中島聡×草場 壽一 「ソサエティを立ち上げた思い」
ソサエティを立ち上げた思い
草場:シンギュラリティ・ソサエティ3周年、未来技術推進協会3周年ということで、コミュニティのことを振り返りながら、いろいろ話せたらなと思ってます。改めて、シンギュラリティ・ソサエティを立ち上げた思いをお聞かせいただけますか。
中島:ひとことで言いにくいのだけど、テクノロジーがものすごい勢いで変わっていて、それに合わせて社会は変わっていくはずじゃないですか。だけど、どうしても社会の動きとかが、いろんな理由で遅かったいるすると、歪が生じる。その中でビジネスチャンスもあれば、本来ならテクノロジーを活かすべきところが活かされてないとか、同時に文明社会として環境問題や少子高齢化などの問題がいろいろ出てくる、そのような問題を、テクノロジーは道具でしかないけど、積極的に利用して問題を解決していこうという前向きな姿勢の人たちを増やしたいなと思っています。その中で人々が個人としても幸せになって欲しいし、世の中ががよくなって欲しいし、ビジネスも成功して欲しい、その座組としてNPOを立ち上げました。最近は有料サロンがいっぱい増えているけど、どうもサロンでお金を集めだすと、変な方向にいってしまいそうが気がして、あくまでノンプロフィットで進める、メンバーが集って会社を超えた横のつながりができる、そこでいろんなプロジェクトを立ち上げたいなと思ってました。
なぜこういったコミュニティ形式で立ち上げたのか
草場:中島さんの場合、いろんなスタートアップとの繋がりもあって、なぜあえてこういうコミュニティ形式で立ち上げられたのか、どういったところからでしょうか。そのプロフィットというか…
中島:そうですね。まずビジネスありきで始めるとやっぱりビジネスっていうのはね、ちゃんと成功しなきゃいけないし、そうすると、何か一つに定めなきゃいけない。それはそれでやるべきだし、僕もね、今ビジネスやっているけど、でもそれとは別に、もうちょっと包括的に全体を見たことをディスカッションできる場が欲しいし、そういうところで人の出会いを作りたいなというふうに思ってましたね。
だからここがゴールじゃなくて、こういうNPOみたいなとこで集まった人たちがプロジェクトを立ち上げて、それが面白そうだからビジネスになる、という形が理想かな、とは思っています。
草場:そうですね。我々の方もシンラボをすごく似たような経緯で立ち上げた部分があって、私が日立製作所という会社に勤めているときに、やはり普段の仕事ではなかなかできない社会的に意義のあることとかをやりづらいって方が多い。
日本のエンジニアは優秀な方も多いのに、なかなか活躍できない現状があるので、こういった横の繋がりを作りたくてシンラボを立ち上げた経緯があるので、そこは変わらずですね。
今コミュニティがうまくいっている部分、課題だなと思っているところ
草場:3年ぐらいコミュニティを運営して、実際うまくいってる部分とか課題だなってところを、ちょっとぶっちゃけて話をしていきたいんですけども。
中島:うまくいってる部分というと、シンギュラリティソサエティの方だと、おもちかえり.comのサービスとか、bus2.0というサービスがプロジェクトとして立ち上がって、実際に運営をして、人の役にも立ってるので、そこはすごくいい例になってると思うんです。
けど、ただ、やっぱり積極的に参加してくる人は少ないんですよね。皆さん忙しいからっていうのもあるし、結局ごく一部の人が頑張らなきゃいけないという状況になってるので、そこは何とかしたいなとは思います。
ちょっと面白い芽が出てきたのはそれとは別に、これは最初想定してなかったのですが、いくつかビジネスが立ち上がってます。
ビジネスっていうのは、その、何ていうのかな、割とフリーランスの人たちがいるので、そういう人たちが集まってプロジェクト受ける際に、シンギュラリティ・ソサエティが受け皿となって、そこで契約書を企業さんと結んで、ビジネスとしてフリーランスの人たちがやる。それをちゃんとシンギュラリティ・ソサエティが分配するみたいなやり方が成り立ち始めている。
それをどうやってスケールするかっていう問題があると思いますけど、そういう形であればボランティアだけじゃない参加の仕方もある。最初の2つのプロジェクトはほとんどボランティアなんですけど。
今立ち上がってるやつは、フリーランスの人たちが働ける場なので、それであればもう少し参加者が増えるかなとも期待してます。
草場:そうですね。その形式は我々も今取り入れようとしていて、未来技術推進協会で案件を受けてアサインしていく。かつ、そこでチーム組んで、例えばデータサイエンスをリアル案件を受けたことない方、今後そこでキャリアアップしていきたい人を一緒に育成する仕組みを作っていけば、各自のスキルアップにも繋がりますし、そこができれば、すごく良いですね。
社会的な活動とビジネスは相容れないんじゃないか?
