記入台の仕切りは、書く人の注意力を当てにしていない

記入台の仕切りは、書く人の注意力を当てにしていない

投票所の記入台には、三方に板が立っています。

あの板は、書く人の注意力を当てにしていません。手で隠してくださいという貼り紙でもなく、隣の人に見ないでくださいと頼む放送でもない。板が立っているので、見えません。

もし注意書きで済ませていたら、たまに誰かが忘れます。忘れた一回で、その人の投票は秘密でなくなります。しかも忘れたことに、本人が気づきません。

守り方には二通りあります。気をつけることにするか、そもそも届かないようにするか。記入台は後者です。

水曜日に開いたとき

読書会の出欠をとるフォームを、AI に作らせました。

自分は全員の回答を見たい。誰が来るか分からないと会場が決まらないので。でも、申し込んだ人が水曜日にリンクをもう一度開いたときに、他の十人の名前とメールアドレスが並んでいたら困ります。

ここで手が止まります。自分で中身を読み切っていないコードに、十人の連絡先が通っている。

MulmoTerminal は AI に頼んで作業させるための画面で、npx の一行で立ち上げてブラウザで開きます。道具自体は無料で、AI の使用量は自分の契約から引かれます。そこで作れる共有アプリは、リンクで人に渡せるアプリで、フォルダ一つがアプリ一つです。公開したあとは自分のパソコンが経路に入らないので、ノートを閉じても動き続けます。

たぶん大丈夫では出せない

コードを読めば確かめられます。自分の行だけ表示すると書いてあるかどうかを見ればいい。

でも実際には、これが一番危ない確かめ方です。

いま見た版は正しかったとして、明日 AI に修正を頼んだら変わるかもしれません。表示は絞れていても、その手前で十人分のデータがページに届いているかもしれません。届いていれば、画面に出ていなくても見る手段はあります。

表示するときに絞るという作りは、絞り忘れが漏洩になります。注意書きで済ませた記入台と同じです。

共有アプリでは、そこで絞っていない

答えを先に書きます。申し込んだ人のページには、他人の行が届いていません。

表示の段で隠しているのではなく、その手前で止まっています。

どこで絞っているか ページにバグがあったら
ページの中で絞る 全部見えてしまう
その下のプラットフォームで絞る 見えない(届いていないので)

ガイドは、これを決めているのはページではなくプラットフォームなので、ページが間違っていても守られると書いています。

これが、自分が読み切っていないコードでも公開できることの根拠になります。板が立っているほうです。

一つのアプリに、入口が三つある

同じアプリに、別々の住所が三つあります。

ページ 誰が開けるか
公開 アプリが受け入れる人なら誰でも
メンバー アプリの立場を持っている人。受付をする側
参加者 名簿に載っている人。自分の行が見える

読書会の出欠だと、こうなります。

誰 どこを開くか 何が見えるか
リンクを送られた10人 公開 フォーム。送ると受け付けましたと出る
あなた メンバー 全部の行。人数
申し込んだ人が水曜に来たとき 参加者 自分の行だけ

三行目が、普通のフォームには無い状態です。

送信したらもう見られないか、全部見られる。そのどちらでもない、自分の分だけ後から見られるを作るのが難しいので、たいていのフォームは前者になっています。

立場は五つある

誰が何をできるかは立場で決まります。三つは分かりやすいと思います。

owner は全部できます。公開も含めて。editor は中身を読み書きできます。viewer は読むだけです。

残りの二つが、共有アプリらしいところです。

participant は、自分の行だけです。申し込んだ人、回答した人、登録した人。自分がどうなったかは知る必要があるけれど、他の人の分を知る必要はない立場です。上の三行目がこれです。

