2024 年末から 2026 年にかけて、「AI コーディングエージェント」の 3 強が明確になりました。
- Claude Code (Anthropic)
- OpenAI Codex (OpenAI)
- Gemini CLI (Google)
いずれも「ターミナルで動く AI コーディングアシスタント」ですが、設計思想・得意領域・運用の勘所が違います。本稿では 2026 年 10 月時点での現実的な比較と、複数併用する実践的な使い分けを整理します。
一行で違いを言うと
- Claude Code: 設計と大規模リファクタに強い。長文脈・複雑なタスクで最も信頼できる
- OpenAI Codex: 短距離の実装・テスト生成が速い。コードベースへの深い理解より、手を動かすのが速い
- Gemini CLI: 検索・公開情報の統合に強い。コードベースの全体把握やマルチモーダルな情報整理が得意
3 エージェントの基本情報
| Claude Code | OpenAI Codex | Gemini CLI | |
|---|---|---|---|
| 提供元 | Anthropic | OpenAI | |
| 現行モデル | Opus 5 / Sonnet 5 / Haiku 4.5 | GPT-5 系 | Gemini 3 Pro / Flash |
| コンテキスト | 200K〜 (Sonnet 5 で 1M beta) | 400K | 1M-2M |
| 料金 (個人) | Pro $20 / Max $200 / API 従量 | Plus $20 / Pro $200 / API 従量 | Advanced $20 / API 従量 |
| CLI | claude |
codex |
gemini |
| MCP 対応 | ✅ ネイティブ | ✅ (2025 年後半〜) | ✅ (2025 年後半〜) |
| セッション resume | claude --resume |
codex resume |
gemini chat |
モデル性能の違い
ベンチマークではなく、実運用でのクセを書きます。
Claude Code (Opus 5 / Sonnet 5)
- 深い理解: 10 ファイルにまたがる変更を一貫して書ける
- 保守的: 新しいコードを書くより、既存の慣習を踏襲する傾向
- 会話が自然: 「X をしたい、ただし Y は変えないで」という制約条件が効く
- 苦手: 低レイテンシ用途、短距離タスクの反復
Claude の設計思想は “Constitutional AI” ベースで、慎重に、意図を再確認してから動く 挙動が特徴。設計レベルの判断を任せたいとき、まず Claude。
OpenAI Codex (GPT-5)
- 手が早い: 1-2 ファイルの変更なら最速
- テスト生成が強い: ユニットテストの網羅性と形式が整っている
- 文脈に鈍い場合がある: 既存コードの慣習を無視してゼロから書くことがある
- 苦手: 10 ファイル以上を跨ぐ変更、既存アーキテクチャの踏襲
短距離の実装者として最も速いのが現状の Codex。実装・テスト追加・微調整タスクを分けて渡すなら強い。
Gemini CLI (Gemini 3)
- コンテキスト窓が異常に広い: 2M トークンは実質「リポジトリ丸ごと」+「ドキュメント全部」
- 検索統合: Google 検索・Google Scholar・YouTube のトランスクリプトを引っ張れる
- マルチモーダル: 画像・PDF・動画をプロンプトに混ぜられる
- 苦手: Agentic な動作(ツール連鎖)の安定性は Claude / Codex にまだ遅れている
コードベース全体の把握、質問応答、公開情報の統合で選ばれる。1M トークン超の文脈をまるごと渡せるのは Gemini だけ。
コンテキスト長の実運用
ベンダーの公称値はマーケティング含みです。実際の有効活用レンジを書きます:
| エージェント | 公称 | 実用レンジ |
|---|---|---|
| Claude Code (Sonnet 5) | 200K | 150K まで性能維持 |
| Claude Code (Opus 5) | 200K | 180K まで性能維持 |
| Codex (GPT-5) | 400K | 300K を超えると忘れ始める |
| Gemini CLI (Gemini 3 Pro) | 1M-2M | 500K は実運用で動く、1M は時々忘れる |
ベンチマークと実運用の差は、Needle In A Haystack (NIAH) 評価では見えません。実コードベースに対する一貫性のある変更能力は、公称値の 50-80% と見ておくのが安全。
MCP 対応と拡張性
MCP (Model Context Protocol) は 2025 年 11 月に Anthropic が発表した標準で、2026 年現在 3 エージェントすべてが対応しています。
- Claude Code:
~/.claude/mcp.jsonに書く。設定が最も安定 - Codex:
~/.codex/mcp.json。Claude とほぼ同じ書式 - Gemini CLI:
