書評:LangChainとLangGraphによるRAG・AIエージェント[実践]入門 (エンジニア選書)

著者: 西見 公宏, 吉田 真吾, 大嶋 勇樹

シンギュラリティ・ソサエティーでは日々LLMや、LLMを使うGraphAIなどを使って様々なAIアプリ、AIエージェントを作っています。AIエージェントはここ半年くらいで盛り上がりを見せており、それらの情報は断片できにネット記事を見たり、GitHubでソースを見たり、論文を読みながら開発を進めていく必要があります。

本書は、LangChainとLangGraphを駆使し、LLM(大規模言語モデル)やRAG(Retrieval-Augmented Generation)、AIエージェントの基礎から発展的な応用までを学べる、開発者向けの実用書です。最新の技術と多様な実装手法を解説しており、LLM技術の初心者から上級者まで幅広い読者が実践的な知見を得られる内容となっています。
こういった情報はネット上で断片的な情報は見かけるものの、網羅的にまとめられた本書は、すべてのAIエージェント開発者におすすめできる一冊です。

LLMの基礎知識とプログラミング手法

本書の冒頭では、LLMの基本的な使い方から、function callingのようなツールの使い方、プロンプトエンジニアリングまで、LLMプログラミングに必要な基礎が解説されています。これにより、LLMの基本概念から実際の活用に至るまで、知識の段階的な習得が可能です。特に、LLM未経験の読者にもわかりやすく、技術の導入に必要なスキルをしっかり学ぶことができます。

LangChainのクラス構成・コンポーネント解説

LangChainを初めて触れる読者向けに、そのクラス構成や主要コンポーネントの概要を分かりやすく解説しています。LangChainの基礎的な使い方や、特に重要とされるRAGの使い方も一通り紹介されています。LangChainの内部構造を理解し、効率的に活用できるように解説が施されており、初心者にも一歩ずつ応用技術に進むための丁寧なガイドラインが提供されています。

RunnableとRunnable Sequence、LCELのマニアックな解説

LangChainを深く活用するためのキーである「Runnable」と「Runnable Sequence」についても詳細に解説されています。特に、LCEL(Language Chain Evaluation Language)の実装方法に関するマニアックな説明が特徴的で、Pythonで演算子のオーバーロードを使った実装の解説があります。Pythonは科学計算でよく利用されますが、c++同様に演算子のオーバーロードが使えるのがその1つの理由だというのがわかります。LangChainの技術的な奥深さに触れられる部分であり、LCELがいかにLangChainの重要な要素であるかが理解できます。

RAGの概念から応用法、LangSmithを使った評価まで

RAGの基礎的な概念から、具体的な利用方法や応用的な手法まで、RAGの一連の技術が段階的に解説されています。また、LangSmithを用いたRAGアプリケーションの評価方法についても触れており、実務で活用できる応用的な内容も含まれています。RAGの導入を検討している開発者や、既存のプロジェクトでRAGを活用したい読者にとって、有益な実践的ガイドラインとなっています。

AIエージェントとマルチエージェントの歴史、主要技術の解説

AIエージェントの歴史や、代表的なマルチエージェントの技術が網羅的に解説されています。SSの代表である中島さんの息子さんが作成したBabyAGIも紹介がありました!!
各エージェントの役割や機能が簡潔に説明されており、特にマルチエージェントシステムの基礎を理解するために最適な内容です。さらに、LangGraphを活用したAIエージェントの実装サンプルも提供されており、設計のポイントや実装手順、プロンプトの作り方も具体的に示されています。

LangGraphを用いた発展的なAIエージェント設計

AIエージェントの基礎知識を踏まえたうえで、LangGraphを活用したAIエージェントの設計方法についても詳細に説明されています。具体的なサンプルや、デザインパターン、実装時のテクニックが豊富に紹介されているため、エージェント設計における実践的な技術が身につきます。AIエージェント開発のトレンドも考慮されており、これからエージェント構築を考えている方にとっては非常に参考になります。

最新技術を網羅、日本語で読める貴重な一冊

本書は、これまで断片的だったLangChain/GraphやRAG、AIエージェントに関する情報をまとめた貴重なリソースです。サンプルコードはPythonですが、LangChainのJavaScript版に関する注意点も記載されているため、JavaScriptユーザーも応用が可能です。

すべての開発者におすすめの参考書

本書は、LangChain/Graphを使う目的のみならず

といった開発者すべての人にお勧めできる1冊です。

著者がイベントに来ます!!

2024/11/23にRaycast Community Japanと共催で「Fullstack AI Dev & Raycast Summit」を開催しますが、ここに本書の著者が登壇します!!本書の内容をもとに議論してみたいです!!
オフラインでの参加はすでに定員に達してしまいましたが、オンラインでの参加は可能です!!詳しくはこちらのページを参照してください。

https://devx.jp/mt202411


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