あなたの NFT がゴミになるかもよ?

突然ですが、皆さん NFT を持っていますか?
NFT は唯一無二、改竄も複製不可、永遠に存在すると思いますか?

ところがどっこい、「あなたのNFTは大丈夫?!某NFTが存在するのか確認してみました。」でも取り上げたとおり、NFT に関連付けられた画像データが IPFS や Web サーバなどブロックチェーン以外にあると、NFTの画像データが消えてしまう可能性があります(IPFS については後述します)。

さて、上記では YAMATO について深堀りしましたが、今回は NFT を俯瞰的に見ながら、更に深堀りをしたいと思います。

NFT とは

再掲となりますが、NFT をざっくり説明すると仮想通貨の仲間で、画像などのコンテンツと関連付けされたトークン(token)と呼ばれるデータをオンライン上で所有することで、関連付けされたコンテンツを所有することができます。トークンは、[OpenSea]のような NFT マーケットで売買可能です。

NFT のデータは主に所有者の情報とコンテンツの情報が書き込まれています。コンテンツの情報の持ち方には 2 通りの方法があります。

①ブロックチェーン上に保存する方法 = オンチェーン
②ブロックチェーン以外の外部にコンテンツ保存する方法 = オフチェーン

です。
一度ブロックチェーン上に情報を書き込むと、更新するための方法を提供していない限り、作者といえど変更・破棄することができないため、オンチェーンの場合、コンテンツが残り続けます(マイニングと呼ばれる取引検証を行う人がいなくなり、Bitcoin や Ethereum そのものが破綻した場合は除きます)。
オフチェーンの場合はコンテンツがブロックチェーンの外にあるため、コンテンツを更新・削除することができてしまいます。

例えば、Google Drive のデータを NFT が参照していた場合、Google が Google Drive の提供をやめると、NFT が参照していたデータを取得できなくなり、NFTのコンテンツを見ることができなくなります(参照先の URL は、ブロックチェーン上に残り続けます。もしくは、NFT の提供者が何らかの理由でコンテンツを削除してしまった場合、同じように関連付けがなくなります)。

これが、NFT がゴミになるというリスクです。

具体例 1

例えば「BoredApeYachtClub」を見てみましょう。
Etherscanでトークンが確認できます。

BoredApeYachtClub Etherscan

tokenUri の確認は、Contract の ReadContract から可能です。

BoredApeYachtClub tokenUri

20.tokenURI のtokenId に値を入れ、Query ボタンを押すと、コンテンツが参照できます。
tokenUri の raw が ipfs で始まっているのがわかると思います。

BoredApeYachtClub ipfs

tokenId は、Transfer から個別のページに移動して確認することができます。

BoredApeYachtClub tokenId

BoredApeYachtClub tokenId detail

これはブロックチェーンの外にコンテンツを保存しているということです。

IPFS は分散型のファイルストレージで、それぞれのコンピューターをノードとして登録し、ファイルをアップロードすることができます。アップロードしたファイルは、pin 留めという状態となり、その間データが保持され、他のノードから参照された場合、データがコピーされます。ただしノードを削除するなどして pin 留め状態でなくなった場合、利用者が少ないファイルは消えてしまうという可能性があります。代わりに pin 留めをしてくれるサービスもありますが、お金がかかってしまいます。

前述した Google Drive の例では、分散された各ノードにファイルが保存されるのではなく、Google のサーバーに保存されるという点が異なります。

具体例 2

次は「OnChain Human Of Metaverse」です。

OnChain Human Of Metaverse Etherscan

こちらは tokenUri に、base64 に encode された文字列が入っています。

OnChain Human Of Metaverse base64

これを 2 回 decode すると、SVG の画像が出てきます。これはオンチェーンです。

OnChain Human Of Metaverse decode

OnChain Human Of Metaverse SVG

具体例 3

最後に「キャプテン翼 THE BALL IS OUR FRIEND ボールはともだちプロジェクト」の TSUBASA NFT を見てみましょう。

TSUBASA NFT Etherscan

tokenUri や media にファイルサーバー URL が入っているので、オフチェーンとなります。

TSUBASA NFT tokenUri

上記からダウンロードできるファイルはテキストエディターで開くことができます。

TSUBASA NFT txt

また、hintsubasa.worldという運営所有のドメインを使っているので、ドメインを更新しなくなるとNFTが見えなくなるリスクもあります。

ちなみに上記の NFT のコンテンツ画像はこちらです。 

具体例 おまけ

おまけで、「Murakami.Flowers Official」も見てみました。

tokenUri にファイルサーバーの URL が入っていますが、中を確認すると更に IFPS を参照していることがわかります。
コンテンツを関連付けするために 2 つのサービスを使っているので、リスクも 1 つだけの場合より高いといえます。

こういうパターンは、今回はファイルサーバーに分類しています。

Murakami.Flowers tokenUri

Murakami.Flowers image

実際のところ、オフチェーンはどれくらい存在するのか?

「いやいや、そんなに危ないならみんな買わないでしょ。自分の持ってる NFT は有名な会社が作ってるし、みんな買ってるから大丈夫」

本当ですか?

例えば、「NFTのスタートアップ (35社登録)」のように、NFT を取り扱うスタートアップ企業はたくさんあります。Very Long Animals の運営会社、MEISO合同会社も 2021 年 12 月 9 日設立です。

小規模企業白書」によると、スタートアップ企業の 5 年後の生存率は 81.7% です。
企業がなくならなくても、サービスが終了する場合もあります。実際、Google は利用者がいるにも関わらず、多くのサービスを終了してきました。

というわけで、今回は実際に流通している NFT の中で、オフチェーンの割合はどれくらいになるのかを調べてみました。
すでに NFT を所有している人は、一度深呼吸をして、続きを読むことをおすすめします。

調査方法

対象は Ethereum を使った ERC721 の NFT とし、さらに日本時間 2023/01/09 23:53:41 の時点で、過去 24 時間以内に流通があった 7823 個の NFT になります。ERC721 とは、NFT の規格の 1 つで、このような規格に沿うことで、OpenSea のようなマーケットで売買が可能となります。他にも ERC1155 などがあります。

ERC721 では tokenURI 関数が実装されており、ここから NFT の名前などが格納された metadata を参照することができます(Metadata Standards)。Token の収集は Etherscan を、metadata の確認は Alchemy をそれぞれ用いました。

また、データの分類方法は以下のとおりです。

調査結果

まず、単純に数を集計したものがこちらです。

Analysis1

次に流通量で集計してみます。

Analysis2

どちらにしても、オフチェーンが圧倒的多数を占めています。

内訳として、オフチェーンで多かったのが、IPFS とファイルサーバーです。

Analysis3

オンチェーンは、ほとんどが SVG ですが、中にはアスキーアート(AA)のような変わり種もありました。

Analysis4

Best 10

ちなみに、上位 10 個の NFT は、以下の通りです。ENS を含めるべきか迷いましたが・・どちらにせよ、予想通り全てオフチェーンでした。

Analysis5

終わりに

いかがだったでしょうか?
NFT を所有している人は、一度自身の NFT がどうなっているのか確認してみると良いと思います。
それは 90% の確率でオフチェーンであり、近い将来価値がなくなってしまうリスクを孕んでいます。

あなたの NFT がゴミになるかもよ?

おまけ

シンギュラリティソサイエティでは、NFT に関する記事をいくつか公開しているので、良かったら読んでみてください。

おまけ 2

また、全ての調査結果は以下のとおりです。

トークンを含め、且つ csv 形式にしてみたので、追加調査などに活用してみてください(不備などがあれば、コメントお願いします)。


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