で仮想空間は行けないでしょうか?」っていうコメントです。

夏野:だから、ドラクエオンラインは仮想空間なんです。ただ、インターフェースがどれだけ没入感がちゃんと提供できるかっていうと、あまり提供できていないから、それを補うために世界観でキャッチしていくわけです。世界観とか哲学とか。だからドラクエをやってた人は、ドラクエオンラインの中で。

N高では、ドラクエオンラインの中の遠足っていうのをやってるんですけど、これは、ドラクエをやったことない人が行っても、あんまりおもしろくないわけです。ドラクエをやった人が行くから、ドラクエオンラインの中の先生に引率された遠足が楽しめるわけです。
これは、世界観で補っているわけです。今のところHMDをつけてみんなでやりましょうっていうのは、一部限定的にやるのは短時間はいけるんだけど、じゃあ2時間やりましょうっていう難しいので、だからやっぱり世界観、さっき中島さんが仰っていたマルチバースみたいな、つまり、世界観がはっきりしてて、そこにある程度の共感性がある人たちだけが集まっていることによって、テクノロジーの不足を補っている。

あつ森だってそうです。っていうことだと思います。だから、テクノロジーはもっと進化しないとダメで、「ザッカーバーグはカドカワに比べりゃ相当の価値がある」とか、めちゃくちゃニコニコで書かれてるんだけど、だったらテクノロジーの脳内通信とかに投資すべきで、あんな記者会見やって、自分のアバターと自分が会話するって、これ最悪だから。これは、没入感の大否定なので。だって自分のアバターが、自分がそこにいて、自分と会話したら没入できないじゃん。あのプレゼンは、俺は最悪だと思います。

内田:「ザッカーバーグは数年後にメタという言葉の定義を変えて、あの演説はなかったことにする気がします」ってコメントが入ってきました。

夏野:その頃には、誰も彼の言うことを聞かなくなると思いますよ。元々何やったのっていうのがよくわかんないから。何か知りたい人がいたら、『ソーシャルネットワーク』っていう映画を見てください。ほとんど真実です。

■自動運転技術の進化でエンターテインメントは変わるのか?

内田:「EV化と、それに続く自動運転技術の進化によって、社会のエンターテインメントの大変革が起こりますか?」っていう質問も入ってますけど。

夏野:EV化?車の話?

内田:車ですね。EV化とそれに続く自動運転技術の進化によって、社会のエンターテインメントの大変革が起こりますか?っていう。

夏野:すでに、テスラの自動運転をオンにしたまま、DVDを見ててトラックに衝突して死んだ人が出てきた。だからやめましょうっていう話です。まだこのレベルで。

中島:でも、全自動になれば、別に自動車に乗ってるのじゃなくカラオケボックスみたいなもんだから、本当にゲームしたり、カラオケ歌ったり、なんだったら、お酒飲みながらっていうのができるじゃないですか。

夏野:ただ、それは運転手以外は既にやってる世界だから、あまり大きな衝撃じゃない。ドライバーだけの話じゃん、今の話って。別にうちの子供達、後ろでみんなで歌ってるよ。

中島:ドライバーも歌えるようになるって言うか、ドライバーがいない。

夏野:でもそれ、4分の1の話だからさ。あまりテクノロジーの大進化みたいな大した話の感じじゃない。最初から運転手を別にしておけばみたいな話に尽きる。よくアメリカの映画とかで出てくるじゃん。リムジンをチャーターして運転手をお願いして、それで後ろの席にみんなで宴会やっているのって、いつもあるからさ、別にそれは今ないドリームの話じゃないから、あまり壮大な夢って感じはしないな。EVなどなんだのって。

内田:AR機能を内蔵したコンタクトレンズのプロトタイプができたみたいですねって。

夏野:これは、面白いんだけど、マイクロソフトのホロレンズが、アメリカの陸軍に、大量採用されたっていう話と同じで、別にコンタクトはさらに技術が進化すればそうなんだけど、ホロレンズって面白いなあと思っているのは、まさにHMDじゃないんだよね。要はメガネをかけると、ここに。これってここに色んな情報が出てくるわけですけど、これってすでにアメリカの戦闘機は全部そうなっているんです。アメリカの戦闘機って、既に自分の視界の範囲内は全部ガラスのパネルがあって、そこにあらゆるデータが照射されるので、完全にARなんです。

