Anthropic が 2025 年 4 月に公開した Claude Code: Best practices for agentic coding は、Claude Code を実務で使うすべてのエンジニアの必読書です。
ただし原文は英語で、しかも「ここに書いてある通りにやる」ではなく、自分のプロジェクト・自分のチームに合わせて翻訳することが前提の文書。
本稿では、原文の要点を日本語で整理したうえで、Singularity Society で MulmoTerminal 等を開発する中で得た実務知見を加えて、具体的な設定・ワークフロー まで落とします。
まず押さえる 3 原則
1. CLAUDE.md を書く
プロジェクトのルートに CLAUDE.md を置くと、Claude Code はセッション開始時に自動で読み込みます。これがプロジェクト固有の指示を伝える主要経路。
2. 権限を最小化する
Claude Code は許可したツールだけを使います。「全部許可」ではなく、プロジェクトごとに本当に必要なツールだけを allow リストに。
3. ループを短くする
AI エージェント開発は、イテレーション速度が成果の大半を決めます。「1 回のループに何分かかるか」を最適化。
この 3 つを徹底するだけで、Claude Code の使い方が 2 段階くらい変わります。
CLAUDE.md の書き方
Anthropic の推奨は 「エージェントに新人エンジニアとして入社してきた日に渡すオンボーディング資料」 を書くこと。
構造
# プロジェクト名
## 概要
(何を作っているか、1 段落)
## 技術スタック
- 言語: TypeScript / Python / ...
- フレームワーク: Astro / Next.js / FastAPI / ...
- デプロイ: Vercel / Firebase / ...
## コマンド
開発: `yarn dev`
テスト: `yarn test`
ビルド: `yarn build`
デプロイ: `yarn deploy`
## ディレクトリ構造
src/
├── components/ # UI コンポーネント
├── pages/ # ルーティング
├── utils/ # 汎用関数
└── ...
## コーディング規約
- 関数は 20 行以内
- let より const
- any 禁止、型ガード必須
## してはいけないこと
- 本番 DB への直接書き込み
- `git push --force` の main 直接
- API キーのコミット
## 連絡先
- プロジェクトオーナー: @isamu
書く量
経験則では 200-500 行 がスイートスポット。少なすぎると文脈不足、多すぎると context rot(長文脈で精度が落ちる)に当たります。
階層的に書く
モノレポや大規模プロジェクトでは:
/CLAUDE.md # プロジェクト全体のルール
/apps/web/CLAUDE.md # Web app 固有のルール
/apps/api/CLAUDE.md # API 固有のルール
Claude Code は作業ディレクトリに応じて、関連する CLAUDE.md を自動で読み込みます。
更新を怠らない
CLAUDE.md は コードベースと一緒に進化する 文書です。古いルールを放置すると、エージェントが古いやり方で実装し続けます。
PR で CLAUDE.md も一緒に更新する、月 1 で見直す — くらいのメンテナンスが要ります。
カスタムスラッシュコマンド
Claude Code にはカスタムコマンド機能があります。~/.claude/commands/ または .claude/commands/ にファイルを置くだけ。
例: /review
.claude/commands/review.md:
現在のブランチの差分を、以下の観点でレビューしてください。
1. ロジックの正しさ (想定外の入力で壊れないか)
2. 既存コードとの整合性 (命名・型・パターン)
3. テストカバレッジ
4. パフォーマンス懸念
5. セキュリティ懸念
発見した問題は、重要度順に 5 件まで。各問題について:
- 該当ファイルと行番号
- 問題の説明
- 修正案 (コードスニペット)
セッション中に /review と打つだけで、同じ品質のレビューが毎回走ります。
よく使うコマンド例
/plan— 作業の計画を立てる (plans/xxx.mdを作成)/review— 現在の差分をレビュー/test— テストを実行して結果を要約/commit— 差分からコミットメッセージを提案/pr— PR 本文を書く
チーム共有
.claude/commands/ を repo に commit すれば、チーム全員が同じコマンドを使えます。組織的な AI 利用の標準化 に効きます。
ツール権限の設計
Claude Code は tool 単位で許可を取ります。デフォルトで安全側、必要に応じて緩めます。
設定例 (.claude/settings.local.json)
{
"permissions": {
"allow": [
"Bash(yarn:*)",
"Bash(git log:*)",
"Bash(git status)",
"Bash(git diff:*)",
"Edit",
"Read",
"Grep",
"Glob"
],
"deny": [
"Bash(rm -rf:*)",
"Bash(git push:*)",
"Bash(curl:*)",
"WebFetch"
]
}
}
原則
- 読み取り系は広く許可: Read, Grep, Glob,
git log,git status - 書き込み系は限定: Edit は OK、ただし特定ファイルは除外
- 破壊的操作は明示的に拒否:
rm -rf,git push --force,git reset --hard - 外部通信は制限:
curlや WebFetch は、必要な時だけ allow
Auto mode との付き合い
2026 年の Claude Code には auto mode があり、権限プロンプトを抑制します。これは 信頼度の高いコマンドを自動で通す 設計。
Auto mode を有効にする前に、deny リストを明示的に書くことが推奨されます。
