業界に激震!!Llama2オープン化がいかにすごいかを解説。

Metaが、LLM(大規模言語モデル)であるLlama2をオープンソース化しましたが、業界全体に大きな激震を与えています。なぜそんなに大きな意味を持つのかを説明します。

LLMとして最も良く知られており、ユーザーが多いのはOpenAIのGPTです。ChatGPTという使いやすい形のサービスとしてリリースしたのが大成功の原因です。デファクト・スタンダードになっても不思議はない、ぐらいの勢いです。

私も含めた開発者達の多くが、GPTの上にLLMアプリケーションを作っています。ChatGPTの成功がその理由の一つでもありますが、ChatGPT以前から使いやすいAPIを公開していたことも大きな要因です。function callのような新機能を次々にリリースしている点も高く評価されています。

LLMの技術だけ見れば、Googleが先輩です。GPTは、Transformerという技術で作られていますが、これはGoogleの研究者が発明し、オープン化したものです。Googleは、ChatGPTの成功を見て、Bardという形で同様のサービスを提供しましたが、ChatGPTと比べたら影が薄い存在です。

Microsoftが大株主・ビジネスパートナーとして背後にいるのもOpenAIの強みです。Microsoftは、BingにGPTを組み込むことにより、Googleの検索ビジネスにチャレンジしています。さらに、Office365向けにCopilotサービスは、莫大な利益を2社に与える可能性があります。

市場が、MS+OpenAI vs. Google という二強の戦いに注目しているときに、Googleから一つのメモがリークされました。Googleの最大の敵は、OpenAIではなく、オープンソースのLLMだ、という指摘です。

Metaは、Googleと同様に数多くのAI研究者を抱えていますが、開発していたLLM、Llamaをオープンソースとして公開したのです。商用利用は許されておらず、主に研究者向けのものでしたが、これが研究者の間では、大評判になり、Llamaをベースにした様々なLLMが作られ、オープン化されました。

しかし、その段階では、いまだに商用利用は許されていなかったので、ビジネスに本気でオープンソースのLLMを使うことが出来るかどうかは不明でした。誰もが、Metaの次の一手に注目していたのです。

そのMetaが、最新の一手としてリリースしたのがLlama2です。初代Llamaと同じくオープンソースですが、大きな違いが二つあり、それが市場に激震を与えているのです。

一つ目 が、ソースコードだけでなく、ニューラルネットワークの重み付けデータまでオープン・ソース化された点です。初代Llamaの時は、データは研究者向けにだけ提供されたものが、リークされて流通し、それをMetaが黙認する、という状況だったのです。その歪みが解消されました。

二つ目 が、商用利用を可能にするライセンス形態です。 それも基本無料という気前の良いものです。自分でサーバーを立ててホストする場合は完全に無料、AzureやAWSにホスティングされたものを利用する場合には、サーバーの使用料を払えば良い、というものです。

これを受けて、私も含めた数多くの開発者達が、Llama2の上にアプリを作り始めているし、LLM-as-a-serviceなベンチャー企業もLlama2をWebサービスとして提供し始めています。

Llama2のリリースにより、LLM業界は、MS・OpenAI連合 vs. Googleという二強の戦いから、一気に、Metaを含めた三強の時代に突入したと言えます。まさにGoogleからリークされたメモが危惧していたことが起こりつつあるのです。

中島聡 | 週刊 Life is beautiful - メルマガ


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