さらに陸軍の、つまり歩兵のレベルでもそれができるようになってホロレンズを使ってレンズ上に情報が出てきて、パッと見た時に、これはロシア軍の○○という戦車で、装甲が何ミリとか出てくるから、それに基づいて判断して撃つって話でしょ。これは、歩兵の能力を上げると思ってたら、それどころじゃなくなっちゃった。
今回のウクライナ紛争で、一番活躍したのはドローンと、ジャベリン。自動追尾のロケットを打っちゃえば、別に歩兵がホロレンズで情報を見てなくてもいいじゃんっていう世界が現実化したので、多分ホロレンズのあれは中止になると思います。

中島:マイクロソフトも、前から辞めるとアナウンスしている。

夏野:辞めるの?ちょっと残念だなって思うんですよね。僕的にはホロレンズで全ての歩兵がここに、ちゃんとぱっと見ると情報が出るって、アイアンマン的でよくないですか。

中島:ドラゴンボールのスカウターですよね。

夏野:そうそう。無敵の兵士みたいにね。でも兵士がいらなかったんだみたいな話なので、ホロレンズは、一方で航空会社の整備士とかが結構使っている。それはそれで平和なところで使ってもらえばいいなと思っています。ホロレンズ的なものをやっているのが、今マイクロソフトしかないっていうのも不思議だなーって思って、HMDよりもホロレンズみたいなARグラスだと思うんです。

中島:Appleがやってるでしょ。

夏野:Appleがやってるんですか?

中島:いつ出るかの問題ですよね。

夏野:Appleがやっているんだったら、もうちょっとおしゃれなのが出てくるかもしれないね。楽しみです。

中島:でも、確かにVRをずっとしてるって無理ですよね。

夏野:そうなんです。だからこの間、『未踏事業』で今年の未踏のクリエーターが、寝たきりVRっていうのを開発して。

中島:いいじゃないですか。

夏野:VRはやっぱそうだよな。寝たきりだよな。寝たきりだと、色々制約条件が違うんです。

中島:でもね、老人いっぱい居るし。

夏野:だから、寝たきりVRっていうのを開発して、これなかなか素晴らしい発表してましたけど、こっち方面にいった方がいいような気がする。昔、『サロゲート』っていう、ブルース・ウィルス主演の映画があったんですけど、これ寝たきりVRなんです。これはめちゃ面白いです。

中島:じゃあ見なきゃ。

夏野:いきなり、大阪大学の石黒先生、僕仲良しなんですけど、石黒先生が出てきて、自分と同じ風貌のアンドロイドと一緒に二人で写ってるっていうのが、映画のビギニングで出てくるんです。

中島:でも、日本の将来の話で言うと、これから少子高齢化が激しく進むから、老人の本当に寝たきりになった人とか、終末医療とかその辺の人たちをどうやって幸せにするかっていうデバイスを作るのが良いんじゃないですかね。

夏野:これで面白いのは、サロゲートって映画の中では、ハゲのブルース・ウィルスが髪の毛フサフサのアバターロボットを家で操作してて、そのアンドロイドが職場に行って仕事をしているんだけど、髪の毛フサフサで若い、ところが実態は家で寝てるブルースウィルスがそれを全部コントロールしてて、自分はそれになりきっているわけです。だから世の中がみんな美男美女なんです。

中島:いいですね。それね。

夏野:これ面白いでしょう。

中島:恋愛もできるし。

夏野:恋愛もできて、映画の中ではエッチもするわけです。でもそれは全部、アバター同士だった。それがある時、不具合が生じて自分が、ブルース・ウィルスが、そのままアバター世界に出ていかなきゃいけなくなるところから話がスタートするんですけど、めちゃくちゃ面白いです、サロゲートって。これは10年以上前の映画なんですけど、かなり未来を見てるなと思って。でもこれは絶対、『攻殻機動隊』に影響されてると思います。

内田:サロゲート、是非皆さん。

■いま日本は後進国になったのか異常な円安状態に陥っている

内田:ご覧いただきたいなと思います。そろそろ、お時間でございます。残念ながら。

夏野:ちなみに、中島さんは日本にいるの?

