Compound Startup構想
BootCamp / Rocket Incubator && Booster が目指すもの
私たちは「Singularity Society BootCamp」という名前で、1年間をかけてゼロから自分たちのサービスやアプリケーションを立ち上げる、長期型のインキュベーションプログラムを運営しています。
このプログラムに参加するチームや個人は、開発力を持ち、コアとなる部分のPoCや初期ユーザーの獲得までは高いレベルで実現できます。
しかし、サービスを継続的に提供し、成長させていくためには、それだけでは不十分です。
例えば以下のような、“コア以外”の機能や運営面にも対応していく必要があります。
- 課金・決済機能の整備
- バックエンド(APIサーバーやDBなど)の構築と運用
- 会計処理、契約管理、法務対応
- インフラ整備や監視・セキュリティ対策
これらの機能は、プロダクトごとに異なる要素もある一方で、多くのWebサービス/起業に共通する“コモディティ”な部分でもあります。
本来であれば、そういった共通部分は既存のツールや仕組みを活用すれば効率的に構築できますが、毎回すべてを各チームがゼロから対応しているのは、時間もリソースも非常に非効率です。
コア以外を巻き取る仕組みをつくる
私たちが目指したいのは、「本当に価値のあるコア部分に集中できる環境」 です。
そのために、課金・会計・インフラ・法務といった、プロダクトの価値そのものには直結しないけれど欠かせない部分を、ノウハウとして横断的に整備・共有し、共通インフラとして支える体制 を構築したいと考えています。
このようなサポート体制が整えば、
- 開発者やチームは自分たちの強みに集中できる
- スモールチームでも持続的なサービス運営が可能になる
- 結果として、“1人ユニコーン” のような挑戦もしやすくなる
こうした思想の延長線上にあるのが、次に紹介する「Compound Startup構想」です。
― スタートアップの成長フェーズごとに最適な支援を ―
スタートアップは、個人のアイデアから始まり、プロトタイプをつくってユーザーに試してもらい、手応えがあれば資金調達を経て、チームや体制を整えていくという流れをたどります。
この成長過程の中で、求められる役割や人材はフェーズによって大きく変化していきます。
スタートアップの成長に伴って変化する役割
-
初期フェーズ(アイデア〜プロトタイプ)
- とにかくスピードが重要。仮説検証とプロト作成が中心
- 必要な人材:プロトタイプ開発に強いエンジニア、仮説設計が得意な人、アイデアを形にする実行力のあるチーム
-
PMFフェーズ(製品の磨き込み)
- ユーザーの声を反映し、使いやすく、安定したプロダクトへと進化
- 必要な人材:UI/UXに強いエンジニアやデザイナー、プロダクトマネージャー、カスタマーサクセス
-
グロース・スケールフェーズ(事業・チームの拡大)
- ユーザーやトラフィックの増加、チームの急拡大に対応し、事業全体のスケーラビリティが求められる
- 技術面では、スケーラブルな設計・運用、セキュリティ強化が必要となり、インフラやSRE、アーキテクトなどの専門人材が活躍
- 同時に、チームが大きくなることで組織運営や人事労務、契約・規約、知財などへの対応も不可欠になる
- 拡大に伴い、運転資金の確保も極めて重要となり、デット(融資)やエクイティ(増資)を適切に使い分けられるCFOの関与が不可欠
- 必要な人材:エンジニアリング基盤担当、SRE、セキュリティ専門家、バックオフィス実務者、法務担当、財務戦略に強いCFOやファイナンスチーム
-
経営・組織整備フェーズ
- 法人としての信頼性、安定運営、資本戦略が求められる
- 必要な人材:
- バックオフィス(経理・労務・総務):初期は業務量も少なく、専任でなくてもよい。複数社を横断できる人材が効率的
- 法務:契約・知財・労務等、スタートアップ特有の事情に対応できる弁護士が横断的に支援できると安心
- CFO:資本政策、調達戦略、財務設計における専門的な意思決定を支える役割。フェーズごとにスポットで関与できる仕組みが理想
このように、スタートアップには段階ごとに異なる専門性が必要となり、
すべてを一社で内製化することは現実的ではありません。
共通化・横断支援できる役割の例
こうした背景のもと、スタートアップ支援に特化した専門家やチームが、複数社を横断して関わる「Compound Startup」構想が有効になります。
以下はその中で共通化が可能な領域の一例です:
-
研究開発(R&D)
- 新規事業の立ち上げ段階における技術検証・仮説構築・迅速な試作開発を支援
- 技術選定だけでなく、事業戦略と整合した技術の方向性を設計
- PoCや実証実験、ハッカソン的アプローチによる短期集中型の検証プロジェクトを設計・伴走
-
プロダクト開発支援
- 各スタートアップの開発体制やPMFフェーズに応じて、設計思想・開発プロセス・コード品質などを横断的に整備
- コンポーネント設計、デザインシステム、アーキテクチャの共通化により、開発効率とスケーラビリティを両立
- 開発初期の支援から、プロダクト成熟期のリファクタリングや技術負債の解消までカバー
-
インフラ・セキュリティ
- クラウド設計、監視体制、セキュリティポリシー
-
国際展開支援
- ローカライズ、多言語化、法規制への対応
-
営業・売り込み
- 商談の機会創出、営業資料支援、グロース支援
-
広報・PR
- メディア対応、登壇調整、ブランド戦略
-
バックオフィス(経理・労務・総務)
- 業務の標準化と横断的支援。フルタイム不要なことが多い
-
法務
- 契約・知財・会社法などへの対応。横断的な専門チームで支援
-
CFO・財務戦略
- 資本政策設計、資金調達(デット/エクイティ)、KPI設計支援
Compound Startupとは何か?
これまで、1社の中にすべての機能を抱え込んでいた時代から、複数のスタートアップが専門性を持ち寄りながら、協力してプロダクトや事業を創り出す時代へと変わろうとしています。
会社というのは「利益を分配するための仕組み」にすぎず、本質的な目的は価値あるプロダクトやサービスを社会に届けることです。
Compound Startupは、その本質に立ち返り、会社という枠を超えて、「得意な領域・フェーズを持ち寄って協力する」ことを前提としたスタートアップの集合体です。
企業側のメリット
- 内製にこだわらず、必要なときに必要な専門性を柔軟に呼び込める
- 特定フェーズや業務領域における経験豊富な支援者・チームにアクセスできる
- 人材獲得や固定費の負担を抑えながら、クオリティを担保した運営が可能
- 採用・教育・組織化のコストを削減し、本質的なプロダクト開発に集中できる
- フェーズが進んでも、スムーズに次の専門チームに引き継げるため、成長に適応した組織づくりが実現 できる
参加する個人・チーム側のメリット
- 自分の得意なフェーズや領域に集中して貢献できる
- 一社に固定されることなく、複数のスタートアップに横断的に関わることが可能
- 会社の都合によって、やりたくないフェーズや苦手な業務を強いられる状況を避けられる
- 自分の知識やノウハウを活かせる環境を自由に選べる
- 常に新しいプロダクトやフェーズに触れられるため、飽きずに成長と刺激を得られる
- プロジェクト単位で関わりつつも、株式や成果報酬によって責任と対価を共有 できる
Compound Startupが目指すもの
この仕組みによって、
- スタートアップは本質に集中できる
- 個人は強みを活かして柔軟に働ける
- チームは経験を循環させながらノウハウを蓄積できる
「どこに所属しているか」ではなく、「なにに貢献したいか」「なにが得意か」 でつながる世界。
Compound Startupは、そんな未来の起業・働き方・協業のあり方を目指す構想です。
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