草場:最近、自分中でも課題だなと思ってるのが、ちょっとある方にもご指摘をされて、答えられなかった部分なんですけども、やはりNPO的な活動とビジネスは相いれないんじゃないかと。
意見がわかれるのですが、ビジネスの目的はあくまでも売上を上げていくことなので、NPO的な活動を任意で集まってやる形式は、そもそも難しいんじゃないかって話を最近受けることが何件かありまして、この点はどう思われますか。
中島:割と実験的な話だと思うんですよ。別に会社を作って、そこでフォープロフィットで経営して、フリーランスの人を集めて受けてやるっていうやり方もありますけど、なんていうのかな、実際にビジネスでやりますってなると、本当にちゃんと稼がないとならないじゃないですか。だからそれはそれできつくて、僕は今までいっぱい見てきたけど、そういう受注ビジネスをやってる小さい会社って結構自転車操業状態になるんで厳しくなる。特にみんなフリーランスで働いてくれればいいけど、やっぱ社員とか抱え始めるとすごく重くなって。受注の案件ってのはね、いろいろ増えたり減ったりするので。そうするとだんだん会社の運営は厳しいわ、労働環境も厳しくなるっていう悪循環に陥るので、そういうふうには、僕はしたくないというか、そういうやり方にはあまり関わりたくない。
だからって言ってノンプロフィットでやるのが答えとは思わないんですけど、少なくともそれではない。新しいやり方。
で、NPOは純粋に事務局として存在していて、別に売り上げを求めるわけじゃなくて、目的はフリーランスの人たちが面白いプロジェクトをやるっていう目的のもとに存在しているという形で、やってみる価値はあるんじゃないかなと思うんですよ。だからNPOなので別に儲ける必要はないですよと。
ただその代わり、社員としては雇いませんよという割とはっきりしたスタンスでできるので、実験的ではありますけど、やる価値はあるかなと思ってます。
草場:僕もそう思ってます。そういう伝え方ですね。結構強めに言ってくる方もいるんで、なんていうか、投資家とかビジネスサイドは、言い方難しいですけど、ある意味遊びに見えるって言われることもたまにあるので。
ただ実験的な取り組みっていう部分では、それはある意味当たっていて。
私もこれがうまくいけばいろんな人がいわゆるお金儲けだけに走ることなく、自分の自己実現できることができると思ってるので、やっぱり引き続きこうやっていこうと思ってます。
モチベーション管理とインセンティブ
草場:これは多分プロジェクト立ち上げた側のお話なのですが、モチベーションの部分は、常に課題になると思うのですよ。もちろん自分たちでプロジェクトを立ち上げているので、自分でモチベーション管理をしなさいって話だと思うのですが、やはり普段仕事もしながら自分の時間を作ってやるっていうのは、スタートアップに近いので、なかなか上手くいかないことも多いと思います。そこでモチベーション管理が一つ課題かなと。なかなか人が集まりづらかったりすると、自分でやるしかないってとこがあるのですけど、プロジェクトにいろんな人を取り入れていきたいというところで、ちゃんと実績を見せていく必要があるなと思います。
中島さんの本を読んでいると、ビルゲイツとのやりとりや、彼がいろいろ提案する前に、中島さんがプロトタイプを事前に作っておいて、言われたときには出すっていうスタイルだと思うのですが、中島さんがいろんなものを新しく生み出していくときのモチベーションは何でしょうか。
何回かお話させていただいて感じるのは、やっぱり面白いっていうところがあるのでしょうか、大前提に。
中島:そうですね。面白いっていうのがあるから。僕はテクノロジーが大好きだし、それによって何か今までにないものが作れるのと、それを世の中に出したときには、喜んでくれるし驚いてくれるし、それが一番のインセンティブですよね。
だから多分、僕なんかは、例えばどっかの会社が出してる面白そうなサービスを真似して、うちの会社も作りたいからみたいなのには全然興味を持たないタイプで、これまでにないものを作りたいとか、それはわがままなんですけど、でもわがままでいいと思っていて、結局僕の場合はみんなもそうですけど、モチベーションが高いか高くないかで全然生産性違うので、だったらその仕事を選べばいいわけで、モチベーションが上がる仕事を、と僕は思いますよ。