中島:今、たまたまいるんです。コロナの件でしばらく来ることができなくて。隔離期間があったじゃないですか。

夏野:今、三回ワクチンを打つと、アメリカから来る人は確認がいらない。

中島:そうなったので、やっと来たんです、二年半ぶりに。

夏野:どうですか?久々の日本は。

中島:食べ物が美味しいですね。

夏野:やっぱりそうですよね。

中島:それでドルが相対的に上がっちゃったじゃないですか。

夏野:安い。

中島:なんでこんなに美味しいの。980円の親子丼がやたら美味しいんです。

夏野:ランチの値段でアメリカから来た人は驚愕するんですけど、今ニューヨーク、ランチが20ドルですからね。

中島:20ドルプラスチップだったりするから。

夏野:そうすると、日本円にすると、2,500円とかだから、日本で1,000円って言ったら高いとかいうじゃん。そんな1,000円でランチが食える国なんて後進国です。でも、旨いからね。

中島:むちゃくちゃうまいですよ。日本はアメリカ版ファーストフードより、ちょっと上のチェーン店がすごい頑張ってるじゃないですか。

夏野:頑張りすぎ。

中島:驚くべき。

夏野:本当に頑張りすぎ。あと、もう一つは、高級店が安いことです。アメリカで高級店に行ったら、お酒も込みだったら500ドルはかかるじゃん、ひとりで。日本は高くても3万円ですから。お酒飲んで、頑張ったら4万円ぐらいになっちゃうけど、それはミシュランの星付きレストランです。3万円、4万円は。

中島:だって、結局バブルの頃より安いぐらいです。

夏野:かもしれない。

中島:30年前でしょ。僕も今日銀座に寿司を食べに行ったんですけど、二人で57,000円かな。

夏野:銀座としては普通の値段ですね。

中島:やたらおいしかったですよ。

夏野:やたら旨いよ。

中島:何これみたいな。

夏野:だから、日本はこれ、国境というか、コロナが解放されるとまた、中国人とかもみんな来るので。

中島:来ます、来ます。

夏野:また予約が取れなくなるから、この放送を見てる日本人の皆さん、今のうちに美味しいものを食べておいてください。

内田:でもそれ、日本の強みにはすごくなりそうですけどね。話しを聞いてると。

中島:賃金も上がってないし。

内田:上げて、賃金も上げることができれば、本当はいいんですけどね。それがなかなか。

夏野:賃金の上げ方の問題もあって、日本だとみんなを上げろと言われんだけど、それじゃダメなんです。美味しいものを出す店だけ上げるべきで、その辺の美味しくないものを出す店は上げなくていいんです。ここが重要。

内田:じゃあ社員とかの給料も優れた人だけ上げて、優れない人は上げないとかってこと?

夏野:絶対その方がいい。なぜかっていうと優れてないのは、優れてないわけじゃなくて、向いてないだけだから。向いてない人も向いてない仕事につき続けるのが悲劇なんです、実は。でもこれをみんな、全員上げようとか、ベアアップとかいうじゃん、ふざけんなって話。

中島:雇用を守るとかね。

夏野:雇用を守るっていうのは守られている方も幸せじゃないかもしれないって事を考えてないんですって言うとまた、「いやいや、偉そうに経営者だからそんなこと言うんだ」って言うんだけど、でも実際そうだと思うんです。明らかに銀行員に向いてない人は、銀行の中で絶対出世できないですから。

中島:銀行の窓口に入った時に、券を取る所に立っている人の意味がないですよね。

中島:わびしいですよね。

夏野:でも、それはそれでいいのかもしれないですけど、何しろ向いてないことをやり続けて、一生を終えるぐらいだったら、いろんなことにチャレンジしたほうが僕はいいと思う。

内田:会社が給料をそれでも上げてくれちゃったら、そこに居座っちゃうから、本人のためにもならないってことですね。それが高度成長期です。

夏野:いい加減うっちーが嫌になっている。

内田:そんなことないですけど、締めててくださいっていうカンペがさっき出ました。私はいつまでも喋っててもいいんですけどね。またこういう機会を持ちましょう。

夏野:でも、こういうカンペが出るって事は忖度されてないって事だから正しい。

内田:そういう事ですか。

夏野:だって忖度してたら、しゃべってんだから今切ったらいけないかなとか、これが忖度です。正しい指導、カンペを出してくれた方、ありがとうございます。

内田:ありがとうございます。じゃあそろそろお別れでございます。夏野さん、そして中島さん、ありがとうございました。

夏野:中島さんじゃあまた。いつまでいらっしゃるんですか?

中島:明日帰ります。

夏野:明日帰っちゃうんだ。向こうに入るのは平気なんだ。向こうに、アメリカで入るのはなんの規制もないんですか?

中島:一応検査はいりますけど、でも、今日とってきました。

夏野:わかりました。じゃあ次に来られる時はぜひライブで飲みながら。

中島:そうですね。

内田:コメントにも「対談企画、定期的にやってください」って。向こうからオンラインだったらできますからね。

夏野:この三人が全員違うとこにいても変わらないです。

内田:いいですね、それもね。

中島:じゃまたお願いします。

夏野:よろしくお願いします