車検に通った車が、来月壊れないとは誰も言っていません。
車検で見るのは決まった項目です。ブレーキ、灯火、排気、下回りの錆。決まっているから短時間で終わりますし、検査員が変わっても結果が揺れません。そのかわり、エンジンの寿命や、来週切れそうなベルトのことは見ません。
健康診断も同じです。通ったという紙は、測った項目の数値が範囲内だったという意味です。測っていない病気については、何も言っていません。
検査の結果を読むときに一番大事なのは、何を見ていないかを知っていることです。
六ページ確認、問題なし
作ったものを人に見せる前に、自分で確かめます。ここで一番危ないのは、確かめたつもりになることです。
MulmoTerminal は AI に頼んで作業させるための画面で、npx の一行で立ち上げてブラウザで開きます。道具自体は無料で、AI の使用量は自分の契約から引かれます。そこで作ったページは、AI に動かさせられます。
六ページ確認、問題なしという報告が返ってきたとき、何が確かめられていないのかは書かれていません。
AI に確かめさせられる
作ったページは、本物のブラウザで全部開いて、本番と同じ制限のまま、実際のデータを渡してボタンらしきものを押してくれます。
報告されるのは、読み込みが終わらなかったページ、どこにも繋がっていないボタン、送信したのに断られたものです。
自分で全部のページを開いて回るより早いので、頼む価値はあります。ページを変えたあとは毎回頼むのが正しい。
既定では何も書き込みません。確かめるために本物のデータが増えることはありません。
ただし、押すのはボタンだけ
ここが正直に書かれている部分です。
押すのはボタンなので、チェックボックスや選択リストに保存がぶら下がっているページは、その経路が一度も走りません。しかも報告にはそう書かれません。
| 押せるもの | 押せないもの |
|---|---|
| ボタン | チェックボックス |
| 選択リスト(プルダウン) | |
| 日付の選択、スライダー |
痛いのは、飛ばしたことが報告に出ないところです。
六ページ確認、問題なしが返ってきます。でも五段階の評価を選ぶ経路は一度も通っていません。アンケートの本体がそこだったら、何も確かめていないのと同じです。
車検の項目に入っていないベルトと、同じ位置にあります。
だから数字をそのまま読む
言い方が的確なので、そのまま引いておきます。六ページ動かしたをアプリを動かしたと読まずに、その数字を読んでください。
六ページ動かしたのは事実です。それが全部なのか一部なのかは、別の話になります。
なお、動かす量には予算があります。ページが多ければ途中で止まりますが、飛ばしたものは申告されます。報告を読めば、六が全部かどうかは分かります。
残り半分は自分で見る
手元で、公開サイトと同じコードを動かせます。
これが大事なところで、開発用に制限を緩めた環境ではありません。本番より甘くはならないので、ここで通ったものは本番でも同じように動きます。
ただし通ったの範囲は、自分が実際に押した経路だけです。
見るのは四つです。
データが出ているか。読み込み中で止まっていたら、まだ繋がっていません。これが公開後に起きると、訪問者には何も見えません。一番多い失敗で、そして一番分かりやすい失敗です。
送信すると確認が出て、入っている値が正しいか。項目名と値が対応していないことがあります。メールの欄に書いたものが名前として送られている。これは動いてしまいます。送信は成功するので、確認を見ないと気づけません。気づくのは、集まったデータを見たときです。
入れてはいけないものが断られるか。意地悪な入力を自分で入れます。メールの欄に日本語を一文字。名前を空にして送る。定員を超えて送る。正しく入れたら動くだけ確かめても足りません。間違って入れたときに止まるかが、本番で効きます。
仕上がって見えるか。これは品質の話ではなく、使われるかどうかの話です。素っ気ない見た目のフォームは簡素ではなく未完成に見えて、人は未完成に見える予約フォームを閉じます。
順番はこうなる
まず AI に動かさせて、壊れているページと繋がっていないボタンを潰します。次に自分で押して、選択肢やチェックボックスを含む経路を通します。そのあと意地悪な入力を入れて、断られるかを見ます。最後に見た目を見ます。
最初が機械の仕事で、あとの三つが人の仕事です。
最初を飛ばすと、壊れているページを人が探すことになります。あとの三つを飛ばすと、通っていない経路を確認済みだと思ってしまいます。
公開してから直すのでは遅い理由
公開は押した瞬間に効きます。リンクを送っていなくても、公開ページがあれば住所を知られれば開けます。
最初に開いた人が壊れたページを見たら、その人は戻ってきません。直せば動くようになりますが、その人は戻ってこないので、公開前に潰すほうが安いです。
使ってみる
MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。
npx mulmoterminal@latest
ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はありません。npx はその場で取ってきて動かすだけなので、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。そのターミナルが分からなくなったら npx mulmoterminal@latest stop です。
動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。
| 確かめ方 | 無ければ | |
|---|---|---|
| Node.js 22.12 以上 | node -v |
nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す |
| Claude Code | claude --version |
macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン |
Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。
新しい空のフォルダを一つ作ります。デスクトップでいいです。名前は何でもかまいません。
MulmoTerminal の空いているマスをクリックして、上のタブで Claude を選び、WORKING DIRECTORY にそのフォルダのパスを入れて、右の再生ボタンを押します。

開いた画面に、欲しいものを普通の言葉で打ちます。
出欠フォームを作って。名前と、参加か欠席か。
何でもかまいません。この記事は確かめ方の話なので、確かめる対象が一つあれば足ります。
公開する前に自分で見ます。そのマスでコレクションのパネルを開いて、ヘッダーの Previews を押すと、公開サイトと同じものが動きます。
そこで上の四つを確かめます。データが出ているか、送信の確認の値が正しいか、変な値が断られるか、仕上がって見えるか。
そのうえで、そのマスでこのアプリのページを全部動かして報告してと頼みます。返ってきた報告の数字をそのまま読んで、自分が押していない経路がどれかを数えてください。
よければ公開してと頼みます。リンクが返ってきます。
外に出したくないものなら、公開ページは作らないでと先に言っておきます。そうすると、名簿に載せた人しか開けません。
やめたくなったら、同じマスでこのアプリの公開をやめてと頼みます。リンクが開けなくなります。集まったデータを消すなら、レコードを全部消してと頼みます。消すと戻らないので、先に画面で中身を見て、必要なら書き出してから頼んでください。
まとめ
車検に通ったは、車検の項目に問題がなかったという意味です。検査の結果を読むときに大事なのは、何を見ていないかを知っていることです。
AI にページを動かさせると、壊れたページと繋がっていないボタンは見つかります。ただし押すのはボタンだけなので、選択リストやチェックボックスの経路は通りません。そしてそれが報告に出ません。
必要なのは全部確かめることではなく、何が確かめられていないかを自分が知っていることです。知っていれば、そこだけ自分で押して終わります。