仲間をみつけるときに意識すること
草場:自分がそのモチベーションに取り組むことに対して仲間を見つけていくときに、何か意識することはありますか。仲間作りってあまり意識されないでしょうか。
中島:するときはっていうか、割と自分が何か熱くなってるものって結構説得力がある話し方ができるんです、自然に。自分が本当にそうだから。ふりしてるわけじゃないのでね。
そうは言っても全員がそれを評価してくれるわけじゃないんですけど、別に共感してくれない人に時間かけてもしょうがない。何人か会ってる中で、かつ優秀な人で、共感してくれる人が出ればもうそこは頑張って釣りに行くという、そんな感じですね。
草場:やはり自分が一番モチベーションを感じる部分ってのはすごく大事ですね。
中島:ほら、よく例えばね、スティーブジョブスのような人は、すごい説得力を持っているじゃないですか。でもやっぱりあれはね、本物なんだと思うんですよ。本当に自分はこれはいいと思ってるから、相手を説得できる。だからその辺はやっぱり意識すると、要は自分自身のモチベーションっていうのが、直接人をリクルートするときに役に立つみたいなことが何かわかってくると、すごく自然にいろんなもの流れ始めると思うんです。そういうのがなくても、その人を説得できる人はたまにいるのかもしれないけど。
テレビショッピングのカリスマみたいにできるのもいいんだけど、普通の人はそういうことはできないので。無理にそれをすることもなく、要は自分が思ってることを熱く語ればいいだけだと僕は思いますけどね。
草場:中島さんがそういうのをもともと自然にやってた形なんですね。
中島:そうです。なので、僕はモチベーションがすごく高くないと何もできないタイプなので、自分が何かやってるときっていうのはモチベーションすごく上がってるんですよね。なので自然と説得力が上がるんですね。だから割と私はそういうことに関しては無理してなくて。
草場:なんとなくわかってきました。
自分のことを、自分自身もよく理解されているかっていうのは、お話してとても感じる部分ではありますね。
中島:そうそう、実はあまり無理してないんですよ。無理とか努力とか。
努力してないって言うと変かもしれないけど、割と楽しいことしかやってないので、側から見るとものすごい時間使って働いてるから、努力するように見えるかもしれないけど、本人は実は楽しんでるだけ、みたいな。そんな感じです。
草場:すごく勉強になります。やはりプロジェクトを立ち上げるときも、そもそもの目的とかがもちろんあるし、しかもそれを楽しめるような工夫もすごく必要だと思いました。
会員に望むこと
草場:この質問、中島さんの多分スタイルにあっていないかもしれないのですが、会員に望むことってありますか。
中島:せっかく参加したのであれば思いっきり楽しんで欲しいですよね。だから望むことっていうのは、要はプロジェクトに参加することだったり、自分でプロジェクトを立ち上げることだったりするんだけど、それをまた無理やりやってもね。
例えばこのプロジェクト面白くなさそうだなと思ってるのに参加してもうまくいかないので、基本はやっぱり楽しむことなので何か自分が楽しめることを見つけてほしいですよね。それはもうソサエティとかに限った話じゃなくて、何か大きな話になるけど、人生の話でもあって。
結局、何かこう、夢中になれるものを見つけると、とても充実した人生が送れますよ。だから例えば、今の仕事が楽しくないとか、自分に自信がないっていうような人は、何かそういうものを見つけることをして欲しくて、そういうのを見つける場に使ってほしいですよね。だから、本当に面白そうなものを別に自分で見つけたら、それを提案してもいいし、実は何でもいいんですよテクノロジーに限った話じゃなくて。そこにテクノロジーが絡めば面白い仕事できるかもしれないけど、自分は漫画が好きだったら、その漫画に関するサブプロジェクトみたいな立ち上げて、そこでみんなで漫画のことを語り合う、どうやったら楽しめるようになるっていう中で、漫画アプリを作ってみようとかなるかもしれないし。そんな形で、なんか自然体で参加してほしいですよね。
