マルチエージェントの「自律的に行動する」とは何か?

「自律的に行動する」とは何か? – AIエージェントと、私たち人間に共通する力

質問:マルチエージェントとは、複数のエージェント(自律的に行動するプログラム)が連携して一つの目的を達成する仕組みです。この定義って正しい?

はい、ほぼ正しいです!

マルチエージェントとは、複数のエージェントが互いにやり取りしたり、影響し合いながら、問題解決や目的の達成に取り組むシステムです。
「連携」という言葉には、協力や分担だけでなく、時に競争や交渉も含まれます。

そして、この定義の中で最も重要なのが「自律的に行動する」という部分です。
でも、この「自律的に動く」って、プログラムの世界では少し曖昧にも感じられますよね。

質問:「自律的に行動する」ってどういう意味? プログラムって普通、引数を取って実行されるけど、それって自律的に動いているの?引数に依存してるだけじゃない?

良い質問です!

まず、「自律的に行動する」とは、ざっくり言えば
「外から細かく指示されなくても、自分の目的と状況を踏まえて行動を選べること」
です。

たとえば、普通のプログラムや関数は、引数を渡されて、それに従って決められた処理を返すだけです。何かを観察したり、自分で判断したりはしません。

それに対して、自律的なエージェントは、環境を観察し、自分の内部状態やゴールに照らして「今、自分は何をするべきか?」を決めます。
つまり、同じ入力を受け取っても、状況次第で異なる行動を選ぶこともあります。

ここで重要なのは、「誰かに命令されて動く」のではなく、「周囲の状況を理解し、自分で選ぶ」という意思決定の主体性です。


質問:では逆に、自律的じゃないエージェントってどんなの?

これも良い視点です!

「自律的じゃないエージェント」の例として、次のようなものがあります。

まずひとつは、「決められたスクリプト通りにしか動かないNPC(ゲームのキャラクター)」です。
たとえば、どんな状況でも毎秒右に1歩ずつ動く敵キャラがいたとしたら、それは周囲の状況やプレイヤーの行動を無視していて、判断をしていません。これは自律性があるとは言えません。

もうひとつの例は、「シナリオ通りにしか会話できないチャットボット」です。
たとえば、「こんにちは」と言われたら「こんにちは」と返す、「営業時間は?」と聞かれたら「9時から18時です」と返すだけのチャットボット。
どんな文脈や感情があっても、同じ質問には同じ答えしかしない。これも、単なる条件分岐で動いているだけで、自律的ではないと言えます。

また、ワークフローエンジンに「次はこの処理を実行せよ」と指示され、そのまま動くだけの自動化タスクも、基本的には指示待ちであり、自律性はありません。


質問:でも、マルチエージェントって他のエージェントの動作結果に依存してるよね? それって指示待ちにならない? 値を受け取って、結果を返すだけなら、それって自律じゃないのでは?

これもすごく本質的な問いです!

たしかに、マルチエージェントでは、他のエージェントの動作結果をもとに、自分の行動を決める場面がよくあります。
一見すると、他人に従って動いている=指示待ちのように見えるかもしれません。

でも、ここでの違いは「その情報をどう使うかを自分で決めているかどうか」です。

もし、単に「Aが言ったことをそのままやる」というだけなら、それは自律性のない関数的な処理です。
でも、Aの結果を参考にしつつ、「今回は自分はこう判断する」「あえて反対の行動を選ぶ」といった意思決定が入っているなら、それは間違いなく自律的な行動です。

つまり、他のエージェントの影響を受けるかどうかは問題ではなく、
「最終的にどう動くかを自分で判断できているか」が、自律性の本質なんです。


質問:それって、人間でも仕事や学びをするうえでとても重要な概念じゃない?

はい、まさにそのとおりです!

「自律的に行動する」というのは、AIエージェントだけに求められる能力ではありません。
私たち人間にとっても、仕事、学び、ものづくり、チームでの活動など、あらゆる場面で必要な力です。

誰かの指示を待って動くのではなく、自分で状況を観察し、目的に照らして、何をすべきかを自分で考えて行動する。
この姿勢があってこそ、創造性は生まれ、成長が加速し、信頼される行動につながります。

たとえ周囲の環境や他者の意見に影響を受けたとしても、最終的にどう動くかを選ぶのは自分自身です。
その選択の繰り返しこそが、「自律した学び手」「自律した働き手」への道です。

AIを通して「自律とは何か?」を考えることは、結果的に、私たち自身がどう生き、どう働くかを見つめ直すことにもつながっているのかもしれません。


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