舶来ツール依存から、自分たちのプロダクト創出へ ──「使う」から「つくる」へ、文化を変える決意──

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序章:Rubyが示した、日本の可能性

Rubyは日本で生まれました。日本でも一部の感度の高い開発者の間ではとても評価が高く、注目されていましたが、爆発的な普及とまではいっていませんでした。

しかし世界で注目を浴びたのは、Ruby on Railsが米国で爆発的に普及してから――海外で成功して逆輸入される形で再発見されたのです。

つまり、日本発の技術はもともと世界に通用する力を持っていたということ。にもかかわらず、日本から世界的なプロダクトがなかなか生まれないのは、能力の問題ではありません

実際、外資や米国で働いてみるとわかります。現地のエンジニアは確かに優秀。でも、日本人も同じくらい優秀です。むしろ勤勉さ、責任感、緻密さ、誠実さといった面では、日本人の方が優れていると感じる場面も多い。足りないのは、技術力ではなく「つくる側に立つ」というマインドセットなのです。


① 舶来ツールを“ありがたがる”文化を超えて

いま、日本の開発者は海外製ツールを当たり前に使っています。便利で洗練されていて、確かに効率は上がる。

しかしその快適さに浸かっているうちに、「自分たちでもつくれる」という感覚が薄れていく使うことには慣れても、つくることには臆病になっていないでしょうか。私たちはもう、「与えられた土台の上で組み立てるだけ」ではなく、「土台そのものをつくる」側に立つべき時期に来ています。

② 自分たちで基盤・プラットフォームをつくる

「つくる」とは、アプリやサービスを組み立てることだけではありません。その下にある基盤・フレームワーク・プラットフォームを自分たちで設計することこそが、本当の創造です。

海外の開発者は常にその視点を持っています。単に問題を解決するコードを書くのではなく、誰かが何度でも使い回せる構造を生み出す

日本人にそれができないはずはありません。必要なのは、「自分がつくった基盤を、誰かが当たり前に使う未来」を信じることです。


③ 仲間がつくったものを、支え合って育てる

「つくる文化」を根づかせるには、仲間がつくったものを使い合うことが欠かせません。

海外製の有名ツールに飛びつく前に、まず身近な誰かがつくったものに目を向ける。たとえ洗練されていなくても、不完全でも構わない。使い、支え、改善していくことそのものが文化を育てる行為です。


④ 「つくるだけ」で終わらせず、製品として届ける

日本では、良いものをつくっても「つくっただけ」で止まってしまうことが多いのも事実です。READMEもなく、パッケージにもされず、外からは存在すら見えない。それは、なかったことと同じになってしまう。小さなプロジェクトでも、個人のツールでも、「誰かが使える状態にする」までがつくることです。ドキュメントや導入手順を整え、他者が触れられる形にする。そこから初めて、「プロダクト」として世に存在できるようになります。


⑤ コアを抽象化し、他者が使える形にしてみる

あなたがつくっているものが、たとえ「ツール」や「フレームワーク」ではなかったとしても、その中には、他の人にも役立つ“本質的な部分”が潜んでいるかもしれません。

こうした要素は単体では目立たなくても、抽象化して切り出せば、他者にも使えるツールやコンポーネントになります。Web APIやソフトウェアコンポーネントとして公開すれば、**他のエンジニアのプロジェクトにも組み込まれ、Model Context Protocol (MCP)**などと連携する可能性も広がります。

さらに重要なのは、「コンポーネントとして切り出す」意識そのものです。

その視点で設計することで、依存関係が整理され、疎結合なソフトウェア構造になります。結果として、あなた自身のプロダクトの保守性や拡張性も格段に高まるのです。

つまり、他者のために抽象化することは、最終的に自分のためにもなる

この発想の転換が、あなたのものづくりを次の段階に押し上げてくれます。


⑥ 小さくてもいい、まずは公開して、仲間に使ってもらう

最初から大きな基盤をつくる必要はありません。大切なのは、「自分もつくっていいんだ」という一歩です。

まずは小さなツールでもいいから形にして公開し、知り合いや仲間に実際に使ってもらうことから始めてみてください。


⑦ 「つかう文化」から「つくる文化」へ

これからの日本に必要なのは、技術力ではなく文化の転換です。

それは、遠い未来の話ではありません。あなたの今日の小さな一歩から、始まるのです。

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