草場:自然体で、そうですね。そういう意味で、最近のシンラボにはいわゆるSDGsとか、社会課題というものに興味があって入ってくる方も結構多く、コミュニティの幅が広がってきています。その中で自分が夢中になれるものを会員の中で見つけていけるように我々としてもやっていけたらと思います。
エンジニアから起業家になるには
草場:何人かのエンジニアから、すごく物作りが好きなのだけど、自分でスタートアップを立ち上げていきたいと。スタートアップを立ち上げるにはどのような経路をたどるか全然わからないので、起業家になるためには、どんな勉強すればいいのか、どういう行動をとったらいいのを、経験からお伺いしたいです。
中島:僕からみると、エンジニアっていうのはビジネスの話を抜くと基本的には起業家なんですよ。新しいものを作るし、新しいものを世の中に届けて、面白いって思うこと自体がもう企業家の素質。だからエンジニアであるってことは、起業家である一番大事な部分は持ってるんですよ。
そこに関しては自信を持って良くて、そこを突き進めばいい。ただ実際に起業して会社を立ち上げると、そこにビジネス側のいろんなものがついてくるじゃないですか。経営しなきゃいけないとか、人を雇わなきゃいけないとか、お金を集めなきゃいけないとか、資金繰りしなきゃいけないとか。それはまたちょっとエンジニアが企業家として必要なスキルとはまた違うスキルセットだったり、違う努力のセットなんですよ。だから、そこは必ずしも楽しくないです。私は五つぐらい会社作ってみて実際に感じたことは、実はそこ得意じゃないし、やりたくないんですよ。なので今回、mmhmmっていう他の人が作った会社に後から入ったのは、もう純粋にエンジニアとしての新しいものを作るっていう部分だけで楽しみたいから、もう経営は他の人にやってほしいっていう思いで、あえてベンチャー企業に参加したんです。それでも別に構わないと思っていて、結局自分が何が得意か、何をやりたいかの問題であるので、エンジニアが企業家にって言っちゃうと、まるでエンジニアの次のステップとして、必ずビジネスのことをやらなきゃいけないとか、必ず自分で会社を立ち上げて、経営会社を経営しなきゃみたいに思ってるかもしれないけど、そんなことは全然ないですよ。
草場:「会社を立ち上げてみた」って多分、他の人からするとすごいことだと思うんですけども。例えば中島さんはMBAとられましたよね。あれは今振り返るとどうでしたか。
中島:何ていうのかな、トータルで見ると、ちょっと無駄だった部分もあるけど、でもいい経験でしたよね。やはりMBAとってみないとわからないこともあるし、ほら、世の中でMBA取った人が偉そうにしてるじゃないですか。自分が取ってない限りはその人たちに偉そうにされても何も言えないんですけど、取ったので大したことないって言えるんですよ。実はMBAはそんなに大したことなくて、確かに入るのはちょっと難しくて、中でもいっぱい勉強させられるけど、基本的にやってることっていうのは経理だったり財務だったり、オペレーションだったりっていう、すごい基本的な勉強の集まりなので。MBAを取ったからって会社を自分でスタートできるんじゃないんですよ。そのときにMBAっていうのはその会社を経営する中で必要な様々なスキルを教えてくれるので、どちらかっていうとエンジニアが起業して、その下にMBAを集めて彼らに細かな仕事をさせる、経理だとか財務だとか、オペレーションとかをさせるっていうのは美しい形だと思うんですよ。
例えばAppleだとスティーブ・ジョブスは、エンジニアというよりマーケティングだけど、どっちかっていうとエンジニアのクリエイタータイプじゃないですか。でも実は必ずしも経営会社の経営と過剰じゃないんだけど、ティム・クックが多分MBA持ってますよね。ティム・クックがそういうとこをしっかり支えたから会社大きくなって、その後ティム・クックがCEOになってからは、スティーブジョブス時代の魅力はないけどすごくしっかりした会社になったじゃないですか。やっぱりそのMBAってのはそういうエンジニア、CEOを支える役割だったり、エンジニアが去った後にその会社をしっかりと経営していくみたいなのは得意なタイプですよね。
草場:マイクロソフトの場合は、スティーブ・バルマーさん?