assignee は、全部読めるが自分の担当だけ書けます。予約を受ける側のための立場です。

美容室にスタイリストが三人いるとします。三人とも全部の予約を読めます。店の状況を知る必要があるので。でも自分に入った予約だけを承認したり変更したりできます。

読める範囲と書ける範囲が違う。これは他の立場では表せません。editor は全部書けてしまうし、viewer は自分の担当も書けない。

公開ページを作らない、という選択

公開を押すのが怖い場合の答えがこれです。

公開ページを宣言していないアプリは、名簿の中だけに公開されます。メンバーと参加者しか開けません。

社内の引き継ぎ、決まったメンバーだけの作業ボード、部活の当番表。こういうものは、そもそも公開ページを作らないほうが正しい。

逆に公開ページを作った場合は、押した瞬間から知らない人の前にあります。リンクを誰にも送っていなくても、住所を知られれば開けます。

公開するというボタンが、必ず世界に見せるを意味しません。どちらになるかは、作るときに決まります。

もらう側は何も入れなくていい

リンクをもらう側になることもあります。

MulmoTerminal は要りません。ブラウザだけで足ります。公開ページはそのまま開けます。名簿に載せてもらえば、参加者ページで自分の行が見えます。

サインインを求められるのは、こちらが誰かをアプリが知る必要があるときだけです。アンケートに答えるだけなら要りません。自分の行を後から見るには、自分が誰かを名乗る必要があります。

必要なときだけ求める、という形になっています。AI が作ったものにアカウントを作らされることを心配しなくていい部分です。

使ってみる

MulmoTerminal は、次の一行で立ち上がります。ターミナル(Windows なら PowerShell、Mac ならターミナル)を開いて、そのまま貼り付けます。

npx mulmoterminal@latest

ブラウザが開いて http://localhost:34567 が表示されれば成功です。インストールという作業はありません。npx はその場で取ってきて動かすだけなので、合わなければ閉じるだけで終わります。止めるときは、打ったターミナルで Ctrl + C を押します。そのターミナルが分からなくなったら npx mulmoterminal@latest stop です。

動かない場合、足りないものは次の二つのどちらかです。

確かめ方 無ければ
Node.js 22.12 以上 node -v nodejs.org/ja/download の LTS。入れたらターミナルを閉じて開き直す
Claude Code claude --version macOS は curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash、Windows は irm https://claude.ai/install.ps1 | iex。そのあと claude でログイン

Claude Code は、AI をターミナルから使うためのコマンドです。使うには Claude の有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)か API のアカウントが必要で、無料プランには含まれていません。MulmoTerminal 自体は無料で、AI の使用量はその契約から引かれます。

新しい空のフォルダを一つ作ります。デスクトップでいいです。名前は何でもかまいません。

MulmoTerminal の空いているマスをクリックして、上のタブで Claude を選び、WORKING DIRECTORY にそのフォルダのパスを入れて、右の再生ボタンを押します。

起動フォーム。上のタブで Claude を選び、WORKING DIRECTORY にフォルダのパスを入れて、右の再生ボタンを押す

開いた画面に、欲しいものを普通の言葉で打ちます。

読書会の出欠を集めたい。名前と、参加か欠席か。 答えた人には自分の分だけ見せて、他の人の名前は見せないで。

他の人の名前は見せないでが入っていれば、この記事の形になります。

公開する前に自分で見ます。そのマスでコレクションのパネルを開いて、ヘッダーの Previews を押すと、公開サイトと同じものが動きます。

そこで四つ確かめます。データが出ているか。読み込み中で止まっていないか。送信すると確認が出て、入っている値が正しいか。わざと変な値を入れて、断られるか。そして仕上がって見えるか。

よければ公開してと頼みます。リンクが返ってきます。

公開ページで自分を二件登録して、そのあと参加者のページを開きます。自分の一件しか出なければ、他人の行がそもそも届いていないということです。

外に出したくないものなら、公開ページは作らないでと先に言っておきます。そうすると、名簿に載せた人しか開けません。

やめたくなったら、同じマスでこのアプリの公開をやめてと頼みます。リンクが開けなくなります。集まったデータを消すなら、レコードを全部消してと頼みます。消すと戻らないので、先に画面で中身を見て、必要なら書き出してから頼んでください。フォルダごと捨てるのは、公開を取り消したあとなら削除するだけです。

まとめ

投票所の記入台は、書く人の注意力を当てにしていません。板が立っているので、隣から見えません。

申し込んだ人に他人の行が見えないのも同じで、ページのコードが絞っているからではなく、そもそも届いていないからです。だから、自分で読み切っていないコードでも公開できます。

自分で書いていないコードを公開するのが不安なとき、確かめるべきはコードが正しいかではなく、ここはコードが決める場所なのかのほうです。

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