DAOに対する「株式会社に代わる新しい仕組み」や「参加者全員が成功の果実を共有できる」という認識は間違いです。DAOの本質とは?

Web3関連の書籍が多くでているので、どれを選んで良いのか迷っていませんか?その中には間違った理解で書かれているモノが…。ネットの記事や識者の話も、多くがDAOのプログラミングを見たこともない人が書いているので大半が、推測や伝聞で、間違った話をしています。まずは、この記事でDAOの基本を理解してから探してみてはどうでしょうか!?


タイトルに惹かれて試し読みをしてみたが、前書きにDAOとは「ブロックチェーン常で実行されるルールを共有しあい、ミッションを中心に組織されたグループ」と書いてあってがっかり。なぜこれほどまでに誤解している人が多いのだろう?

DAOとは単に**「スマートコントラクトによって自律的に運営される組織」であり、メンバーがミッションを共有する必要はないし、ルールはコントラクトにより「強制される」ものであり、「共有する」ものではないのです。**

さらに付け加えれば「良く設計されたDAO」とは、スマートコントラクトにより作られたインセンティブ・メカニズムが、ステークホルダーたちに特定の行動を促し、それがDAOの発展に自然につながるようなDAO。ビットコインが良い例です。

DAOの定義とは、以上に書いたように(ビットコインこそ「究極のDAO」)、とてもシンプルで明確なもので、ビジョンの共有、メンバー自身による運営、メンバー同士の協力、顧客への利益配分、などは(既存の組織にも適用できる)DAOとは独立した話です。そこが分かっていない人が多すぎます。

ちなみに、これは「もっともDAOらしいDAO」と呼ばれるNounsDAOに私自身が参加した結果、得られた貴重な知見です。**DAOとは「ソフトウェアにより自律的に運営される組織」。**それ以上でも、それ以下でもないのです。

DAOの運営がうまく行くか行かないかは、組織の運営を行うソフトウェア(スマートコントラクト)で99.9%決まります。 その後のコミュニティ・マネージメントとか、ビジョンの共有とかが必要になる時点で、DAOとして未完成と言えるのです。

なので「DAOは株式会社に代わる新しい仕組み」とか「DAOの時代になれば参加者全員が成功の果実を共有できる」などの発想は、お花畑的発想。DAOの設計は、そんなに簡単ではないのです。

一つだけ覚えておいて欲しいのは、DAOは「人が運営するもの」ではないという点です。運営をするのはブロックチェーン上にデプロイされたソフトウェアで、すべてはスマートコントラクトをデプロイした時に決まります。つまり「上手な設計」が必須なのです。

NounsDAOが「もっともDAOらしいDAO」と呼ばれるのは、そのスマートコントラクトに組み込まれたインセンティブメカニズムがとても良く出来ているからです。なので、良いDAOを作りたかったら、NounsDAOのソースコードを読む必要があります。

つまり、DAOの時代になると、スマートコントラクトの読み書きが出来るエンジニアの価値がとてつもなく高くなるのです。これまで経営者や弁護士がやってきた役割をエンジニアが、そしてエンジニアが作ったソフトウェアが果たすのだから。

ちなみに、スマートコントラクトを手足のように自由に使いこなせるエンジニアはまだ一握りしかいません。これはソフトエア・エンジニアにとって、10年に一度の大チャンスです。滅多に訪れることのない「次のプラットフォーム」の黎明期なのです。

ちなみに、私も「スマートコントラクトを手足のように自由に使いこなせるエンジニア」になるために日夜努力しています。全てをオープンソースで進めているので、興味がある方は、このDiscordに参加してください。

私が今、開発しているのは、On-Chain Asset Store と名付けた、ブロックチェーン上のアセットストア。さまざまなグラフィック・アセット(ベクトル画像)をオープンな形で公開し、他のスマートコントラクトから自由に使えるようにしようという試みです。

なぜこんなものを作ろうとしたかの背景については、Discordの vision-and-mission チャンネルに詳しく書きましたが、ひとことで言えば、フルオンチェーンのNFTの表現力を高めることにあります。

分かりやすく言えば、decentralized で永続的な Fully on-chain NFT と、centralizedで永続性が保障されていない Off-chain NFT の表現力のギャップを埋めることが目的です。

ちなみに、私は決してビジョンの必要性を否定しているわけではありません。ビジョンを共有する仲間が集まった方が良いのは、会社でもDAOでも同じで、DAOだからビジョンが必要などという話では全くありません。

逆に、ビジョンなんかなくてひたすら金儲けに走る会社があるのと同様に、「金儲けのためだけ」に存在するDAOがあっても全く不思議はない。つまり「ビジョンを供するか」と「DAOかどうか」は独立した話なのです。

会社の場合「誰を経営者にするか」と「その経営者がどんな運営をするか」が最も重要ですが、DAOの場合は「誰がスマートコントラクトを書くか」と「どんなスマートコントラクトを作るのか」が最も重要です。

つまり、会社の場合は「会社を設立した後(の運営)」がとても重要だけど、DAOの場合は「スマートコントラクトをデプロイする前(の設計と実装)」がとても重要です。タイミングが全く異なるのです。

なので、Play2Earnゲームに良くある「最初は中央集権的に進めるけど、徐々にDAO化して最終的には運営はユーザー自身に委ねる」という発想自体が、ものすごく無責任です。そんなものが、うまくDAOとして機能するはずがないのです。

おわりに

シンギュラリティ・ソサエティでは、テクノロジーがどのように社会に影響を与えるか、様々な議論をしています。 DAOなどに代表されるブロックチェーンやスマートコントラクトのテクノロジーは、社会や経済の仕組みをコード化し、透明且つ効率に仕組みに刷新する可能性を秘めています。
現在、シンギュラリティ・ソサエティでは、DAOやDeFi、Smart Contractなどの勉強や開発、NounsDAOへのプロポーザルプロジェクトなど、Web3の活動も行っています。今後もこれらに関する記事を発信していきますのでお楽しみに!


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