中島:はい。だから実はMBAってのはそんなにそのCEOタイプじゃないんですよ。どちらかというとサポートタイプですよ。
草場:私もとって大したことないって言いたいなと思います。そうすると、いわゆる起業サイドに興味あるエンジニアは、いきなり自分で立ち上げなくても、例えば今言ったみたいにスタートアップに合流してみて、どんな感じで立ち上げていくかとか、やりながら自分がそもそもどっちが向いてるか体験しながらやってくのがよさそうな感じですね。
中島:そうですね。私がラッキーだったのは、マイクロソフトが割と小さいときに入ったので、そんなに吹けば飛ぶようなベンチャーじゃなかったけど、割と小さめのベンチャーでだんだん大きくなるところにいたので、大きな会社でもないベンチャーはどうやって働くのだとか、どうやって人と人の関係ができてるとか、そういうことが学べたのですごくいい経験でしたよね。だから私最初に大学ですぐNTTに入ったじゃないですか。NTTを出てすぐに自分で会社を作ってたら、結構戸惑ってたと思います。
草場:私も日立時代はそうだったんですけど、いきなりそういうスタートアップに行くようなところまでは決めきれないなみたいなので、シンラボ、シンギュラリティソサエティがそういう疑似体験できる場になればなと思ってるのですけども。
さっきの話にちょっと戻りますけど、この取り組は実験的な取り組みではあるものの、スタートアップに合流しているような疑似体験にもなりますかね。
中島:あると思いますよ。面白いプロジェクトは、本当にバリバリ動いてる人たちがすごいので、それを横から見てるだけでもいいと思います。ソースコードとかアクセスできるし、どうやって物が決まっていくかとかいうのも基本的にSlackで全部やってるから見れるし、すごくいい勉強になると思いますよ。
草場:良いですね。ああいう方の仕事を見れるって普通ないので。
中島:マイクロソフトに入って学んだのは、そういうね、人の仕事の仕方を見たので、だから有本さんみたいなすごい人がガンガンやってるのを目の当たりにできるっていうのは、滅多にないないことですよね。だからその疑似体験どころか、本当にいい体験だと思いますね。
草場:リアルな体験に近いですよね。確かに人の仕事見れるって普通ないですよね。やはりエンジニアで起業したい人はシンラボをおすすめしておきます。今シンギュラリティソサエティさんと、我々未来技術推進協会が合併して1年ぐらい経ってるんですけども、よりシナジーを出していきたいなっていうところがあります。今まで話していただいたところで、自分が夢中になれることをこのコミュニティで見つけてていくところで全て解決する気もちょっとしています。
中島:もうちょっと交流というか、読むだけ参加でもいいので別にプロジェクトに参加するのも良いかもしれませんね。
草場:ぜひ今お互いに立ち上がってるやつに入っていくのと、何か共通のプロジェクトも立ち上げていければなというふうに思ってます。
3Dプリンタは楽しい
草場:中島さんは先日、3Dプリンターの話題を投稿されてましたが、単純に面白いなと思ったからでしょうか。
中島:そうです。3Dプリンターのグループとか作ったら楽しいじゃないですか。自分が作ったものをみんなに見せ合うとか、どうやって作ったとか、どのマシン使ったとか、どういうツール使ったとか、なんだったら設計図公開したりとか。私はまだはじめて1週間しか経ってないのですが、もう、すごい真剣です。
会社のロゴを3次元で作ったのですが、結構大変でした。こういうのを作ろうとすると実は大変で、デザインスキルというよりも、エンジニアリングスキルが必要です。どういうツールを使ってどうやってやるか。どうやってこの綺麗なクオリティでプリントするかなど。
今は、なぜもっと早く3Dプリンターを持たなかったんだろうっていうぐらい楽しいです。
エンジニアとしての技量がすごい試されるんですよ。これはもうハードも絡んでるので、そのハードをちゃんと動くようにメンテナンスしてあげて、ソフトを使いこなさないと、いい仕事ができない。でも使いこなすと自分が思った通りのものができるので、エンジニアの、何ていうのかな、楽しみとしては最高です。
草場:3Dプリンターで食品制作を大学で研究してる人がシンラボに興味を持っていて、コスト面で結局回収できないって話を聞いたのですが、そういう共通のプロジェクトを作るの、すごいありですね。中島さんが興味を持たれたのは何故ですか。
中島:どうしても家庭に必要なものが手に入らなくて、自分で作るしかないとことがありました。
草場:そういうことなんですね。
中島:はい。一度、針金とかで作ってみたのですが、全然うまくいかなくて、3Dプリンターで作るしかないなと。それはまだ作っていないのですが、それの予行練習をはじめて、だいぶいいですね。
