仕事と焼肉、意外な共通点とは?

私の仕事に対する姿勢と、焼き肉に対する姿勢の間に数多くの共通点があることに気がついたので、長文で解説する。

まず第一に、何よりも重要なのは、焼肉をする目的(パーパス)だ。「美味しい焼肉で腹を満たしたい」でも「顧客を焼肉で接待することで商談をまとめたい」でも良いので、目的をはっきりさせて臨むことが大切だ。

第二に重要なことは、焼肉は普通のレストラン料理と違い、「肉を美味しく焼き上げる」責任は自分にあることをしっかりと認識して臨む事だ。仕事でもそうだが、自分の役割は何か、自分にどんな責任があるかをはっきりと認識した上で臨むことがとても大切だ。
ここからは、「どうやって肉を美味しく焼くか」というテクニカルな話になる。エンジニアの仕事は、与えられた問題を解決することにあるが、その意味では、肉を焼く行為もエンジニアリングの一種である。

まず大切なことは、焼き網のどの部分が一番肉が美味しく焼ける場所なのかを知った上で、そこだけを使って焼く。焼き網全体に、一気に肉を並べるなど、言語道断。ひっくり返すタイミングが場所ごとに違うし、そもそも同時に複数の肉を焼いてしまうと、焼き肉において最も大切な「焼きたての肉」を楽しむことが出来なくなってしまう。焼き終わった肉を鉄板の端っこにおいて、それ以上焼けないようにする、などの行動は言語道断だ。

基本的には、バーナーが一列に並んでいる場所の中心が良い場所だ。最も火力が強い場所なので、油断をすると焦がしてしまうが、肉一枚一枚を丁寧に焼けば、ここで焼いた肉が一番美味しい。野球には「一球入魂」という言葉があるが、その言葉を思い出しながら、肉一枚一枚に魂を込めて焼いて欲しい。

複数人数で焼く場合、誰がどの肉の担当なのかを焼き始めた段階から定めておくことは、とても重要だ。責任の所在が不明だと、誰も手を出さずに焼き過ぎてしまったり、「狙っていた肉」を他の人に食べられてしまい、それが原因で人間関係が悪くなることすらある。食べ盛りの学生時代に、同席している友人たちよりも多く食べたいばかりに、生焼けの肉を食べるような経験をした人は少なくないはずだ。

肉をひっくり返すタイミングは、肉の種類や肉の厚さによって異なるが、基本的には、鉄板に触れていない側に肉汁がうっすらと浮かんで来た時がひっくり返しどきだ。すでに中はミディアムレアなので、ひっくり返した後は、焼き色さえつけば食べどきだ。そこを逃さないように、全神経を集中する。この瞬間に、同席している人に話しかけられても、肉から目を離さずに「今、肉をひっくり返したばかりだから、ちょっと待ってくれ」と頼む。相手が焼肉好きであれば、必ず理解してもらえる。

一枚の肉をひっくり返したところで、次の肉を焼き始めることを、私のようなエンジニアは「パイプライン処理」と呼んでいるが、よほど急いでいる場合を除いては、あまりお勧めしない。確かに、スループットは上がるが、集中力が二つの肉に分散してしまい、ミスが生じやすくなる。時間に余裕がある限りは、一枚の肉を丁寧に焼き、それを食べてから、次の肉を焼くべきだ。

ちなみに、私は、肉をひっくり返すところまでは、トングを使い、その後は箸を使う。それほど神経質になる必要はないが、生肉を扱うトングで、焼きあがった肉を取り分けるのは、衛生上好ましくないからだ。

私は、焼肉を食べる際には、必ず「白いご飯」を頼む。焼肉ほど白いご飯にマッチしたおかずはこの世に存在しないからだ。ユッケビビンバや石焼ビビンバもとても美味しいと思うが、焼肉とは別に、ランチの時にでも食べるべきだ。

悩ましいのは、肉を包んで食べるための野菜が出た時だ。焼きたての肉を野菜に包んで食べるのはとても美味しいが、手がベタベタになるし、白いご飯のおかずになりにくいのだ。どっちつかずは良くないので、「この肉は野菜に包んで食べる」「この肉は、白いご飯のおかずにする」と明確に割り切ることも大切だ。

仕事でも焼肉でも同じだが、「出来るだけ良い仕事がしたい」「出来るだけ美味しい焼肉が食べたい」という情熱を持つことが何よりも大切だ。1500円の焼肉ランチを食べる時にでも、「兎を狩るにも全力を尽くす」ライオンになった気持ちで、全力を尽くしていただきたい。


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