詳細: How we built Claude Code auto mode (Anthropic)
並列実行の推奨
Anthropic は 「1 セッションで作業するより、複数セッションを並列で動かすほうが効率が高い」 と明記しています。
理由
- Claude の応答に数十秒〜数分かかることが多い
- 待っている間、人間は何もしていないか、別の文脈に移っている
- 並列化で待ち時間を他セッションの監督にあてられる
実装
- Terminal の tab / tmux pane を 3-5 枚開く
- 各 pane で
claudeを起動 - 違うタスクを並列で進める
ただし、ペインを目視で監視するコストが問題になります。MulmoTerminal は この監視コストをゼロに近づける ために作られました。
- 状態を色で表示 (青/琥珀/緑)
- スマホに通知
- git worktree で自動隔離
- コックピットロスターで全セッション一覧
AI エージェント並列化で開発速度 10 倍 で詳述しています。
plan ファイルの活用
長い作業(複数ファイル・複数日にまたがる)に入るときは、まず plans/xxx.md を書かせます。
例: plans/feat-user-dashboard.md
# ユーザーダッシュボード機能追加
## 目的
ユーザーが自分の過去 30 日の利用状況をダッシュボードで見られるようにする。
## 設計
- API: GET /api/user/dashboard/:userId
- フロント: /dashboard ページ、chart.js で可視化
- DB: 既存の usage_events テーブルを集計
## 進捗
- [x] API 設計
- [x] API 実装
- [ ] フロント実装 (今日)
- [ ] テスト追加
- [ ] デプロイ
## 決定事項
- Chart は chart.js を採用(既存ライブラリと競合しないため)
- 集計は毎時バッチ、リアルタイムではない
## 残課題
- 日本語ローカライズは次フェーズ
このファイルがあると:
- Compaction で履歴が消えても、Plan は残る
- 別の人 が引き継ぐとき、何をしていたかが即座に分かる
- 人間 が進捗を可視化できる
- エージェント が「次に何をするか」を文書から読み込める
Context Engineering の Structured note-taking パターンの実装です。
イテレーションを短くする 5 つの工夫
1. Live mode のエディタ連携
Claude Code は Edit tool で直接ファイルを書き換える。確認してからマージ、ではなく、まず書かせて diff を見る。
2. 短いテストを常備
yarn test:fast # 2 秒で終わる smoke test
yarn test # 全テスト (30 秒)
yarn test:e2e # E2E (5 分)
Claude には最初 yarn test:fast を走らせ、通ったら yarn test、デプロイ前に yarn test:e2e の順。
3. エージェントに失敗させる
完璧なプロンプトを人間が考えるより、まず走らせてエージェントに失敗させ、その修正指示を書く ほうが速いことが多い。失敗が最速の feedback。
4. 複数回試す
同じ問題を 2 回別のセッションで試すと、違うアプローチが見えます。1 セッションで固執しない。
5. 自分で手を動かす選択
Claude がどうしても解けないタスクは、人間が 10 分で手を動かした方が速い こともあります。無理に AI に任せない判断力が重要。
MulmoTerminal との統合
MulmoTerminal は Claude Code をブラウザから並列実行するコックピットです。これらのベストプラクティスを実装レベルで組み込んでいます:
- CLAUDE.md の自動読み込み: Claude Code 側の挙動そのまま
- 権限設定の継承:
.claude/settings.local.jsonを各セルで共有 - カスタムコマンドの共有:
.claude/commands/が全セルで使える - 並列実行の UI: 9 セル並列、状態色、通知
- plans/ の可視化: Files ペインで plans/*.md を開ける
- git worktree 隔離: 複数セッション間でファイル衝突を防ぐ
Claude Code を 1 セッションだけで使っているなら、まず本記事の内容を適用。並列化のタイミングで MulmoTerminal を検討する流れが自然です。
まとめ
- Anthropic の Claude Code Best practices は実務の必読書
- 3 原則: CLAUDE.md を書く / 権限を最小化 / ループを短くする
- CLAUDE.md は 200-500 行、オンボーディング資料として書く
- カスタムスラッシュコマンドで組織標準を作る
- ツール権限は allow / deny を明示、auto mode は deny を書いてから
- 並列実行で待ち時間を監督に変える
- plans/ で Structured note-taking
- イテレーションを短くする 5 つの工夫
1 日 2-3 時間 Claude Code を使うエンジニアなら、これらの実装で生産性が 1.5-2 倍になります。
関連リンク
- 原文: Claude Code: Best practices for agentic coding (Anthropic)
- Anthropic Engineering Blog の歩き方
- 「Building Effective Agents」を実務に落とす
- Context Engineering 入門
- AI エージェント並列化で開発速度 10 倍
- Claude Code vs Codex vs Gemini CLI — 2026 年版比較
- MulmoTerminal — Claude Code を並列実行するコックピット
Singularity Society はテクノロジー集団として MulmoClaude / MulmoTerminal / MulmoCast を開発しています。エンジニア・起業家向けの実践プログラム BootCamp も運営しています。