話どんどん深くなっちゃうけど、3Dプリンターって普通3Dデザインツールがあるじゃないですか。mayaとかBlenderとか、Autodeskとか。あれ3D空間で物を動かしてデザインするってのが普通なんですけど、実はすごいやりにくいんです。二次元の画面で三次元を扱うので。
特にエンジニアリングスキルを使って、例えばこことここは完璧に1:2にしたいとか、ここの厚さは2ミリにしたいとかって、アートを作ってるんだったらあの作り方でいいんですけど、エンジニアとして3Dモデルを使うには、3Dエディターはそぐってないと思うんですよ。プログラミングでやるべきだと思って探してたら、すごい良いツールを見つけて、Shapeスクリプトって言うんですけど、やたらすごいですよ。それを作っているのは、1人のエンジニアなのですが、僕はその人の友達になりたいぐらいなんだけど。
それはプログラムを書いてデザインするんですけど、もうばっちりですよ。僕みたいなエンジニアとってはたまらなく嬉しい。
草場:考えてる人がやっぱりいるんですね。既に作ってる人が。
中島:そうなると本当にもうそれこそエンジニアの活躍する場なので、最高ですよ。
3Dプリンターは、デザインスキルがいるんじゃないかとか思う人がいるかもしれないけど、全然そんなことなくて、どちらかというとエンジニアリングですよ。
草場:3Dプリンタープロジェクトはぜひ立ち上げましょう。実際のものができてくるって面白いですよね。
他にも最近注目されているテクノロジーはありますか。
中島:あとはドローンですね。ドローンは1個会社を作りました。ただ私自身、さすがに時間がなくて、どうも全然手をつけられてないです。何ていうのかな、伸びる分野でいうとやっぱりAIってのはどちらかというとツールなので、3DプリンターとVR、AR、ドローン、ロボット辺りかなと。
ソフトウェアも面白いんだけど、ソフトウェアはソフトウェアだけじゃないですか。それはそれでいろいろ面白いものがあって進化していくんだけど、やっぱりちょっとハードが絡む方がぐっと面白くなりますよね。難しい部分はあるのだけど。で、今言ったものってみんなハードが絡んでるじゃないですか。3Dプリンターはもちろんだけど、ドローンもロボットも。ここからはソフトウェアはツールであってそれを使って、何かロボットを動かすとか、ドローンをコントロールするとか、綺麗に3Dプリントするとかっていうフェーズに移りつつあるかなっていうふうに僕は感じていて。だから、これから要求されるスキル、仕事としてはこっちかなと思います。
草場:このハード的なやつを共同で、例えばリモートでプロジェクトやるとしたら、それぞれが自分で機材買って、いろいろ作りながらオンラインでコミュニケーションとってく形ですかね。私はどうしても工場のイメージが強いので、こういうのって、一箇所に集まってみんなでやんないといけないと思ってるのですけど。
中島:そうだね、ロボットとかをゼロから作ると大変かもしれないけど、僕が買った3Dプリンターは3万円もしないぐらいなので、みんな1人ずつ持てるし、ドローンも今安いのはすごく安いですから。だからそれぞれが持って、ソフトウェアだけ共有しながら、設計図も共有してもいいけど、っていうのでもいけるんじゃないかな。だからシンラボの中に部があってもいいですよね、3Dプリンター部とか。どっちかっていうとミッションドリブンじゃなくて、テクノロジードリブンだけど、まずはテクノロジーをみんなで使いこなそうよみたいな。その中でこういう応用があるっていう話をしていけばいいわけじゃないですか。
草場:本当に楽しむですね。うちも最近Nreal2台買っていろいろ試してますので、確かにこういうのを共同でやって行って、ミッションドリブンはもちろん大事なんですけど、純粋にテクノロジーが楽しいから使うっていう人たちもやはりいて、その人たちが一緒に集まってまず使ってやるっていうのはすごく面白い取り組みだと思うので、部の検討をして、共同でぜひ進めていきましょう。
3Dプリンター、買ってみます。3万円ぐらいなんですね。今後実験的ではあるんですけども、自分のやりたいことを実現していくっていうシンラボを、どんどん推進していきたいなと思いました。
この1年はこうやって共同のプロジェクトを立ち上げながら、ぜひ連携を強めてインパクトを生んでいくことができればというふうに思いました。ありがとうございます。
新しいことは理解されない
草場:立ち上げ当初、結構批判があったんです。
僕は、いわゆるビジョンとかミッションは別に曖昧で、とにかくエンジニアの働き方を良くしていきたい。日立製作所の同期はかなり優秀なんですけど、そのまま埋もれていく人がすごく多いので、かなりもったいないなって。そういう人たちが社会的により活躍できるように、自分が本当にやりたいことと、社会的に意義のあることをやっていくって思いで立ち上げたんです。けれども、いわゆるMBAサイドの人たちから、いわビジョンが曖昧だとか、批判がありました。