~/.gemini/mcp.json。2025 年末に対応、まだ荒い
同じ MCP サーバーを 3 エージェントで共有できるのが大きい。社内ツールの MCP サーバーを 1 本作れば、全員が好きなエージェントから使えます。
料金の実感
個人の月額課金
- Claude Pro ($20): Sonnet 5 が中心、1 日 50-100 セッション程度は余裕
- Claude Max ($100-200): Opus 5 を使えて、重い作業で詰まらない
- ChatGPT Plus ($20): Codex もセット、GPT-5 を日常使い
- Gemini Advanced ($20): Gemini 3 Pro、2M コンテキストが刺さる人向け
API 課金 (入出力トークン単価、2026 年 10 月時点の目安)
| モデル | 入力 ($/M) | 出力 ($/M) |
|---|---|---|
| Claude Sonnet 5 | $3 | $15 |
| Claude Opus 5 | $15 | $75 |
| GPT-5 | $5 | $20 |
| Gemini 3 Pro | $2.5 | $10 |
プロンプトキャッシングを使うと入力コストは 1/10 に下がります(3 エージェントとも対応)。長時間同じコードベースで作業するなら必須の設定。
どう使い分けるか — 現実的なワークフロー
1 本に絞る必要はありません。実運用では タスクによってエージェントを使い分ける 人が増えています。
典型パターン A: 設計 → 実装 → レビュー を分業
- Claude Code: 設計、アーキテクチャ、複雑なリファクタ
- Codex: Claude が決めた設計に従って実装、テスト生成
- Gemini: 公開情報の調査、ドキュメントまとめ
典型パターン B: 言語別に使い分け
- Claude Code: Python / TypeScript / Rust の本番コード
- Codex: Jupyter notebook、プロトタイプ、競プロ的な短距離
- Gemini: SQL / BigQuery、データ分析
典型パターン C: フェーズ別
- 朝: Gemini で前日の PR と社内情報をまとめて読む
- 午前: Claude Code で設計と大物実装
- 午後: Codex で細かい実装と対応テスト
複数エージェントを並列に監督する — MulmoTerminal
3 本を並列で動かすと、「どのセッションが止まっているか」を見分けるコストが課題になります。
MulmoTerminal は、Claude Code / Codex / Gemini / Grok / Muse をブラウザのグリッド UI で並列に動かすOSS です。各セルで違うエージェントが使え、状態を色で伝え、スマホに通知を飛ばします。
- 青 → 作業中
- 琥珀 → あなた待ち
- 緑リング → 完了
同じリポジトリで 3 体を動かしても git worktree で自動隔離されるので、ファイル衝突が起きません。
詳細比較:
選び方のまとめ
1 本だけ選ぶなら:
- 新規開発プロジェクト・設計重視 → Claude Code
- 実装スループット重視 → Codex
- 大規模コードベースの質問応答・ドキュメント統合 → Gemini CLI
併用するなら:
- Claude Code を軸に、Codex を実装スピンオフとして、Gemini を調査用に
- MulmoTerminal で 3 セルを並べて、タスクによって振り分ける
組織導入なら:
- セキュリティ基準・ログ・権限管理が整っているのは Claude Enterprise / ChatGPT Enterprise
- 価格だけで言えば Gemini のエンタープライズが安い
- 既存の GitHub Copilot と置き換えるのは Claude Code / Codex のどちらか
まとめ
- Claude Code は設計と大物リファクタ、Codex は短距離実装、Gemini CLI は長文脈と検索統合
- モデルのコンテキスト公称値は実運用で 50-80% と見ておく
- MCP 標準化で、同じツールサーバーを 3 エージェントから使い回せる
- 1 本に絞らず、タスクで使い分けるのが 2026 年の実践
- 並列運用は MulmoTerminal のような専用コックピットで監督コストを下げる
関連リンク
- MCP (Model Context Protocol) 入門
- Software 3.0 とは — AI 時代のプログラミング・パラダイム
- MulmoTerminal — Claude Code / Codex / Gemini CLI を並列実行
- Cursor の代替としての MulmoTerminal
- VS Code の Claude Code 拡張を複数ウィンドウで動かす代わりに
Singularity Society はテクノロジー集団として MulmoClaude / MulmoTerminal / MulmoCast を開発しています。エンジニア・起業家向けの実践プログラム BootCamp も運営しています。