中島:今までないものを始めると必ず批判する人は出るんですよ。それはいいんです。しょうがないですよ。それも人間の宿命というか、習性なので。だってイーロン・マスクなんて、むちゃくちゃ批判されてましたから、最初はね。電気自動車も批判されてたし、ロケットのSpaceXの方も思いっきり、もう無理だって全然みんなに言われてたんで。馬鹿にぐらいされてましたから。それでも結局やっちゃった勝ちなので。
やっぱり新しいことって理解されないんですよ。誰もやったことないので分かりにくいから。みんなやっぱり前例というか、ここの真似をしてるのね、みたいなのが安心して応援できる。
ユーザーとして株を買う
草場:中島さんは、初期の方からテスラに投資されてましたよね。
中島:はい。あれは自分でテスラ車を買ったときに株を買いました。
草場:そのあたり見てると投資家としてもかなり先見の明があるように思われるのですけども。
中島:でも僕の場合は純粋にエンジニアなので、エンジニアとしてすごいなと思うもの、特に自分がユーザーになるものを買うだけです。だから今のところ成功しているのは、Apple、Amazon、Netflix、テスラ。どれもそうですよ。
Netflixはもともと自分でDVDを借りていたのだけど、ストリーミング始めたときにこれはいいなと思って株を買いました。Appleも、いつ頃買ったかな、最初のAppleマシーンを買ってちょっとした時にこれは良いなと思って株を買い、iPhoneが出たときに株を買い足しみたいな感じです。
草場:iPhone出る前からなんですね。
中島:Amazonもそうだけど、基本的に僕は自分がユーザーとして絡んでる会社の株買うし、テクノロジーとして気に入った会社を買う感じですね。巷で噂になってるすごい企業だから買ってみようみたいな投資の仕方はしないです。
モデルナもワクチン打って買いましたから。すごい勉強したんですよ、モデルナとファイザーはどこが違うとか、アストラゼネカも調べて、やっぱりRNAワクチンがいいなと思い、もうワクチン打つならモデルナかファイザーだと。ただ、ファイザーの場合は大きな会社だから、あんまり株の値上がりが期待できなくて、モデルナは期待できるので、モデルナのワクチンを打って株を買いましたから。
草場:自分が本当に面白いなと思うところの株を買う、エンジニアにとってもすごく勉強になりますね。
中島:投資セミナーとかやってる人たちって、みんな文系の人じゃないすか。だからあの人たちはあの人なりのアナライズの仕方があって、それはそれで合ってる部分もあるかもしれないけど、彼らは技術のことがわからないので、例えばテスラ車に乗ってもどのくらいすごいかとか絶対わからないですからね。でもさすがに僕は彼らと比べたら遥かに分かるので、テスラ車に乗った瞬間にこれはすごいなと思いましたね。
草場:勉強になりました。イーロン・マスクと自分を比較するのはおこがましいのですけど、やはり新しいことに対してと、プロジェクトやってる方々も物ができる前は絶対批判されると思うので、そういう人間の習性だと思って、自分が夢中になるものに集中していこうと思いました。
中島:ありがとうございます。
草葉:今後ぜひ1年よりシンラボとSSでシナジーを生むために、共通の取り組み、今やってるものに合流していくもそうですし、プラスで3Dプリンターとか、テクノロジードリブンで楽しくやること、もしくはそこで案に上がったものをプロジェクトとしてやるってことと、初めの方に説明されたフリーランスのやつも、未来技術推進協会の方でも進めてますので、ぜひ共同でそこもできればというふうに思いました。
ありがとうございます。大分個人的な話が多かったですが全部整理されました。ありがとうございます。
mmhmmにはなぜ猫が映らないのか
会員:mmhmmのことで中島さんに聞いても良いですか?
中島:はい、どうぞ。
会員:いつもmmhmmを使わせてもらってるのですが、会社の会議とかで、たまに飼っている猫が乱入して来るんです。だけど猫は映らないんですよね。猫が映らないのはなぜですか?
中島:あれはセグメンテーションって言って、AIを使っています。いろんな背景に人間がいる姿の写真を見せて、この部分が人だよっていうのをトレーニングしたAIを使ってます。だから猫は映さないのです。
会員:映さないんですね。猫も映せると良いなと思いながら使ってるんですよね。
中島:iPhone版が今度出るんですけど、iOSに元々ついてるTrueDepthと言う深さセンサーも使っているので、ひょっとしたら猫も映るかもしれないですね。
会員:楽しみにしておきます。ありがとうございました。
ブロックチェーンとNFTの考察
会員:今ブロックチェーンについてすごい関心があるんですけど、中島さんはブロックチェーンと言う技術や暗号通貨について関心があったり、実際に何かやってらっしゃることはありますか?
中島:ブロックチェーンは話題になった時に、サトシナカモトさんの論文を読んでとても感動して、すごい技術だなと思いました。
ビットコインも一時は買いました。4000円ぐらいの時に買いましたが、毎日値段がすごい動くので、すごい気になるんですよ。それで、人生短いのにビットコインの値段を気にしてる時間が余りにももったいないなと思って、全部売っちゃいました、5000円くらいで。
ブロックチェーンは二つあって、ブロックチェーンっていう面白い技術と仮想通貨があります。あまりごっちゃにしない方がよくて、ビットコインに関していうと、法定通貨に対するヘッジにはなるので、金を持つくらいの気持ちで持っておくみたいなのはアリかなと思います。ただ金と違って相場がかなり動くので、私みたいに値段が気になってしょうがない人はやらない方が良いと思いますね。
ブロックチェーンの方は、仮想通貨以外でホントにすごいことができてるかっていうと、今のところないと思います。ただちょっと面白い兆しがあるのがNFTです。
NFTで今のデジタルアートやビデオをオークション形式で売り買いしてるのは、昔でいうトレーディングカードとか切手を売り買いしてるのと同じで、あまり実のエコノミーには関係ない話なのでほっといても良いと思います。
ただ最近ちょっと実のエコノミーの話がNFTで出始めていて、NFTとして売り、その瞬間にNFTを持っている人はこのような権利がありますよっていうメンバーシップとして使えるんですよ。それはすごくポテンシャルがあると思っています。今までメンバーシップはメンバーの管理が面倒くさかったり、メンバーシップの売買、例えば昔の日本のゴルフ場の会員権とかでブローカーがバラバラだったり、高値で売れてもゴルフ場には一切お金が入ってこないっていう状況がありました。例えば、300個NFTを発行して、その瞬間にNFTを持っている人はゴルフし放題ですよといったメンバーシップにすると、メンバーシップの売り買いが起きた時に50%はゴルフ場に入るって設定できたり、NFTをその時持っているかどうかをチェックできるので、このやり方はとてつもないポテンシャルを持っていると思ってます。ただNFTを持っている人にはこのような権利を与えますよっていうのが、今は口約束なので、詐欺とかがすごく横行すると思うので法律でどうやって縛るかが難しいと思う。けれど、ひょっとしてここは膨大なエコノミーができると思ってます。
会員:NFTをその時持っている人の権利というお話があったんですが、例えばNFTを持っている人だけが見ることができるライブとかは著作権の問題などが出てくると思ってます。その辺りのNFTと著作物の権利っていうのは、今後どのようになっていくかお考えをお聞かせいただきたいです。
中島:その辺がやっぱり一番難しいと思いますよ。法律の追いついてない部分があるので難しいですけど、やろうと思えばその瞬間にNFTを持っている人だけが入れるコンサートとか、ファンクラブとか、もしくは別にリアルじゃなくてもいいですよね。
例えば僕がやったら良いなと思っているのが、アイドルと24時間ずっととはいえないけど繋がっていられます、みたいなことをやったら良いと思うんですよ。AKBとかやったら良いと思うんだけど、AKBのメンバー一人当たり50人分のNFTを発行して、その50人はいつでもメッセージを送れるし、返事も結構もらえるし、これからご飯を食べるよみたいな写真がTwitterより高頻度でもらえるみたいな。それぐらい繋がっていたい人はいるわけで、そこにはものすごいお金が流れると僕は思ってます。
トップクラスのアーティスト、例えばレディー・ガガとすごい近い状況に入れる権利50人分だったら、その一つの権利10万ドルとか平気で取引されますよ。下手したらミリオンいっちゃうかもしれない。で、それが取引される度にレディー・ガガには例えば10%入るっていうすごくエクスクルーシブな関係は面白いと思いますよ。
ただ、その契約がどのくらい成立しているのかとか、そこでもらった写真を外に出しちゃった時に著作権がどうとか細かいところはあると思いますけど、そこはあんまり心配しなくても良いと思いますよ。やっぱりやっちゃった方が良いと思います。法律が追いついてない時っていうのはやるべきだって僕は思ってます。日本でもファンクラブサービスにはぴったりだと思います。
会員:ありがとうございます。
司会:ありがとうございます。まさか中島さんからAKBっていう単語が出るとはびっくりしました。
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